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01 自然環境は、利用しながら保全する 02 子供たちにワークショップで地域貢献 公園での活動は発見の連続 03 公園がアートな空間に生まれ変わる日 あそびの重要性を考える「アートパーク」 04 地域で子供たちを育成・指導 地元の公園でイルミネーション作り 05 仲間と共に成長してきたみはまプレーパーク 06 高齢者、障がい者に公園案内 ボランティア側も癒される 07 「スポーツ鬼ごっこ」を通じて 子供たちの居場所づくりを実現 08 「朝市」で公園がコミュニケーションの場に 09 トンボの魅力を子供たちに伝える 10 公園に地域の人が集う「はじっこまつり」 11 公園が図書館に変わる「敷島。本の森」 12 再生物語を支えるボランティア組織「MEG」 13 わらアートで、地域に笑顔と一体感を 14 満月BARで公園の非日常を楽しむ 15 市民がつくり、見守る広場 16 住民の心をつないだ3万個のキャンドル 17 震災後、市民の手によって再生された西公園 18 生かされていることを実感 自然と一体になれるサップヨガ 19 絵本、ケルナー広場を通して、子供たちの成長を見守る 20 下町に残る、手つかずの自然を守り、育てる 21 市民の手によって「つくり続ける公園」 22 かかしで地域を活性化 海外も注目する山里 23 市民による、市民のための花火大会 24 子供と子育て世代の目線で再生されたゴーカートのある公園 25 造園業者と子供たちがつくる 公園でのコミュニティ 26 砂場から広がった子供たちの笑顔 27 市民とともに育て続ける公園を目指して 28 子供たちの居場所で、寄り添い、見守り続ける 29 公園での新たな遊び「珍樹探し」 30 野外人形劇で、公園に広がった笑い声 31 自然を愛する仲間との森づくりボランティア 32 筑豊の自然を楽しむ会 33 青空くるくる
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子供たちの居場所で、寄り添い、見守り続ける

公園をより楽しく有効に使ってもらうために、公園との関わりの深い方々への取材を通して、皆さまに役立つ情報をお届けします。

第28回は、公園・夢プラン大賞2018 「実現した夢」部門の優秀賞 みんなの居場所 「冒険遊び場 たごっこパーク」を主催するNPO法人「ゆめ・まち・ねっと」代表の渡部達也さんのインタビューです。

渡部さんが妻の美樹さん(事務局長)と2004年に設立した「ゆめ・まち・ねっと」では、参加費無料、申し込み不要の「冒険遊び場 たごっこパーク」を島田公園(静岡県富士市)で実施しています。子供たちは木登りや川遊び、泥んこ遊びなどを夢中になって遊びます。貧困家庭や不登校、いじめ、障害があるなど、学校や家庭に自分の居場所を見いだせない子供たちが多くいたことから、遊べる環境の提供とともに「子供たちの居場所づくり」にも取り組んでいます。活動は丸14年になりますが、当時の小学生が社会人になった今も公園という「居場所」にやって来ます。これまで多くの子供たちに寄り添い、見守り続けてきた渡部さんに、これまでの活動と歩みについて話をうかがいました。

冒険遊び場に理解ある富士市職員との出会い

公務員志望だった私は、大学で政治学、行政学を学び静岡県庁に入庁しました。県庁では児童相談所でケースワーカーを、公園緑地課では富士山こどもの国の設立・運営や国体および全国障害者スポーツ大会、浜名湖花博などの広報を担当しました。私は県での業務で、子供の行政にも関わってきたことで、貧困や障害、いじめや不登校など環境や境遇によって生きづらさを強いられる子供たちを大勢見てきました。そんな子供たちに対して、行政としての対応には限りがあることにジレンマを感じていた頃、NPOという市民活動の力が注目されはじめました。看護師の資格を持つ妻も私の思いに賛同してくれたことで、私は16年余り勤めた県庁を辞め、子供の豊かな育ちと居場所づくりの活動を目的に、2004年9月にNPO法人「ゆめ・まち・ねっと」を設立しました。

 

NPO設立を機に、裾野市から富士市に住まいを移し、自宅から程近い市営団地に面した柳島公園を冒険遊び場の会場にしようと、市に申請に行きました。この時、公園を管理するみどりの課の職員がとても理解のある人でした。その職員は、羽根木公園(東京都世田谷区)で冒険遊び場の視察経験があり、いつか富士市でも「冒険遊び場をやりたい」という市民が出てきてほしいと期待していたそうで、快く許可を出してくれました。後述しますが、この職員には、後々、助けてもらうことになります。

