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生きもの小話
私と動物、時々パパ

「パーン!」

ある晴れた日、近所にある牛小屋で突如鳴り響いた音。私は牛にビンタした。

この日、私は初めて動物に触れた。牛たちは私に驚き、みな後退りし、私は何事もなかったかのように平然としていた。そんな私の姿に父は驚いていた。当時2歳の私は、物怖じしない子だったため、牛にビンタをかましてしまったに違いない。今思えば本当に申し訳ないことをしてしまった。牛さんたち、驚かせてごめんね。叩いてしまった牛さん、ビンタしてごめんね。

 

 

月日は流れ、5歳になった。この年から保育園で飼育していたウサギのお世話が始まり、とても楽しかった思い出がある。しかし、卒園前にそのウサギは死んでしまった。

5歳にして死というものに直面し、その悲しさを学んだ。私は、今振り返ると死んでしまうのは、確かに悲しいことだが、それがあるからこそ命のありがたさが分かると学んだ。

この日を境に、もうそれは大変。食べるために買ってきた生きたカニを〆るだけで涙。

飼っていたカブトムシが死んだら涙。長年乗ってきた車が売られて涙。もはや生き物ではない…。両親からは「面倒くさ…」と言われて号泣する私。だって悲しいんだもの。

このような理由で、私はペットを飼ったことがない。しかし、環境に恵まれていた為、近所の飼い犬のお世話や触れ合うことができていた。

 

動物に触れているときの私は、自分のことが好きになれる。なぜなら裏表のない愛情で生き物に触れているからだ。動物も好き嫌いをハッキリ示してくれるため、このような感情でいられる。一番懐いていた柴犬は、私と遊んでいる時、飼い主のおじさんが私に触れるとおじさんに噛み付く。血が出るまで…。とても感情豊かでわかりやすい子だ。

上記のように死の儚さだったり、感情を表に出す大切さだったり、動物たちは色々なことを教えてくれる。

 

私は、ある時から異様に馬が好きになった。動物の中でも感受性豊かでその顔がわかりやすいからなのと、馬の筋肉や骨格が好きだった。ある日、祖父母と山登りに行く途中、乗馬体験ができるところを見つけた。結局、私は山には登らず馬と戯れて待っていた。この日から、祖父母に毎日のように「馬が欲しい」とすがっていた。もちろんこの願いは、受け入れられなかったが、一度だけ「買ってやる」と言われたことがある。それは、私がアフリカで働くと言った時だ!どれほどアフリカに行ってほしくなかったかが、よく分かる出来事だった。

 

 

こんな動物好きな私だが、昔から虫が大嫌いだ。嫌いな点はいくつもあるが、特に嫌なのは2つある。

1つ目は、急に飛ぶ。2つ目は、足の見た目と動き方が異様すぎる。

1つ目の例としては、テントウムシが指先にとまったときや、カブトムシなどが急にその場で止まった時によく見られる。どちらも予測不可能で背中が急にパカっと開くので、とてもおぞましい。

2つ目の例としては、虫がひっくり返って自力で元の体勢に戻ろうとしている時、6本の足が全てばらばらに動いているのが鳥肌ものだ。このような理由で、私は大の虫嫌いとなった。

しかし、家に出た虫の駆除と無心で虫に触っているときは平気なのだ。自分でも不思議だ。よく家のお風呂場にナメクジが出ていた。それを見つけると塩をかけて遊んでいた。縮む様子が目に見えて楽しかった。一番楽しんでいたのは父だった。「縮むぞ!」と初めて私に教えてくれた時の少年のような顔が忘れられない。精神年齢…約5歳。

 

虫に触れても大丈夫な時がある。それは「無心」になっているとき。普段だったら絶対に触らないクワガタやセミも掴んだり、手に乗せたりできる。困るのが、いつ無心の状態が切れるかわからないのだ。最悪なのが、触ったり、腕などに乗せたりしている時に、突然、「無心」がどこかへ行ってしまい、いつもの強烈な嫌悪感に襲われてしまう。

それはもう大パニックだ。なぜこんな現象が起こるのか、自分の体でありながら理解不能である。

それと家の中で虫が出たときに、気を付けていることがある。それは完全に駆除するか、外に出たことをこの目で確認するまで寝ないことだ。もし確認せず寝た場合、枕元に出たことを想像すると絶叫ものだ。実際、父は経験している。枕もとで音がしていて起きたら、ゴキブリだったらしい。その時は他人事だったため、笑っていたが、もし自分だったら不眠症になっていた。

 

生物は多種多様な見た目をしている。それが美しいと感じるとき、嫌悪や苦手と感じるとき、恐怖すら感じてしまうときもある。しかし、みな同じ星に住む家族であることもまた事実。私自身、このことを忘れずに、自然と向き合って生きていきたい。

 

星新一さんが一般の方から寄せられた作品をまとめた「ショートショートの広場」中で、好きな話がある。

ある日、神様が地球に住む全ての生き物たちに言いました。

「みなのもの、願い事を一つ言いなさい!その中で最も多い願い事を一つだけ叶えよう!期限は1週間後じゃ…」

地球上の生きものたちは、仲間同士(種類ごと)で話し合った。私たち人類も話し合った。争いが起き、結局、人類の答え(一つの願い)はまとまらなかった。そして、期限の1週間後になったとき一番多い願いが叶えられた。なんと地球から人類が消えたのだ。

人類以外全ての生きものたちの願いは、「人類をこの世から消してください!」だったのだ。

この話は私の心にグッと突き刺さった。

私は全ての生きものたちに対して、これからも感情豊かに愛情を持って、責任ある行動を貫きたいと思う。

 

(2025年3月掲載)

 

Project WILD公式HPには環境教育活動事例などが掲載されています:https://www.projectwild.jp/

キーワード: 生きもの、動物、虫、神話
神田 有優(かんだ ゆう)
神田 有優(かんだ ゆう)
TCA東京ECO動物海洋専門学校 2025年3月卒業予定
株式会社エイアンドエフ(A&F) 2025年4月~

2004年静岡県出身・静岡県育ち。
幼い頃から自然に囲まれた場所で育ち自然や生き物が大好き。中学生の頃、アフリカのサファリガイドに憧れた。そしてTCA東京ECO動物海洋専門学校に入学。そこでは様々なフィールド実習を行いキャンプや登山の楽しさを知った。今ではアウトドア用品を紹介し、1人でも多くの自然好きを増やしたいと思っている。
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