公園文化ロゴ
公園文化ロゴ
公園文化を語る 公園の達人 公園管理運営「チャレンジ!」しました 公園とSDGs 生きもの小話 みどり花コラム アートコラム 花みどり検定 公園の本棚 世界の公園 たまて箱 公園”Q&A /
公園管理運営チャレンジしました
第47回 公園の魅力を見つめ直して「秋のライトアップ」できっかけづくり(足立区花畑公園・桜花亭)

第10回目は、弘前市でチーム桜守の一員として弘前公園のサクラを管理する橋場 真紀子さんの「チャレンジ!」をお届けします。

弘前市 都市環境部 公園緑地課 チーム桜守 橋場 真紀子さん
弘前市 都市環境部 公園緑地課 チーム桜守 橋場 真紀子さん

リンゴ栽培の技術を参考にした弘前方式
ソメイヨシノだけでなく、シダレザクラやヤエベニシダレも楽しむことのできる弘前公園。遠くに見えるのは<br>岩木山。

ソメイヨシノだけでなく、シダレザクラやヤエベニシダレも楽しむことのできる弘前公園。遠くに見えるのは
岩木山。

弘前公園(青森県弘前市)には、52種約2600本のサクラが植栽され、明治15年旧藩士により植えられたソメイヨシノを筆頭に樹齢100年を超える古木のソメイヨシノが約400本あり今もなお豊かな花を咲かせています。

リンゴ栽培の技術を参考に昭和30年代から続く「弘前方式」と呼ばれるサクラの管理法により、弘前公園のサクラは花数が多く、「さくらの名所100選の地」にも選ばれ、国内はもとより海外からのお客様にもお楽しみいただいています。

「弘前方式」では毎年冬に、若い活力のある枝を伸ばすために弱っている枝を切る剪定と、施肥、適期の薬剤散布をします。これまでは、弘前市の担当職員1人が年間のサクラの管理方針を決め、それに従い実施してきました。しかし、長年サクラの管理を担当してきた小林勝さんの定年を期に、弘前市は、樹木医の資格を有することを条件に職員を公募しました。担当者が退職したり、病気になったりしても適切な管理ができるようチームで管理することにしたのです。それまで私は、一般財団法人 弘前市みどりの協会に勤務し、弘前公園三の丸にある弘前城植物園でサクラ等の管理に携わりながら樹木医の資格を得ていましたので、弘前公園全体のサクラの管理をするために平成26年度に公園緑地課内に組織されたチーム桜守の一員となりました。

「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」にも選ばれた弘前公園外濠の花筏。

「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」にも選ばれた弘前公園外濠の花筏。


サクラの管理の要となる剪定
剪定作業の様子。必要に応じて大枝にも手を入れる。

剪定作業の様子。必要に応じて大枝にも手を入れる。

チーム桜守の仕事は、弘前公園の樹木の管理、サクラ管理方針の策定、管理作業の指導、サクラに関する普及啓発等多岐にわたります。平成26年度からチーム桜守は、小林勝さん、海老名雄次さん、私の3人です。弘前公園でのサクラの管理は、私達チーム桜守3人の他に市の職員9人、臨時職員36人の約50人で1年を通して実施しています(表1)。

サクラの管理の中で一番重要な作業は、毎年2月20日前後から3月末まで行う剪定です。剪定を行う前には担当職員を集め、剪定の理論と作業の基本を確認し、安全に作業を行うよう剪定講習会を実施します。私が講習会を担当するときは、参加者に質問を投げかけたり、自分の失敗談を話すなど、身につく講習会となるよう工夫しています。



市民に愛されるサクラに
弘前公園にある樹木を紹介する看板。市民に弘前公園の桜に愛着を持ってもらう一助となっている。

弘前公園にある樹木を紹介する看板。市民に弘前公園の桜に愛着を持ってもらう一助となっている。

私は弘前公園内を見回り、サクラ以外にもマツやナラ類の状態を確認しますが、毎日全ての木を確認できるわけではありません。そんなときに、毎日公園を利用している市民が「あそこのサクラの様子がおかしい」「枯れ枝があった」等、情報提供してくれます。樹木を見守る目は多い方が良いので、助かっています。既に確認している木であれば治療方針や対処法をその場でお伝えします。現在、公園の様々な状況を教えてくれる市民は30人ほどいます。

また、2~3月に剪定したサクラの枝は、水差しし加温すると花が咲くため、剪定作業が始まると定期的に市民に配布しています。単にお渡しするだけでなく、きれいに咲かせる方法のレクチャーと共にお渡ししています。最近では、自宅で咲かせた剪定枝のMyサクラ映像を交換しあうなど、弘前公園のサクラをきっかけに、市民の間で交流が広がっているようです。