 

メディア担当時代に築いたマスコミとのネットワーク

富士市の名所である「田子の浦」の地名から「冒険遊び場 たごっこパーク」という名称にしました。約3カ月の準備期間を経て、第1回「冒険遊び場 たごっこパーク」(以下、「たごっこ」という)を12月26日から8日連続で開催することに決めました。参加を呼びかけるチラシは小学校で配布してもらうほか、県庁で広報担当時代に知り合った何人かの新聞記者に情報を発信して掲載してもらいました。県庁職員時代の経験と人脈が生かされた広報活動でしたが、記者側にとっても「県庁を途中で辞めてNPO活動している人」は珍しい存在だったようで、多くのメディアが取材をしてくれました。

 

また、「たごっこ」のチラシに描かれたイラストは、私が国体の仕事で知り会った水泳の元日本記録保持者で、現在は水の道化師として活躍し、ドラマや映画でヒットした「ウォーターボーイズ」の演技指導でも知られる不破央(ふわ・ひさし)さんが描いてくれました。富士市出身の不破さんは、「たごっこ」の活動に賛同してくれて、「ゆめ・まち・ねっと」の応援Tシャツのデザインも手掛けてくれました。Tシャツは活動応援募金として1枚2,000円以上。障害者就労支援のNPO法人でプリントされ、募金のうち、制作費分は障害のある人たちの就労支援につながる仕組みです。

応援Tシャツは、全部で6色ある。

年末年始の8日間に、延べ450人の子供たちが参加

必要な備品や遊び道具をリヤカーに乗せて柳島公園に運び入れ、12月26日から連続8日間「たごっこ」を開催しました。「たごっこ」では、子供たちとの距離を縮める狙いから私のことは「たっちゃん」、妻のことは「みっきぃ」と呼んでもらいました。

 

年末年始に開催したにも関わらず、毎日来る子供も含め、延べ450人の子供たちが遊びに来てくれました。公園は市営団地に面しているので、それなりの人数の子供たちが来てくれることは想像していましたが、春休みや夏休みと違い、親も休みの年末年始に大勢の子供たちが来たことに驚きました。開催中、毎日来る子供たちがいたのが気になりました。それぞれに話を聞くと、生計を支えている母親が入院してしまい、1人で過ごしている小学4年の女の子。特別支援学校でいじめを受けている発達障害の男の子。この8日間の活動での子供たちとの出会いから、不登校の子や不適切な養育環境にある子、障害のある子など、生きづらさを抱える子供たちの居場所づくりに取り組んでいこうと、考えました。

 

柳島公園では、子供たちは木に登ったり、焚き火で暖をとったり焼き芋を作って食べたり、廃材工作や泥遊びなど自由に遊ぶ姿が見られるようになりました。NPO設立の翌年には、子供たちが安心して遊べる場所を提供する文部科学省の「地域子ども教室推進事業」の助成金を受け「たごっこ」は、そのモデル事業として開催しました。柳島公園では、「たごっこ」に来る子供たちの遊びが盛り上がるのとは裏腹に、活動に対する多く苦情が届き、私はその対応に追われる日々となってしまいました。

子供たちが自由に遊べない公園

柳島公園では、毎日、高齢者が、グラウンドゴルフをしていました。そのグラウンドゴルフをする人たちからは、「たごっこ」の子供たちが来るようになってから地面が凸凹になって、グランドゴルフがやりづらいという苦情が何度も寄せられました。周辺住民からは滑り台やブランコで遊ぶ音がうるさい、川遊びをした子供たちが自分の濡れた衣類を鉄棒に干すなんて、公園を私物化しているといったクレームも言われました。町内会の集まりに呼ばれて、公共の場である公園で子供たちが素っ裸でドラム缶風呂に入るとは何事だと叱責もされました。PTAからは、雨の日に子供を遊ばせていることへの批判もありました。「たごっこ」は、雨天でも決行します。なぜならば、雨の日ならではの遊びがあるからです。子供たちは大喜びで泥んこ遊びを楽しみます。しかしその光景を見た大人からは「風邪を引いたらどうするのだ、けしからん」と言われました。子供会からは、子供会の行事の日にも開催をするなんてと苦情を言われました。そんな日に来る子供は子供会に加入していない子供たちであったのにも関わらずです。

