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01 自然環境は、利用しながら保全する 02 子供たちにワークショップで地域貢献 公園での活動は発見の連続 03 公園がアートな空間に生まれ変わる日 あそびの重要性を考える「アートパーク」 04 地域で子供たちを育成・指導 地元の公園でイルミネーション作り 05 仲間と共に成長してきたみはまプレーパーク 06 高齢者、障がい者に公園案内 ボランティア側も癒される 07 「スポーツ鬼ごっこ」を通じて 子供たちの居場所づくりを実現 08 「朝市」で公園がコミュニケーションの場に 09 トンボの魅力を子供たちに伝える 10 公園に地域の人が集う「はじっこまつり」 11 公園が図書館に変わる「敷島。本の森」 12 再生物語を支えるボランティア組織「MEG」 13 わらアートで、地域に笑顔と一体感を 14 満月BARで公園の非日常を楽しむ 15 市民がつくり、見守る広場 16 住民の心をつないだ3万個のキャンドル 17 震災後、市民の手によって再生された西公園 18 生かされていることを実感 自然と一体になれるサップヨガ 19 絵本、ケルナー広場を通して、子供たちの成長を見守る 20 下町に残る、手つかずの自然を守り、育てる 21 市民の手によって「つくり続ける公園」 22 かかしで地域を活性化 海外も注目する山里 23 市民による、市民のための花火大会 24 子供と子育て世代の目線で再生されたゴーカートのある公園 25 造園業者と子供たちがつくる 公園でのコミュニティ 26 砂場から広がった子供たちの笑顔
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砂場から広がった子供たちの笑顔

公園をより楽しく有効に使ってもらうために、公園との関わりの深い方々への取材を通して、皆さまに役立つ情報をお届けします。

第26回は、東日本大震災からの復興を図るために「砂の遊びとアート」の力で、子供の育ちや子育て、活力ある町・地域づくり活動に取り組むNPO法人 福島SAND-STORY事務局長の河内ひろみさん(現:福島市余目保育所長)のインタビューです。

福島市内で保育士をしていた河内さんは、東日本大震災による福島第一原子力発電所事故の影響で、外遊びができなくなった子供たちの体を守るための活動を、多くの専門家や支援者と共に取り組んできました。中でも砂場遊びの取り戻しにより、子供たちの笑顔、そしてわが子の笑顔に閉ざされていた心を開く母親たちを見てきたことで、砂場の持つ力を実感します。

これまでの福島SAND-STORYの活動と、子供の育ちや発達、親子のふれあいや地域の交流にも効果がある「砂場の魅力」について、河内さんに話を聞きました。

「砂場」研究の第一人者、笠間浩幸先生との出会いがきかっけに

私はこれまで30年以上、保育士という仕事を通して多くの子供やその母親たちと関わってきました。そんな中、東日本大震災<2011(平成23)年3月11日>が起こり、その後思いも寄らない原発事故に見舞われたことで、子供たちの生活環境が一変してしまいました。

外遊びができないことによる肥満や運動能力の低下、ストレスなどの健康問題を解消することが福島の子供たちにとって緊急課題となり、子供の心身に関する研修も数多く開催されました。2012年3月11日に開催された「郡山市震災後子どもの心ケアプロジェクト1周年記念フォーラム」での講演「砂場の力」で、笠間浩幸先生(同志社女子大学教授)とお話をする機会を得ました。この出会いが、私にとって大きな転機となりました。

 

屋内砂場で子供たちに笑顔が戻る

福島県内には、国や行政、企業の支援などにより、たくさんの屋内遊び場が作られました。中でも、砂場を設置した施設からは、嬉しい報告が続々と届きました。子供たちが本来の子供らしさを取り戻し、いきいきと砂遊びにのめり込んでいるということ。そして、そんなわが子の姿に、固く閉ざされていた母親たちの心が開き始めたようだということ。

 

砂遊びは、子供の発達に合わせて、[感覚を楽しむ初期段階][社会性、コミュニケーションをが育まれていく段階]、更には[アートとしてしての砂遊びを楽しむ段階]まで多岐にわたる遊びができます。幅の広い遊びができるから子供は砂遊びに熱中し、心身の発達においても重要な遊びだと私たちは考えています。また、子供の砂遊びを見守る大人がコミュニケーションをとりやすい構造であることも、砂場の大きな特徴であるといえます。
私は、長年にわたる保育を通し、砂場の大事さをわかっていたつもりでした。しかし、それはあまりにあたりまえな存在でしかありませんでした。原発事故による屋外活動からの遮断という状況が起き、初めて、砂場がどれほどかけがえのないものであったかを思い知らされました。そして、「この大切な育ちの場を、いつ・どんな時代も、ちゃんと子供たちのそばに置かなければ!」という思いを強くしました。

