公園をより楽しく有効に使ってもらうために、公園との関わりの深い方々への取材を通して、皆さまに役立つ情報をお届けします。
第40回は、栃木県小山市内の3カ所の公園で、参加者がキャンプをしながらまちづくりについて考えてもらう社会実験、「みらい創造キャンプ」を開催した(公社)日本青年会議所 関東地区栃木ブロック協議会・とちぎフォーラム委員会で委員長を務めた山本雄大さんのインタビューです。
2021年5月29日(土)30日(日)、小山総合公園、生井桜づつみ公園、城山公園の3会場で開催された「みらい創造キャンプ」には、市内外から約300人が参加しました。3公園の会場では、それぞれ「まちづくり」「環境」「防災」などをテーマにさまざまなイベントが行われ、参加者は公園でのキャンプという非日常を楽しみました。「公園という空間で、市民の皆さんと共にまちづくりについて考え、地域の魅力を再認識してもらえる良いきっかけになった」と言う山本さんにお話をうかがいました。
(公社)日本青年会議所(以下、JCI)では、全国それぞれの地域の特性を生かしたまちづくりに取り組んでいます。JCI関東地区栃木ブロック協議会内で組織するとちぎフォーラム委員会では、栃木県内の課題解決や観光資源などの魅力を発信することを目的に「とちぎフォーラム」を開催しています。県内に11ある青年会議所が持ち回りで担当し、とちぎフォーラム委員会と連携して毎年実施していますが、2021年は私が所属する(一社)小山青年会議所が主管となり、栃木ブロック協議会のとちぎフォーラム委員会メンバーと共に企画・実施しました。
とちぎフォーラム委員会は県内各地の青年会議所から出向する37人(30歳代、男性中心)のメンバーで構成され、その年の主管JCと足並みをそろえて企画を考えます。これまで開催してきたとちぎフォーラムの内容は、その時代に即したテーマを掲げ、各界著名人を招いた講演会をメインに、各種のベントや飲食ブースの展開などが定番となっていましたが、今年は地域の魅力をPRしながら、市民が楽しみながらまちづくりを考えられる内容にしてはどうか、と考えました。そこで昨今のキャンプブームを背景に、市内3カ所の公園でキャンプをしながら参加者がまちづくりを語り合う社会実験「みらい創造キャンプ」を企画しました。
まずは市に協力を要請したところ、浅野正富市長には大変興味をもっていただき、後に「みらい創造キャンプ」のメインイベントとなる「まちづくり対談」のパネラーとして参加いただくことになりました。また、本来はキャンプや宿泊が不可の3公園でしたが、市にとってはまちづくりをテーマとした社会実験であることで、公園緑地課さんには公園使用に関しては柔軟に対応していただきました。
「みらい創造キャンプ」の会場となる公園は、第1会場は小山総合公園、第2会場は生井桜づつみ公園、第3会場は城山公園です。
小山総合公園は、JR小山駅から車で10分ほどの場所にある緑豊かな森の広場や温水プール、ほたるの館学習館、貸自転車、バーベキュー広場など様々な施設がある市内で最も広い公園で、子供から高齢者まで多くの市民に親しまれています。
小山総合公園では「まちづくり」をテーマに、浅野市長と小山市でまちづくりに取り組む市民団体の代表ら4人による対談。その後は地元の演奏家たちによるショートコンサートとバルーンナイトグローを企画しました。
生井桜づつみ公園は、小山総合公園から約10㎞離れた場所にあり、横長の形の公園の目の前にはラムサール条約に登録(2012年7月3日)された湿地「渡良瀬遊水地」が広がります。広大なヨシ原におおわれた遊水地は、手つかずの自然が保全されていることから、植物は約1,000種、鳥類約260種、昆虫類(陸上、水中)約1,700種の貴重な動植物が生息・生育しています。さらに小山市では「コウノトリ・トキの野生復帰」に取り組んでいます。遊水池に人口巣塔を設置してからコウノトリが定住するようになり、渡良瀬遊水地はコウノトリが住む場所としても知られるようになりました。第2会場の生井桜づつみ公園では、自然環境をテーマに渡良瀬遊水地環境学習ツアーと渡良瀬遊水地のヨシを使ったヨシ灯り作成を企画しました。