 

 

雨の日だからこそ出来る遊びもあります。

私は住民からのクレームに対して一つずつ、活動の主旨や生きづらさを抱えた子供たちを取り巻く現状を伝えて理解を求めました。グラウンドゴルフを行う人たちのためには、「たごっこ」終了後に、とんぼを使ってグラウンドの整地をしたり、子供たちが鉄棒にシャツを掛けると、ほかの場所に移したりと気を配りました。さらにこの時期、静岡県内の小学校で、児童が同級生をカッターナイフで切りつけるという事件がありました。「たごっこ」では、焚き火で五寸釘を熱し、それを金槌で叩いて釘ナイフを作る遊びが流行っていました。この遊びを知ったPTA役員からは、「事件を受けて、学校は児童のカッターナイフやはさみを管理するようになったのに、ナイフを作らせるとは何事だ」と非難されました。

 

「たごっこ」は、乳幼児から障害のある子供までの居場所になっていることや、公園での多様な遊びが子供の育ちによい影響を及ぼすことなどを訴えてきましたが、近隣住民や町内会、PTA等の理解が得られなかったばかりか、文科省の補助事業を委託してきた市役所までが「(冒険遊び場元祖の)世田谷流を持ち込んでも風土に合わないということだ」と委託の打ち切りを伝えてきました。こうしたことから、柳島公園での活動を休止することにしました。それでも、「たごっこ」に来てくれた子供とその親からの継続を望む声が多かったので、次の活動場所となる公園を探すことにしました。

たごっこの1年をふりかえる報告書にカラーで
載せ、話題にもなった写真。

活動場所に最適な島田公園が見つかる!

富士市は主要産業の一つが製紙関連で、全国有数の「紙のまち」として発展しました。新聞メディアの種類が豊富なことも特徴で、地元紙の静岡新聞のほかにもローカル紙の「富士ニュース」や「岳南朝日」(日刊、タブロイド版、8ページ)などが発行されています。紙媒体数が多い富士市は、古紙回収の取り組みも盛んです。私は当時、娘が通う中学校でPTAの環境衛生部に属し、古紙回収をして換金したお金で、クラブ活動の備品購入などをする活動に従事していました。

 

現在、「たごっこ」を開催している島田公園は、車で回収した古紙を製紙会社に持ち込む途中で偶然見つけました。公園の周辺はうっそうとした木に囲まれ、外からは様子をうかがうことができないため、公園があるとは気が付きませんでした。近隣に住宅はなく、公園の脇には子供が遊べる川(小潤井川)がありました。遊具がありませんでしたが、逆に子供たちの自由な遊びの発想を広げるのではないかと思いました。「たごっこ」の活動にうってつけの公園を見つけた私は早速、市に申請に行きました。

 

市のみどりの課に行くと、「富士市で冒険遊び場をやってくれる市民が出てきてほしい!」と「たごっこ」の活動を後押ししてくれた職員が、さまざまな反対理由から、柳島公園での活動を中止した経緯を知っていて、「たごっこ」の活動再開を喜んでくれました。さらに島田公園近辺の3つの町内会の会長さんに、「たごっこでは、皆さんが子供の頃にやった遊びをやります。子供の育ちのためにも良い活動です」と電話で説明してくれました。その電話のあとで、私たちが各町内会長さんのところへ活動の主旨説明に回ったので、各町内会長さんは理解を示してくれました。市のみどりの課に私たちの活動に理解がある職員がいてくれたことは、とても有難かったです。

「たごっこ」は、誰もが自由でいられる居場所

隔週の土日に開催している「たごっこ」では、決められたプログラムやイベントは一切ありません。大人が企画するプログラムやイベントは、光る泥団子選手権とか一輪車大会とか子供たちの遊びの世界にまで優劣の評価を持ち込むことになりがちだからです。結果的に「劣」側になる子供が「優」側に立てる子供に失笑されたり、馬鹿にされたり、ときに排除されたりする温床にもなります。イベントにみんなと同じように参加できない、プログラムをみんなと同じ進度でできない障害のある子供たちを排除する結果にもなるでしょう。タイムスケジュールもないので、いつ来て、いつ帰るのもよし。遊ばずに何もしなくてもOK!何でも自由です。