以下に、福島市内で実施された講演会や新しくオープンした屋内遊び場での状況を紹介します。
 

 

201299日 福島市子育て支援推進事業 子育て講演会

講師 笠間浩幸先生 「乳幼児期の砂遊び ~砂遊びが育てる子どもの心と体~」

福島市に住む子育て中の市民、子育てにかかわる人を対象とした講演会で、砂場の効果についての笠間先生のお話に、「やっぱりそう!」「大事だったんだ!」「取り戻していかなければ!」と会場中の市民、指導者が、砂場や砂遊びのもつ“力”に心を揺さぶられました。講演後、いても立ってもいられなくなり庭に砂場を手作りし、砂遊びから遠ざけてきたわが子(4歳)が、生まれて初めての遊びに嬉々とする姿に涙したというエピソードも寄せられました。

 

2012929日「福島市さんどパーク」オープン

福島市に、砂場や各種運動遊び・イメージ遊び・乳児コーナーを配した屋内遊び場がオープンしました。砂場の利用者の中に、1歳の赤ちゃんを連れた夫婦がいました。「砂遊びってもっと大きくなってからと思っていたけれど、笠間先生の講演を聴いて、ワクワクしながらこの日を待っていました」とのこと。赤ちゃんが恐る恐る砂に触れた瞬間、若いパパとママはとても幸せそうに顔を見合わせていました。

 

2013年11月15日「福島インドア砂場サミット」開催

県内各地の屋内砂場の関係者や遊具業者、設計士、建築家、こども環境学会メンバー、行政担当者らが集り、屋内砂場の衛生管理・運営方法などについて意見を交換し、情報や課題の共有を図りました。どの自治体、団体からの発表においても強調されたのが、砂場の重要性の発見・再認識でした。


福島SAND-STORY発足

このサミットにおいて、砂場環境の改善から福島の復興を促進し、砂場の魅力を発信する必要性を感じた仲間によって、NPO法人 福島SAND-STORY(以下、SAND-STORYという)の前身が発足し、広場などで砂場の魅力を知ってもらうイベントの開催などの活動を始めました。

 

2015919日~921日 福島サンドストーリー2015 第1

福島市街なか広場・中合ツイン広場・東口駅前広場の3カ所で同時開催したイベントでは、世界的砂像アーティストの茶圓勝彦氏、レオナルド・ウゴリニ氏が復興への祈りを込め、メイン会場に、精巧なお城と街並み、ドラゴンを制作してくれました。2種類の巨大砂場(棚倉町産の砂とオーストラリア産ホワイトサンド)では大勢の親子が心ゆくまで砂遊びを楽しみました。福島駅前元気プロジェクト「アキフェス」との合同開催となったこのイベントには、鑑賞した通行人も併せ、期間中3会場で約5万人の人出がありました。「砂の遊びとアートの力」が、たくさんの人と人とをつなぎ、町や地域を元気なエネルギーで満たしてくれることを実感しました。

 

   

 

20151121日~1123日 福島サンドストーリー2015 第2

ダイユーエイトMAX福島店の正面入口・各階エレベーターホールでの砂像制作、ホワイトサンドプールでの砂遊びが実施されました。

国内外のサンドアート大会で多々優勝されている佐田克裕・裕之さん兄弟が、福島への願いをこめ、“豊かさ”の象徴として財宝を積んだ船を制作してくれました。あまりのリアルさに、つい金塊に手を伸ばしてしまった通行人もいたほどの圧倒的存在感でした。また、彼らから手ほどきを受けた福島西高校美術部の生徒が、お菓子の城作りに夢中で挑戦しました。「砂の魅力」が、子供に限らずどの世代をも“とりこ”にしてしまうことを改めて感じました。

     

 

2016年4月22日 NPO法人 福島SAND-STORY設立

SAND-STORYは、理事長の笠間先生をはじめ、教育現場や行政、各種団体、企業などの子育てや遊びのエキスパートが10人。アドバイザーや顧問には、小児科医や子供の遊びに関する専門家らを迎え、2016年春、NPO法人格を取得し、新たな出発をしました。

