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生きもの小話
生きものを連れてのお引っ越し

さて、唐突ですが「生き物」を連れてのお引っ越しってどうすると思いますか?

今回は全国転勤がある職業と生き物飼育の両立の大変だったことをご紹介します。

ご存じの方はご存じかと思いますが、私は色々な生き物と共に暮らしています。

伴侶動物として王道の犬や猫ではなく、魚やイモリ、鳥などなど様々です。

新卒で長野の「国営アルプスあづみの公園」へ配属が決まった時、あづみの公園から宮城にある「国営みちのく杜の湖畔公園」へ転勤が決まった時…身一つで引っ越しが出来ないことがこんなに大変だとは、思いもしなかったです。

 

まず第一回目が実家のある神奈川から長野への運搬・お家探しです。沢山のイモリが置ける・ウサギが飼育可・90cmの大きな水槽を置けることが家探しの条件でした。ペット可の賃貸は多くなく、一応防犯も考えて2階という条件も付けたところ、該当する物件は数件しかありませんでした。それでも何とか素敵なアパートを借りることが出来てほっと一安心したのもつかの間、生き物の移動の問題です。

 

その当時はイモリ・魚・ウサギと、シンプルな構成であったものの、車もまだ持っておらずどう運搬したら良いものか途方に暮れました。そんな時友人のお母様が快く、神奈川から長野までイモリを運んでくださり、イモリの問題は無事解決しました。残るはウサギと魚です。ウサギは自分の移動と共に、新幹線で「手荷物」として運ぶことが出来たので特に問題はありませんでした。残るは魚です、小さな魚ならまだしもその時移動をする必要があったのは30㎝近い大きさの魚でした。それも熱帯魚のため、温度を保ちつつ運ばなくてはなりません。そこでお願いしたのが熱帯魚ショップでした。学生時代にアルバイトをさせてもらっていたショップで大きな袋に空気と共に梱包してもらい、カイロを入れて長野まで郵送をしてもらうことが出来ました。このように沢山の方の協力で、神奈川から長野までの運搬は乗り越えることが出来ました。

 

問題が次の長野から宮城への異動でした。長野で念願の一人暮らしを始めたことで、それまで飼育することの出来なかった、ハト※やニワトリまで増えていました。ついでに結婚もしたことで、人間も一人増え、その人間が連れていたトカゲにウサギにカメまで増えて、まるで小さな動物園状態です。これらを全部受け入れてくれる物件探し&長野から宮城まで片道400㎞以上の距離を運ぶ必要がありました。

 

まず、物件探しに難航しました。「ニワトリ」←これがダメなのです。「ペット可」は「ニワトリ可」ではないのです!ニワトリというと皆さんがイメージするのは、フライドチキンになるような品種だと思うのですが、あちらは大体2~3kgぐらいの重量級のニワトリです。

私のお家にいるのは「チャボ」という品種のニワトリで500g程度のメスです。事前に不動産仲介屋さんには説明をしていて、オスではないので「コケコッコー!」とは鳴かないこと、手に載るくらいのサイズであることはお伝えしていました。(手にチャボを載せて小さい鳥ですアピールまで!)

小さいニワトリアピール!

小さいニワトリアピール!

 

その上で家が全く見つからず、仲介屋さんが目の前で次々に断られている様子を見て、これは大事だと改めて思いました。私的にはインコ→ハト→ニワトリと鳥の延長線ぐらいの気持ちでいたので「ハトは良いけどニワトリはダメなんだ…」と身にしみました。

「ニワトリ可なら何処のどんな家でも良いです」と泣きついて、ようやく築30年の2階建ての家を紹介いただくことが出来ました。(家を借りるにあたり後日全ての生き物の写真を提出しました)

広すぎて寒いし、蛇口から水はポタポタ漏れてるけど良いのです、ニワトリと暮らせるなら…。

そんなこんなで、家は見つかりました。次は運搬です。

 

異動時期は2月の寒い時期、鳥・魚・は虫類は暖かく、イモリは暖めずに運ぶ必要がありました。結論から言うと、すべて軽自動車に乗せて運びました。膝にハト、足下にもハト、後ろにニワトリ、ウサギ、カメ、トカゲ、魚にイモリ…「となりのトトロ」の引っ越しシーンをご存じでしょうか?車の荷台いっぱいに家具があり、その中にサツキとメイがいる。あんな感じです。

天井いっぱいまでケージも積んで、ガチャガチャと騒がしく揺らしながら深夜に長野を出て、昼に宮城へ着きました。本当に大変な引っ越しでしたが誰も欠けることなく到着することが出来良かったです。

 

膝にも足下にもハト

膝にも足下にもハト

なんとかみんな載った…

なんとかみんな載った…

お弁当パックに詰められるタイガーサラマンダー

お弁当パックに詰められるタイガーサラマンダー

 

何が言いたいかと言うと、転勤のある仕事をしながら生き物と暮らすというのは大変だけど、まるっきり諦めなくてはいけないものでもないということです。むしろ初めての地で心細い時に、自分と一緒に過ごしてきた生き物たちの存在に救われます。(私は初めての一人暮らしで心細い時は、神奈川から連れてきたウサギを相手に話しかけていました…)

環境の変化で自分も変わっていく中、自分を見失いそうな時でも、共に暮らす生き物は変わらずのんびりと過ごしている訳で、自分以外の変わらないものの存在はとても支えになるのです。

 

みんなが生き物好きなわけではないこと、共に暮らしたいと思っているわけではないということを念頭に、それでも生き物と過ごすことはとても楽しいですよと伝えたいです。

あなたの家にも是非ニワトリを。

 

 

※ 椎名家のハトは鳩レースのために育てられたハトが訳あって仲間入りしたケースです。野生のハトは鳥獣保護法により許可なく捕まえることはできません。

 

(2025年4月掲載)

 

Project WILD公式HPには環境教育活動事例などが掲載されています:https://www.projectwild.jp/

椎名 春菜(しいな はるな)
椎名 春菜(しいな はるな)
一般財団法人公園財団 国営みちのく杜の湖畔公園勤務 Project WILD エデュケーター 1997年神奈川県生まれ。
2019年に入団し新卒で国営アルプスあづみの公園に勤務後、2023年より国営みちのく杜の湖畔公園 自然共生園に勤務。

幼少期より生き物好きで、魚から始まりここ数年は両生類や昆虫類の沼にどっぷりと浸かりつつあります。2023年より「自然共生園」というとっても楽しい場所の配置になり、ヒツジのお世話や草原の植物のこと等、これまで知らなかったことを日々勉強中です。素敵なのに人が中々来ない、自然共生園の認知度の低さを解消するにはどうしたら良いか試行錯誤中です。

自然共生園について:https://michinoku-park.info/north-area/shizenkyouseien/
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