ボランティアスタッフはあえて置いていません。ボランティアがいることで子供たちの持つ潜在能力を埋もれさせたり、子供たちが一人ひとりにある持ち味を発揮する機会を奪うリスクが大いにあるからです。ボランティアが子供たちのために何かをしてあげるということは、子供たちから失敗の機会を奪うことにもなります。子供たちが遊びの中で繰り広げる数々の失敗は、発達に欠かせないものです。ボランティアがいないので、初めて来た人にそれとなく話しかける子供や焚き火用の枝を集めてくれる子供などそれぞれができることをやりたい時に手伝ってくれます。私たちは、公園で伸び伸びと自由に遊べる環境を提供するだけで、私と妻は子供たちを見守るだけです。

けがや失敗は子供の遊びにはつきものです。こんな言葉も看板に記しました。

Better a broken bone than a broken spirit (訳)心が折れるより、骨が折れるほうがましだ。

島田公園の脇にある川は、水深30センチメートルほどですが、一部分水深が2メートルほどの場所があり、その場所をめがけ土手から豪快に川へと飛び込む子供たちの姿が真冬でも見られます。そして川から上がり、ドラム缶風呂に入って喜ぶ子供たち。焚き火の火で焼き芋やお餅を焼いて「おいしいね」と言う子供たち。ベーゴマ対決に真剣な表情の子供。ドシャ降りの日に泥んこ遊びに夢中になる子供たち。ふらっと来て、昼寝だけして帰る子供など、居場所を求めて多くの子供たちが「たごっこ」に集まります。

平日の島田公園は、午前中はグラウンドゴルフをやる人、昼間は工場勤務の人が休憩に訪れるくらいで、昼間に小さな子供を連れたお母さんの姿も見かけません。一見、見通しが悪い公園が、活動を実施するのに好都合だったのかも知れません。

 

しかし木に囲まれた島田公園だからといって、活動に苦情がなかった訳ではありません。「たごっこ」では、金髪や茶髪、学校に行っていない子供・若者たちも受けて入れています。外見は派手でも、それは生きづらさを表現するための手段。素に戻ると優しさを発揮してくれる子たちばかりなのですが、教育委員会やPTAからは「なぜ、学校に行かせないのか」「なぜ、指導しないのか」と批判を受けました。ただ、私たちとしては、「批判」というよりは、「評価」と受け止めています。それだけ、特色のある活動をしている証だと思います。

 

それでも、市民活動は地域の風評で活動休止に追い込まれることを経験していますから、折に触れて、新聞やテレビ・ラジオの取材を受けています。日頃からコミュニケーションをとっている新聞記者に「たごっこ」について取材してもらうこともたびたびあります。「たごっこは、社会が求める子供の居場所」「不登校や障害者を受け入れるたごっこに、親が感謝」「たごっこの活動、大学や教育関係者が視察研修」といった記事が朝日新聞や静岡新聞に掲載されるようになると、徐々に直接的な批判や苦情が減りました。2014年の夏、朝日新聞に「たごっこ」に来る子供たちを取材した記事が12回シリーズで掲載され、反響を呼びました。日本テレビ「ミヤネ屋」、NHK「おはよう日本」、テレビ東京系列「がんぱれプアーズ」などで特集もされ、それぞれ大きな反響がありました。

 

2011年には商店街の空き店舗を借りて、地域の子供・若者たちのための屋内の居場所「おもしろ荘」を開設しました。おもしろ荘では、子供・若者と何気ない日常を重ねながら、一人ひとりの生きづらさに寄り添う「まちなか保健室」や「こども食堂」の取り組み、中学生・高校生を対象とした個別学習支援の「寺子屋」、子育て中の親を対象に勉強会を開催するなど、地域の子供・若者や親との交流にも活動の枠を広げました。

若者になっても大切な居場所

「たごっこ」に来る参加人数は、活動4~5年目の頃は親子合わせて50~70人でしたが、現在は平均20~30人ほどです。減少の理由としては、肌感覚ですが、三つほど考えられます。何よりも大きいのは、公園や川での外遊びに魅力を感じる子供が減ったことです。私たちNPOでは、前述したとおり室内の居場所「おもしろ荘」も開いていますが、こちらは連日、大賑わいなのです。子供のこうした変化は、子供自身の変化というよりは、我が子に外遊びを勧める保護者が減ったのが原因ではないかと考えています。