JR小山駅から徒歩10分程の第3会場の城山公園は、高台から小山市の中央を流れる思川が見渡せて、春は桜のお花見客がにぎわう市民の憩いの公園です。第3会場は、キャンプ初心者を対象にテーマは防災を掲げ、アウトドア講習やアルファ化米を使ったアレンジレシピ、陸上自衛隊による野営展示などを企画しました。
開催日は5月29(土)、30(日)日に決まり、募集するサイト(参加人数)は、それぞれの公園の規模に合わせ、小山総合公園は75サイト、生井桜づつみ公園は20サイト、城山公園は16サイト(参加費無料、各サイト定員4人)とし、4月に募集の告知を行いました。市内の公共施設をはじめキャンプ用品店やホームセンターにポスターを貼っていただき、FacebookやInstagram、キャンプ専門のWebサイトの広告などを使って募集を開始したところ、2~3週間で定員に達しました。一番人気は第2会場の生井桜づつみ公園で、2.5倍の応募がありました。
応募者の住所をみると、小山市内、市外の県民が多く、そのほかに東京都、神奈川県、千葉県在住者からも多数の応募がありました。募集要項には、公園でキャンプをする単なるイベントではなく、まちづくりのための社会実験であることを強調し、応募の条件である各会場でのイベントには必ず参加することや、キャンプを行う際の細かな注意事項の同意を求めました。キャンプ人気や会場が公園という安心感もあったのか、多くの県内外の方にエントリーしていただきました。私たちとしては、市内在住者には小山市の魅力を再発見・再認識してもらい、首都圏の方には小山市の魅力を知ってもらう良い社会実験になると期待を膨らませました。
ところが5月7日、新型コロナウイルスの緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の期間延長が決定されました。その対象地域からの応募者に対しては、残念ではありましたが参加を辞退していただきました。再度応募者の抽選・調整を行い、小山市、栃木市、足利市など近隣の在住者を中心に約300人の参加者が決まりました。
開催日は、晴天に恵まれました。12時から受付を行い、検温、消毒を済ませ参加者はそれぞれ指定された場所でテントを張ります。参加者の多くが家族連れで、ほかにキャンプを趣味とする若者や大人同士の老若男女が集まりました。小山総合公園は、割り当てた各サイトに色とりどりのテントが立ち並びました。
フォーラムのスタッフは小山青年会議所のメンバーも合わせて約50人で、各会場を手分けして担当しました。コロナ対策として、受付、水場、トイレ、各参加者のサイトを定期的に巡回して施設や参加者の消毒を行うなど、細心の注意を払いました。また城山公園では、白鷗大学ローバースカウトの学生さんにも会場スタッフとしてお手伝いいただきました。また、夜中の時間帯はすべての会場に1名ずつ警備員を派遣し、巡回警備や万が一の事態の初動対応をお願いしましたが、幸い、どの会場でも特別な問題は発生せず、爽やかに朝を迎えることができました。
第1会場の小山総合公園は、開催理念でもある「持続可能なまちづくり」をテーマに浅野市長と市内でまちづくりに取り組む団体代表者ら4人の対談を実施し、キャンプの参加者にも小山市の課題や問題点について共有し、共に考えてもらえる機会になったと思います。その後は地元で活躍するおはやし団体や音楽バンド、白鷗大学のウインドオーケストラ部の演奏を楽しんでもらいました。日没後にはバルーンナイトグローです。小山市は毎年バルーンフェスタを開催している、熱気球の聖地です。小山バルーンクラブさんの協力で、3会場同時にバルーンの立ち上げ、ナイトグローをご覧いただく予定でしたが、当日、残念ながら強風のために気球を膨らますことはできず、バーナーの炎のみのデモンストレーションを披露いただきました。
