
私が芝生と関わるきっかけは、二人の息子が通った月島の幼稚園の園庭を芝生化した経験からです。その幼稚園はゴムチップウレタン舗装された園庭でした。アスファルトほどではありませんが夏場は50℃近い高温になり、幼い子供たちにとっては危険な暑さだな、と思いましたが都心での子育てでは珍しくない光景なのだと、どこかで諦めていました。その後次男が通園しはじめた頃、校庭を全面芝生化した都内の公立小学校を見学する機会がありました。美しい緑の芝生はふかふかと気持ち良さそうで、子供たちは裸足で芝生の感触を楽しむかのように駆け回っていました。その杉並区立和泉小(今は合併し名称変更)の芝生を育てている保護者グループ「和泉グリーンプロジェクト」の皆さんから校庭を芝生化した話、芝生を育てる基礎知識などを伺いました。すっかり芝生に興味を持った私は「息子が通う公立幼稚園でも園庭を芝生化できないだろうか」と考えるようになりました。
その思いを園に相談したところ、タイミングの良いことに園庭改修が予定されているということでした。話を聞いてくれた園長先生も芝生化に興味を持たれ、さらに「和泉グリーンプロジェクト」の皆さんから芝生化の予算や注意事項などを教えていただきました。その話を基に資料を作成し、園長先生と教育委員会が相談を重ね、2011年園庭の芝生化を提案しました。
園庭を芝生化するに当たって、最も重要なことは芝生の「維持管理」だということが分かりました。芝生は敷いて終わりではなく、その後の手入れ次第で生き続けるか、それとも無残にも無くなってしまうか決まるのです。この頃、準備団体として園長先生の協力で芝生ボランティア(芝ボラ)がつくられました。幼稚園の保護者の中には、さまざまな理由を挙げて芝生化に反対する人たちがいました。芝ボラで反対意見をひとつひとつ丁寧に答え、解決策を示して理解を求めました。その時の反対意見に対するQ&Aを作成することで、芝から芝刈り機などの用具までの知識を増やしていきました。
その後、中央区と幼稚園が芝生導入に向けて何度も話し合いを続けた結果、園庭の芝生化が決定され、改修工事によって2011年に園庭の約200㎡が芝生に生まれ変わりました。業者さんによる年間の維持管理のルーティン作業や注意事項などが示され、2011年から芝生の維持管理がスタートしました。さらに一般向けの芝生管理のためのマニュアルを作成し、保護者が自ら芝を管理育成する「芝生部」を立ち上げました。この芝生部はそれまで疎遠だった親同士が仲良くなるきっかけとなり、芝生を中心とした賑やかなコミュニティが生まれました。ママたちによる定期的な雑草取りや芝刈り作業は、子供たちから大きな声援が飛ぶほどの盛り上がりでした。子供たちが裸足で駆け回る芝生には、いつしかトンボが飛んできて、バッタが棲み着くようになりました。
そして次男が卒園した2013年、幼稚園での芝生化のノウハウと経験があったことで、中央区(公園担当課長)から「黎明橋公園を芝生化するので住民活動ができないか?」と打診がありました。

47 公園で芝生とコミュニティを育てる(黎明橋公園:東京都中央区)
46 鉄道ファンによる、公園を軸としたまちづくり(一之宮公園:神奈川県寒川町)
45 手ごわい放置竹林から広がる可能性と人のつながり(籔の傍:京都府向日市)
44 公園で行う表現活動は「誰かを力づけている」(せりがや冒険遊び場:東京都町田市)
43 市民団体の力で「やりたいこと」を実現(あぐりの丘:長崎県長崎市)
42 自然の中での主体的な遊びが、学びと成長につながる(山田緑地:福岡県北九州市)
41 次世代に、そして子供たちへ、遊び場づくりのバトンをつなげたい(徳島県阿波市阿波町)