毎年4月中旬から5月上旬に開催する『弘前さくらまつり』は、サクラと共に先人から受け継いだものです。平成30年度で100周年を迎え北国の春を楽しむ『文化』と言えます。これからも管理手法を模索し市民から愛されるサクラを後世につなげることで、この先も『弘前さくらまつり』を楽しんでもらえたら嬉しいです。

 

※文中に出てくる所属、肩書、情報などは、取材時のものです。(2018年2月掲載)

弘前市で発見されたサクラ‛弘前雪明かり’。平成29年11月に新しい園芸品種として認定を受けた。

弘前市で発見されたサクラ‛弘前雪明かり’。平成29年11月に新しい園芸品種として認定を受けた。

区切り線
過去記事一覧
第47回 公園の魅力を見つめ直して「秋のライトアップ」できっかけづくり(足立区花畑公園・桜花亭)
第46回 “五感”を満たす空間づくり ~統一感あるデザインと、一貫したコンセプトを守っていく~ (いばらきフラワーパーク)
第45回 サステナブルな堆肥づくり「バイオネスト」の可能性 (国営木曽三川公園 138タワーパーク)
第44回 都心に残るゲンジボタル(国立科学博物館附属自然教育園)
第43回 大池公園さくら再生プロジェクト!(大池公園)
第42回 初の産学連携!地元の高校生と協同で商品開発!(稲毛海浜公園)
第41回 冬の新宿を彩るCandle Night @ Shinjuku(新宿中央公園)
第40回 20年目を迎える「第20回日比谷公園ガーデニングショー2022」を開催(都立日比谷公園)
第39回 多様な生き物と人が集まるビオトープを作る!(国営アルプスあづみの公園)
第38回 いにしえの植物を万葉歌と共に楽しむ 万葉植物画展「アートと万葉歌の出逢い」(平城宮跡歴史公園)
第37回 来園者も参加する獣害対応防災訓練
第36回 「みどりの価値」を指標化し、「こころにやさしいみどり」をつくる
第35回 時代のニーズをとらえた花畑を(国営昭和記念公園)
第34回 身近な公園でパラリンピック競技を体験する(むさしのの都立公園)
第33回「写真を撮りたくなる」公園づくり(小豆島オリーブ公園)
第32回 「自然学習」アプリは「広い園内で遊べる」ツール(国営昭和記念公園)
第31回 Onlineでも環境教育を(Project WILD)
第30回 コロナ禍でも市民と共に活用できる公園(兵庫県立尼崎の森中央緑地)
第29回 音楽に親しむ公園の「森のピアノ」(四万十緑林公園)
第28回 植物に関するミッションでリピーターを増やす(小田原フラワーガーデン)
第27回 猛威を振るう外来のカミキリムシを探せ(栃木県足利市)
第26回 地域と協働したプロジェクト(播磨大中古代の村(大中遺跡公園))
第25回 地域住民の意見を聞きながら公園の魅力を維持・向上させる(足立区)
第24回 Stay Homeでも公園を楽しむ(国営武蔵丘陵森林公園)
第23回 できる人が、できる時に、できることを(こどもの城)
第22回 雪を有効活用して公園に笑顔を(中山公園)
第21回 地域をつなぎ、喜びを生み出す公園(柏崎・夢の森公園)
第20回 絵本の世界を楽しみながら学ぶことのできる公園(武生中央公園)
第19回 全国に注目されるゴキブリ展を開催(磐田市竜洋昆虫自然観察公園)
第18回 大蔵海岸公園のマナードッグ制度(大蔵海岸公園)
第17回 園内から出た植物発生材をスムーズに堆肥化する(国営木曽三川公園)
第16回 地域の昔話を学ぶことのできる公園(坂出緩衝緑地)
第15回 公園の看板に一工夫(国営讃岐まんのう公園)
第14回 地域に貢献する農業公園(足立区都市農業公園)
第13回 公園のイベントを通して子供たちに「外遊び」を提供!(雁の巣レクリエーションセンター)
第12回 生き物の面白さを伝える動物公園(多摩動物公園)
第11回 増大かつ多様化する公園利用者に対応する施設管理(国営ひたち海浜公園)
第10回 弘前公園のサクラを後世に引き継ぐ(弘前公園)
第9回 未来につづく公園づくり(大野極楽寺公園)
第8回 生き物にふれあえる公園づくり(桑袋ビオトープ公園)
第7回 発生材を有効活用する(公益財団法人 神奈川県公園協会)
第6回 幻の青いケシ(国営滝野すずらん丘陵公園)
第5回 「街路樹はみんなのもの」という意識を(東京都江戸川区)
第4回 最良の門出を祝う「ローズウェディング」(国営越後丘陵公園)
第3回 感謝の気持ちを伝えるくまモン(水前寺江津湖公園)
第2回 ふるさと村で人形道祖神を紹介(国営みちのく杜の湖畔公園)
第1回 様々な競技会にチャレンジ!(国営木曽三川公園)


TOPに戻る

公園文化ロゴ2