第2会場の生井桜づつみ公園では、小山市渡良瀬遊水地エコツーリズムガイド協会さんの協力で、渡良瀬遊水地環境学習とヨシ灯り作りを行いました。夜間、参加者が作成したヨシ灯りが幻想的に会場を彩りました。
キャンプ初心者を集めた第3会場の城山公園では、 白鷗大学ローバースカウトによるテントの張り方のアドバイスやアルファ米炊飯体験、また自衛隊には野営展示などを行っていただき、参加者にはアウトドアや防災のノウハウを学んでいただきました。
第1会場の小山総合公園では、普段は21時30分に駐車場の扉が閉じてしまいますが、この日は入り口にカラーコーンを置くのみにして、参加者やスタッフの車が夜でも出入りできるようしました。参加者の大半が近隣の市民だったこともあり、自宅やスーパーに必要なものを調達に行く姿なども見られました。また、夜までキャンプを楽しんで宿泊しないでチェックアウトする参加者にも対応しました。
翌日は午前12時までにチェックアウトです。その際は、私たちスタッフと一緒にテントサイトの片づけときちんと清掃されているか目視確認をしてOKであれば終了です。参加者には、キャンプで火を使う際、芝生を守るための防火カバーを使用することやごみの持ちかえりなどをお願いしました。結果、ごみの散らかりもなく、無事終了することができました。参加者には初心者の方も多数いらっしゃいましたが、準備の手際もよく、事前の入念な周知の甲斐もあり大変マナーが良かったという印象です。
開催日、スタッフが各サイトを訪問して、A4サイズのホワイトボードに参加者が思う小山の魅力(価値・資源・良いところ)を書いてもらい、写真撮影をしました。(後日、まとめて栃木ブロックのFacebook上で動画を配信)また、小山市(秘書広報課)が行っているハッシュタグキャンペーン「#小山の魅力」のチラシを配布して、投稿を呼びかけました。
今回のフォーラムは、「社会実験」や「公園でキャンプ」など全てが初の試みだったので、課題や問題点が残ったものの、「みらい創造キャンプ」は、小山市民がまちの魅力を再発見・再認識するきっかけとなり、小山の魅力の発信者を増やせたのではないかと思います。アンケート結果を見ると、参加者の満足度は100%でした。【新たに発見した小山の価値】では、「渡良瀬遊水地の自然」「コウノトリ、ホタル、川の自然」「身近な公園で楽しいイベント」「公園の利用の仕方と可能性」「主催者らの若者の力」など、ほかにも多くの価値を見つけていただきました。
今後も行政と連携し、市民の皆さんと共にまちの魅力を発信し、賑わいを創出する活動を続けていきます。
そしてJCIの活動を通して、小山市の魅力度を上げていく人材を育てていくことにも努めてまいります。
関連サイト
◆JCI関東地区栃木ブロック協議会Facebook:https://www.facebook.com/JCI.JAPAN.KANTO.TOCHIGI/
◆わたしのまちの魅力発信事業:https://www.youtube.com/watch?v=73gU-toq938
◆まちづくり対談の様子:https://www.youtube.com/watch?v=xyGelgRXNw8
◆(公社)日本青年会議所 関東地区栃木ブロック協議会ホームページ:http://www.jaycee.or.jp/2021/kanto/tochigi/
◆みらい創造キャンプポータルサイト(募集は終了):https://peraichi.com/landing_pages/view/6lgxg
◆一般社団法人小山青年会議所のホームページ:https://www.jcioyama.jp/
※文中に出てくる所属、肩書等は、取材時のものです。(2021年9月掲載)
46 鉄道ファンによる、公園を軸としたまちづくり(一之宮公園:神奈川県寒川町)
45 手ごわい放置竹林から広がる可能性と人のつながり(籔の傍:京都府向日市)