40 3公園でキャンプ まちづくりとして活用(小山総合公園、生井桜づつみ公園、城山公園:栃木県小山市)
39 科学を通じて地域の人々と研究者をつなげる(千葉県柏市)
38 北海道の公園で「やってみたい!」を実現(恵庭ふるさと公園:恵庭市)
37 土器づくりを通じて縄文文化を学ぶ(三ツ池公園:川崎市)
36 公園を地域住民の手で心地よい場所に変えていく(熊野公園:東村山市)
35 次世代のために故郷の自然環境を守り、伝えていく(亀山里山公園「みちくさ」:亀山市)
34 公園は楽しい学びの場!「サバイバルピクニック」、「地域住民による公園づくり」(都立野川公園:東京都)
33 外遊びの楽しさを伝えていく(柏崎・夢の森公園:柏崎市)
32 筑豊の自然を楽しむ会(健康の森公園 他:飯塚市)
31 自然を愛する仲間との森づくりボランティア(びわこ地球市民の森:守山市)
30 野外人形劇で、公園に広がった笑い声(水前寺江津湖公園:熊本市)
29 公園での新たな遊び「珍樹探し」(国営昭和記念公園:立川市)
28 子供たちの居場所で、寄り添い、見守り続ける(柳島公園:富士市)
27 市民とともに育て続ける公園を目指して(安満遺跡公園:高槻市)
26 砂場から広がった子供たちの笑顔(福島市内 他:福島市)
25 造園業者と子供たちがつくる 公園でのコミュニティ(京坪川河川公園(オレンジパーク):舟橋村)
24 子供と子育て世代の目線で再生されたゴーカートのある公園(桂公園:十日町市)
23 市民による、市民のための花火大会(伊勢原市総合運動公園:伊勢原市)
22 かかしで地域を活性化 海外も注目する山里(かかしの里:三好市)
21 市民の手によって「つくり続ける公園」(みなとのもり公園(神戸震災復興記念公園):神戸市)
20 下町に残る、手つかずの自然を守り、育てる(尾久の原公園:荒川区)
19 絵本、ケルナー広場を通して、子供たちの成長を見守る(ケルナー広場:高崎市)
18 生かされていることを実感 自然と一体になれるサップヨガ(国営木曽三川公園ワイルドネイチャープラザ:稲沢市)
17 震災後、市民の手によって再生された西公園(西公園:仙台市)
16 住民の心をつないだ3万個のキャンドル(大栗川公園:八王子市)
15 市民がつくり、見守る広場(朝霞の森:朝霞市)
14 満月BARで公園の非日常を楽しむ(西川緑道公園:北区)
13 わらアートで、地域に笑顔と一体感を(上堰潟公園:西蒲区)
12 再生物語を支えるボランティア組織「MEG」(七ツ洞公園:水戸市)
11 公園が図書館に変わる「敷島。本の森」(敷島公園:前橋市)
10 公園に地域の人が集う「はじっこまつり」(和田公園:杉並区和田)
09 トンボの魅力を子供たちに伝える(西岡公園:札幌市)
08 「朝市」で公園がコミュニケーションの場に(茅ヶ崎公園野球場:茅ヶ崎市)
07 「スポーツ鬼ごっこ」を通じて 子供たちの居場所づくりを実現(しらかた広場:松江市)
06 高齢者、障がい者に公園案内 ボランティア側も癒される (大泉緑地:堺市)
05 仲間と共に成長してきたみはまプレーパーク(みはまプレーパーク:千葉市)
04 地域で子供たちを育成・指導 地元の公園でイルミネーション作り (宇部市ときわ公園:宇部市)
03 公園がアートな空間に生まれ変わる日 あそびの重要性を考える「アートパーク」(松戸中央公園:松戸市)
02 子供たちにワークショップで地域貢献 公園での活動は発見の連続(松戸中央公園:松戸市)
01 自然環境は、利用しながら保全する(国営ひたち海浜公園:ひたちなか市)