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初めて触れた天然記念物の生きもの
甲殻類最強の異名を持つヤシガニ

甲殻類最強の異名を持つヤシガニ

沖縄の竹富島へ家族旅行した時のこと、満天の星空とヤシガニに会いたくて日が暮れてから浜辺へ出かけました。「最近、ヤシガニは減ってしまったからね~」と宿屋の女将から聞いていたので、あまり期待はしていませんでした。

 

浜辺に到着して夜空を見上げると、輝く星で満たされている。美しい!そして、足元に目を向けると、いつもよく見るヤドカリよりも一回り、いや二回りほど大きな奴がノッシノッシと歩いていました。摘まみ上げると重量感がある。ほどなくして私の掌には特大のヤドカリが2つ乗っていました。一番大きなものを探し回った成果です。よく見ると手足や体に硬い毛が生えています。

そのとき「ヤシガニ!」とカミさんの大きな声が、浜辺に響き渡りました。その言葉を聞いた瞬間、手に持っていた大きなヤドカリを海に放り投げ、夢中で声の方向に走り出していました。図鑑で見たとおり、30センチぐらいはありそうな青いエイリアンが、目の前を悠々と歩いています。ヤシガニは実は危険な生きものなのです。毒針を持っているわけでもなく触れても大丈夫ですが、気を付けなければならないのはハサミです。硬いヤシの実を軽々と引き裂くことができます。さて、なんとか捕まえたい!手に持ちたい!だけど、動きがどれほど素早いのか?どのような動きをするのか?予想がつきません。手で背中を抑え込んだら、さっとハサミを持ち上げてガシッと挟んでくるかもしれません。色々と考えた末、足で踏み付けることにしました。

 

重い!硬い!ちょっと怖い!

重い!硬い!ちょっと怖い!

正解でした。右足で動きを止めてから背中の甲羅を親指と小指で挟み込んで持ち上げました。重い!先ほどのヤドカリの比ではありません。いやいや大きい。カニ!という名前はついていますが、前進しながら歩きます。実は陸上歩行性のエビの仲間(ヤドカリと一緒)なのです。深みのある青が印象的です。写真をたくさん撮影してから、見つけた場所にリリースしました。慌てるわけでもなく、ゆるりと海岸沿いの低木林の中に消えていきました。

 

さて、満天の星空と素晴らしい野生動物たちのおかげで、足取り軽く帰途につきました。宿の女将に「ヤシガニ、見つけたよ!」と伝えると、「なんで持って帰ってこなかったの?高級食材だよ!」と…。私が見つけたサイズだと、1万円ほどの値がつくそうです。保護されていない竹富島で、減っていくのが理解できました。でも、小さいヤシガニに挟まれて、血だらけになった経験を持つ宿の女将はヤシガニ採りには出かけないそうです。「ちっちゃいのも危ないよ!大人のヤシガニだったら、おばちゃんの指は飛んでたね!」と話してくれました。扱い方を間違うと“危険生物”ですね。

 

オカヤドカリは6~7月に産卵のため大群で砂浜にあがってくる

体長4~5㎝もあるオカヤドカリ

 

 

さてさて、このショートストーリーのタイトルである「天然記念物の生きもの」について、ヤシガニは絶滅危惧種に指定されていますが、天然記念物ではありません。なんと私が海に放り投げたあの大きなヤドカリが、実は天然記念物だったのです。「ヤシガニ!」と聞いた瞬間、反射的に海に放り投げたため、ヤドカリの写真は1枚も手元にありません。私の人生で初めて手にした記念すべき「天然記念物」を、私は写真も撮らずに海に投げ捨てたのでした…苦笑

 

それにしても、天然記念物のヤドカリは浜辺でたくさん見られました。そんなヤドカリがどうして天然記念物に指定されたのでしょうか?不思議に思って調べてみると、納得できました。この天然記念物の名前は「オカヤドカリ」と言います。最初に小笠原諸島で発見され、その地域(浜辺)でしか見られない!数もそれほど多くなかったため、すぐさま天然記念物の指定がかけられました。指定後ほどなくして沖縄にたくさん生息していることが判明。地元の漁師は魚の餌として使っているほど、たくさんいたのです。

このオカヤドカリは、天然記念物に指定されていることは間違いないのですが、ペットショップでも売られています。天然記念物が数百円で販売されている…変な感じがしますね。

そして、私にとっては、忘れられない思い出となりました。初めて手に触れた天然記念物のワイルドライフを投げ捨てたのですから…笑

(2021年5月掲載)

 

Project WILD公式HPには環境教育活動事例などが掲載されています:https://www.projectwild.jp/

 

 

キーワード: 天然記念物、ヤシガニ、オカヤドカリ、沖縄
川原 洋(かわはら ひろし)
川原 洋(かわはら ひろし)
Project WILD 日本代表 コーディネーター、(一財)公園財団 環境教育推進室 室長
1967年奈良生まれ・奈良育ち。幼少から特に生き物が好きで子供時代は真っ暗になるまで野山で遊び、自然に親しんだ。 一般財団法人 公園財団がProject WILDをアメリカから導入した、1999年よりこの仕事に携わる。 アメリカで年1回開催されるProject WILDコーディネーター会議に、日本代表として参加しAFWA(全米野生生物協会)や全米各州のコーディネーターとネットワークを持つ。2019年に全米最優秀コーディネーター賞に輝く。アメリカ人以外の受賞はProject WILDの長い歴史の中で初めての快挙。
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