国や県、市、企業や団体の各種助成金や震災復興の支援などを活動費として、「砂の遊びとアート」プログラムを取り入れた砂遊びのイベントや研修を展開しています。

 

各地での「プラージュ」(フランス語で砂浜という意味)開催

SAND-STORY発足を機に、2015年に開催したイベント「サンドストーリー」を「プラージュ」とし、福島市に限らず、県の内外で開催するようになりました。県内各地で砂浜に見立てた巨大砂場を作り、親子での砂遊びやサンドアート作り、砂像アーティストによる砂像制作の鑑賞会などを開催し、毎回多くの方に、楽しんでもらっています。どの会場も、ひと、ひと、ひと~笑顔と歓声に包まれます。

 

 

 


身近な砂場がいつもいい環境であるように

SAND-STORYはプラージュからの“根っこ”を広げ、プラージュで使った砂の寄贈や寄贈先での研修会を開催しています。
 
〇良質な棚倉産の砂を寄贈

SAND-STORYが使用している砂は、福島県南部の棚倉町(東白川郡)のものです。こちらは、「砂分」96.1%という純度の高い砂質を持ち、触り心地が良く、手指の汚れもすぐに払い落とせます。また、湿らせると形が作りやすく造形遊びには最適です。私たちは、より 良い保育活動のためにも、砂場には良質の砂を導入することを重要視しています。

輸入品のオーストラリア産のホワイトサンドも含め、補助金などで購入した良質な砂は、イベント終了後、保育所・幼稚園・小学校・公園などに寄贈しています。これまでに50カ所以上の施設に提供してきました。

 

 

 

〇寄贈先での研修会・ワークショップの開催

「子育ち・子育て」「保育・教育」「保幼小の接続」をベースに、指導者への研修や親子活動のサポートを展開しています。ここで出会うたくさんの子供たち、家族、指導者との時間が私たちの宝物です。

    

 

社会人となるあなたたちへ ~大学生ボランティアの導入~

SAND-STORYでは、福島市内の大学(福島大学、福島学院大学、桜の聖母短期大学)の学生にボランティア参加の呼びかけをしています。特に幼児教育を専攻している学生たちにとっては、子供たちや家族との関わりが、近い将来への生きた学びにつながります。中には何度もリピーターとして登場し、子供たちとの関わりに顔を輝かせ、砂場スキルの向上を楽しんだりする学生も見られます。そんなとき私たちは、大きな喜びと心強さを抱かせてもらいます。

 

 

 

 

 

私は、ずっと見てきた砂場環境から“ある確信”を持つようになりました。

「砂場に入ると親子は親子でなくなり、夫婦は夫婦でなくなります。年齢や性差、間柄を超え、みんなが遊びの仲間になります。」子供を満面の笑みで満たすのは、“遊んでもらう”ことではありません。お父さん、お母さん、先生が“共に遊ぶ仲間”になった時です。ですから、SAND-STORYは、これからも、子供だけではなく大人の心にも「ワクワクのスイッチ」を入れていきます。

   幼稚園の参観にて 砂場はお父さんたちをヒーローにかえました
幼稚園の参観にて 砂場はお父さんたちをヒーローにかえました。

公園に砂場を!

公園にはさまざまな遊具がありますが、砂場ほど子供が夢中で遊びこめる場はありません。そして、一緒に遊んだり見守ったり、親がその居心地のいい距離感にゆったりと身を置けるのも砂場ならではと言えます。

子供の年齢、時間帯、天気の違いによっても砂場での遊び方は無尽蔵です。五感に刺激を受けたさまざまな体験を通し、子供たちはあらゆる“育ちの芽”を伸ばしていきます。

201610月 福島市乙和(おとわ)公園(福島市飯坂町)に砂場を新設

乙和公園は、普段から幅広い年齢層の方に利用されている公園ですが、残念なことに砂場がなく、特に小さい子供のいる家庭からはその設置が望まれていました。

SAND-STORYは、「いいざかプラージュ」で使用した良質な砂と、砂場枠・カバーを寄贈し、福島市との協働により砂場を造りました。オープンセレモニーでは、地域で活動する女性コーラスグループ「サルビア」と地元幼稚園児が歌を披露し、一緒に砂遊びを楽しみました。2.5×3mという小さな砂場ではありますが、行政や町内会の方たちも多数おいでになり、地域全体でその誕生を喜んでもらいました。