二つ目は、あえて謳った訳ではないのですが「たごっこ」は、非社会的行動や反社会的行動と呼ばれる行動をする子供であったり、不適切な養育家庭の子供、貧困家庭の子供、いじめにあっている子供、障害のある子供といった生きづらさを抱えた子供たちを受け入れる居場所になっていったと同時に、そうした子供が行く場所という評価が我が子はそうではないと考えている保護者に広まっていったからだと考えています。

また、活動は丸14年となり、例えば10歳で来ていた子供は24歳になっています。小学生のときに「遊び場」として来ていた子供たちが思春期以降も、そして二十歳を過ぎても「居場所」として来てくれるようになりました。思春期の子供、成人した若者の数が増えて、単なる子供の「遊び場」という感じから、子供・若者の居場所という感じに変化していったことも「健全な」子供の行き場所を求める保護者の目には、我が子を行かせる場所ではないと映るようになったのでしょう。

参加者の内訳は、義務教育修了の15歳以降の子供・若者の比率が高くなってきています。15歳以降の子供・若者は、大半が小学生の時から継続して通っています。成人しても彼らにとって「たごっこ」は大切な居場所なのです。とくに学校時代に受けたいじめや職場での無理解な扱いにしんどさを抱えている障害のある若者や職を転々としたり、就労がうまくいかなかったりしている若者は、「たごっこ」の活動日を楽しみにしていて、今抱えているしんどさを軽減させていると言います。

 

中学生・高校生をボランティアにすることもありませんし、成人以降の若者に補助スタッフとしての動きを求めることもしていません。大人が安らぎや寛ぎを求めて行く居酒屋や喫茶店のように、いくつになっても、「たごっこ」を居場所として感じていてほしいからです。10~20代の子供・若者は、公園に来て仲間とおしゃべりをしたり、小さい子供の遊び相手になったりしています。また、夏は木陰で、冬は焚き火を囲んで、私達に今も抱えているしんどさをつぶやいていくこともあります。ボランティアとしての役割は誰にも求めていませんが、お手伝いをしてくれる子供・若者が多いです。自分の居場所になっているから、私達が何か作業をしていたりすると、すぐに気が付いて、自然と手伝おうという気持ちになるのでしょう。初めて来たような子供に優しく接してくれるのも自分が居場所としている「たごっこ」を他の子供にも好きになってほしいからだろうと感じます。

 

また、「たごっこ」に通い続けていた子供たちの中には、国公立大学や有名私大に進学する子供たちも少なくありません。もちろん、大学進学そのものが素晴らしいこと、優れたこととは思っていませんが、子供のころに「たごっこ」で外遊びに夢中になっていた子供たちは志を持って大学へ進学していることに喜びを感じます。大規模災害の防災・減災に携わりたいから工学部へ、土壌改良、水質改善に携わりたいから農学部へ、離島で医者になりたいから医学部へ、まちづくりに携わりたいから総合政策部へといった感じで子供たちは自分の進路を決めていきます。多種多様な子供たちが「たごっこ」という居場所に同居できるのも特徴の一つです。「たごっこ」にはいじめも差別も排除もなく、誰もが仲間として認め合える居心地の良さがあるので大学生や社会人になった今でも、参加したくなるのだと思います。

 

いくつになっても、しんどさを抱えた子たちが「たごっこ」に来てくれる以上、私と妻は何時間でも彼らと向き合います。

行政は公園利用にもっと理解を

2017年度の統計(厚生労働省、文部科学省)では、子供の虐待は、調査開始年(1990)から120倍の約13万4千件で過去最多。小中学校でのいじめ認知件数は約40万件で過去最多。小中学生の不登校の児童生徒比率は過去最高。小中高生の自殺者250人は平成になって最悪。子供たちの生きづらさの一端を示す統計数字が軒並み過去最多となっています。生きづらさを抱えた子供が増えていることで、行政や市民活動団体による「居場所づくり」の必要性が高まっています。大学で子供の教育や保育を学ぶ学生の見学も増えています。

 