44 公園で行う表現活動は「誰かを力づけている」(せりがや冒険遊び場:東京都町田市)
43 市民団体の力で「やりたいこと」を実現(あぐりの丘:長崎県長崎市)
42 自然の中での主体的な遊びが、学びと成長につながる(山田緑地:福岡県北九州市)
41 次世代に、そして子供たちへ、遊び場づくりのバトンをつなげたい(徳島県阿波市阿波町)
40 3公園でキャンプ まちづくりとして活用(小山総合公園、生井桜づつみ公園、城山公園:栃木県小山市)
39 科学を通じて地域の人々と研究者をつなげる(千葉県柏市)
38 北海道の公園で「やってみたい!」を実現(恵庭ふるさと公園:恵庭市)
37 土器づくりを通じて縄文文化を学ぶ(三ツ池公園:川崎市)
36 公園を地域住民の手で心地よい場所に変えていく(熊野公園:東村山市)
35 次世代のために故郷の自然環境を守り、伝えていく(亀山里山公園「みちくさ」:亀山市)
34 公園は楽しい学びの場!「サバイバルピクニック」、「地域住民による公園づくり」(都立野川公園:東京都)
33 外遊びの楽しさを伝えていく(柏崎・夢の森公園:柏崎市)
32 筑豊の自然を楽しむ会(健康の森公園 他:飯塚市)
31 自然を愛する仲間との森づくりボランティア(びわこ地球市民の森:守山市)
30 野外人形劇で、公園に広がった笑い声(水前寺江津湖公園:熊本市)
29 公園での新たな遊び「珍樹探し」(国営昭和記念公園:立川市)
28 子供たちの居場所で、寄り添い、見守り続ける(柳島公園:富士市)
27 市民とともに育て続ける公園を目指して(安満遺跡公園:高槻市)
26 砂場から広がった子供たちの笑顔(福島市内 他:福島市)
25 造園業者と子供たちがつくる 公園でのコミュニティ(京坪川河川公園(オレンジパーク):舟橋村)
24 子供と子育て世代の目線で再生されたゴーカートのある公園(桂公園:十日町市)
23 市民による、市民のための花火大会(伊勢原市総合運動公園:伊勢原市)
22 かかしで地域を活性化 海外も注目する山里(かかしの里:三好市)
21 市民の手によって「つくり続ける公園」(みなとのもり公園(神戸震災復興記念公園):神戸市)
20 下町に残る、手つかずの自然を守り、育てる(尾久の原公園:荒川区)
19 絵本、ケルナー広場を通して、子供たちの成長を見守る(ケルナー広場:高崎市)
18 生かされていることを実感 自然と一体になれるサップヨガ(国営木曽三川公園ワイルドネイチャープラザ:稲沢市)
17 震災後、市民の手によって再生された西公園(西公園:仙台市)
16 住民の心をつないだ3万個のキャンドル(大栗川公園:八王子市)
15 市民がつくり、見守る広場(朝霞の森:朝霞市)
14 満月BARで公園の非日常を楽しむ(西川緑道公園:北区)
13 わらアートで、地域に笑顔と一体感を(上堰潟公園:西蒲区)
12 再生物語を支えるボランティア組織「MEG」(七ツ洞公園:水戸市)
11 公園が図書館に変わる「敷島。本の森」(敷島公園:前橋市)
10 公園に地域の人が集う「はじっこまつり」(和田公園:杉並区和田)
09 トンボの魅力を子供たちに伝える(西岡公園:札幌市)
08 「朝市」で公園がコミュニケーションの場に(茅ヶ崎公園野球場:茅ヶ崎市)
07 「スポーツ鬼ごっこ」を通じて 子供たちの居場所づくりを実現(しらかた広場:松江市)
06 高齢者、障がい者に公園案内 ボランティア側も癒される(大泉緑地:堺市)
05 仲間と共に成長してきたみはまプレーパーク(みはまプレーパーク:千葉市)
04 地域で子供たちを育成・指導 地元の公園でイルミネーション作り(宇部市ときわ公園:宇部市)
03 公園がアートな空間に生まれ変わる日 あそびの重要性を考える「アートパーク」(松戸中央公園:松戸市)
02 子供たちにワークショップで地域貢献 公園での活動は発見の連続(松戸中央公園:松戸市)
01 自然環境は、利用しながら保全する(国営ひたち海浜公園:ひたちなか市)