 

「サルビア」の部長さんが挨拶の中でおっしゃいました。「公園は地域の財産」「みんなでこの砂場を可愛がっていきましょう!」と。

屋外砂場の場合、懸念されるのは犬猫の糞害等の衛生問題です。私たちは、子供たちに「遊び終えたらカバーを掛けてね」と伝えました。また、地域の方々には「子供たちのためにどうぞ見守りをお願いします。」「もしもカバーがずれているのを見かけたら直していただけますか」とお願いしました。数日後、地域の方から、砂場にカバーを掛ける小学生の写真が送られてきました。毎日遊びに来ている男の子たちが、砂場を宝物のように大切に守っているという報告でした。誰の責任でなく、大事にしたい場を皆さんで守っていくという姿は、砂場メンテナンスのモデルにもなる公園だと感じました。老若男女すべての世代に親しまれている乙和公園は、子供の見守りや地域づくりにもつながる公園だと確信しています。

 

 

 

砂は多様に姿を変えます。そこで出会う気付きや、学び、感動は無限大です。赤ちゃんのいる家族が外への一歩を公園に求めた時、そこで出会う砂場にはぜひ良質の砂が入っていてほしいと願います。すると、親子は何度も訪れ「いい時間」は繰り返されます。それは「豊かでかけがえのない家族の歴史」になっていきます。その時間が子供の「人生の根っこ」になり、それはまた、世代を超えて循環していきます。ですから、公園はぜひともそのステージとして機能する場であってほしいと願います。何より、豊かな時間を育む環境として、子供や家族の「ファースト砂場」がどの公園にもしっかりありますようにと。

 


“砂”シンポジウムの開催

SAND-STORYは、毎年テーマをクローズアップし、シンポジウムを開催しています。さまざまな機関との連携を深めながら、学びや情報を発信し、課題を意識した次年度へのステップとしています。

 

  

「一度は失いかけたからこそ、この福島から」

SAND-STORYは、これからも砂遊びの魅力と大切さを発信し、子育ち・子育て、地域づくりをサポートする活動を続けていきます。

 

 

 

2018年9月7日(金)~9日(日) いわき駅前多目的スペースにて「いわきプラージュ2018」が、9月8日(土)~9日(日) 福島市 十六沼公園にて「十六沼プラージュ2018」が開催されます。

いわきプラージュでは、「いわき駅前が砂浜になる!」をコンセプトに砂像制作実演・展示、砂場あそび、砂絵、鳴き砂体験が実施されます。

   

■福島 SAND-STORY関連サイト
福島SAND-STORY ホームページ:https://www.fukushima-sand-story.com/

 

※文中に出てくる所属、肩書等は、取材時のものです。2018年9月掲載

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26 砂場から広がった子供たちの笑顔
25 造園業者と子供たちがつくる 公園でのコミュニティ
24 子供と子育て世代の目線で再生されたゴーカートのある公園
23 市民による、市民のための花火大会
22 かかしで地域を活性化 海外も注目する山里
21 市民の手によって「つくり続ける公園」
20 下町に残る、手つかずの自然を守り、育てる
19 絵本、ケルナー広場を通して、子供たちの成長を見守る
18 生かされていることを実感 自然と一体になれるサップヨガ
17 震災後、市民の手によって再生された西公園
16 住民の心をつないだ3万個のキャンドル
15 市民がつくり、見守る広場
14 満月BARで公園の非日常を楽しむ
13 わらアートで、地域に笑顔と一体感を
12 再生物語を支えるボランティア組織「MEG」
11 公園が図書館に変わる「敷島。本の森」
10 公園に地域の人が集う「はじっこまつり」
09 トンボの魅力を子供たちに伝える
08 「朝市」で公園がコミュニケーションの場に
07 「スポーツ鬼ごっこ」を通じて 子供たちの居場所づくりを実現
06 高齢者、障がい者に公園案内 ボランティア側も癒される
05 仲間と共に成長してきたみはまプレーパーク
04 地域で子供たちを育成・指導 地元の公園でイルミネーション作り
03 公園がアートな空間に生まれ変わる日 あそびの重要性を考える「アートパーク」
02 子供たちにワークショップで地域貢献 公園での活動は発見の連続
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