「たごっこ」の活動を伝える講演依頼も年々増加傾向にあり、内容も10年前は「遊び場づくり」をテーマにした依頼が多かったのですが、今は圧倒的に「居場所づくり」をテーマにしたものが多いです。「若者の自殺予防」や「社会的養護」「発達障害」などをテーマにした講演依頼も届くようになってきました。「ゆめ・まち・ねっと」は、各種の補助金や助成金、寄付金などによって活動しており、常に資金繰りには苦労しています。また、数年前から講演会の依頼が多く、昨年度は年間40回余りの講演を行いました。講演謝金は貴重な収入源になりますし、これまでの知見を広く伝えられることは喜びでもあります。しかし、子供・若者たちの居場所作りのノウハウが全国各地から求められるということは、それだけ、居場所を求めてさまよう子供・若者がいるという社会状況にあるということでもあり、講演依頼の増加を手放しで喜ぶこともできません。むしろ、いつの日か、全国各地に子供たちの居場所ができ、私達の実践に基づく講演依頼が無くなるような社会になってほしいと願っています。

私がNPOを設立後、スムーズに「冒険遊び場」が実施できたことは、県職員時代の経験と人脈が大きな武器になったこともありますが、何よりも市の公園課に理解のある職員がいたことが幸いでした。望ましい現状ではありませんが、公園行政の担当者に、理解ある良きキーマンがいるか否かで活動の良し悪しが決まってしまうという側面があります。行政が私達が許可されているような形で公園を使用させてくれるなら、公園を活用した遊び場づくりや居場所づくりを「やりたい!」と思う市民は多いと思います。市民が実施する「冒険遊び場」に対して、理解があり応援してくれるような公園行政であってほしいと思います。

 

私が県庁時代に読んだ『子どものための公園づくりガイドライン~自由で豊かな遊びと多様な体験を』(公園緑地管理財団発行、監修:国土交通省、推薦:文部科学省※現在は絶版)は、現在の活動において、とても参考になることがたくさん書かれていました。本書では、自由で豊かな遊びや自然体験など、多様な体験が子供にとって重要であること、都市公園における役割や冒険遊び場やさまざまな公園の好事例が紹介されていました。現在は、ウェブサイトなどで簡単に日本全国の取り組みを知ることができるので、公園行政に携わる人には、様々な公園の事例を知っていただき、子供の声であふれるような公園づくりを期待しています。

 

私と妻はこれからも変わらずに、子供・若者たちの居場所である公園で、子供たちに寄り添い、見守る活動を続けていきます。

関連サイト

◆冒険遊び場たごっこパーク ブログ https://blog.goo.ne.jp/yumemachinet

◆ゆめ・まち・ねっと ホームページ http://yumemachinet.web.fc2.com/

◆ゆめ・まち・ねっとFace book https://www.facebook.com/yumemachinet/

 

※文中に出てくる所属、肩書等は、取材時のものです。2019年1月掲載

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過去記事一覧
33 青空くるくる
32 筑豊の自然を楽しむ会
31 自然を愛する仲間との森づくりボランティア
30 野外人形劇で、公園に広がった笑い声
29 公園での新たな遊び「珍樹探し」
28 子供たちの居場所で、寄り添い、見守り続ける
27 市民とともに育て続ける公園を目指して
26 砂場から広がった子供たちの笑顔
25 造園業者と子供たちがつくる 公園でのコミュニティ
24 子供と子育て世代の目線で再生されたゴーカートのある公園
23 市民による、市民のための花火大会
22 かかしで地域を活性化 海外も注目する山里
21 市民の手によって「つくり続ける公園」
20 下町に残る、手つかずの自然を守り、育てる
19 絵本、ケルナー広場を通して、子供たちの成長を見守る
18 生かされていることを実感 自然と一体になれるサップヨガ
17 震災後、市民の手によって再生された西公園
16 住民の心をつないだ3万個のキャンドル
15 市民がつくり、見守る広場
14 満月BARで公園の非日常を楽しむ
13 わらアートで、地域に笑顔と一体感を
12 再生物語を支えるボランティア組織「MEG」
11 公園が図書館に変わる「敷島。本の森」
10 公園に地域の人が集う「はじっこまつり」
09 トンボの魅力を子供たちに伝える
08 「朝市」で公園がコミュニケーションの場に
07 「スポーツ鬼ごっこ」を通じて 子供たちの居場所づくりを実現
06 高齢者、障がい者に公園案内 ボランティア側も癒される
05 仲間と共に成長してきたみはまプレーパーク
04 地域で子供たちを育成・指導 地元の公園でイルミネーション作り
03 公園がアートな空間に生まれ変わる日 あそびの重要性を考える「アートパーク」
02 子供たちにワークショップで地域貢献 公園での活動は発見の連続
01 自然環境は、利用しながら保全する


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