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生きもの小話
牛乳ビンと幼虫

幼稚園年長組だった頃、団地の前の小さな公園はとても広く感じました。公園の入り口には2本の大きなシナサワグルミが青々と葉っぱを茂らせていました。私が小さかったので、本当に高く感じたのですが5メートルほどの木だったと思います。

 

当時はテレビゲームなど多種多様な屋内レクリエーションがなかったため、外遊びが主流でした。その一つに“ごっこ”遊びがありました。一般的には仮面ライダーやゴレンジャー(当時の戦隊もの)になりきって遊ぶのです。ジャンケンに負けたら敵の怪人役でした。

 

しかし、私とよく遊ぶメンバーは、夏になると少し違ったものになりきったのです。

 

それは…“セミ”でした。さてどうやって遊ぶのか?恐ろしくシンプル!セミになりきって、木に登って鳴くだけです。私のお気に入りはクマゼミでした。透き通った羽根に黒いボディ、金色の微毛が太陽光に反射してキラキラと輝きます。クマゼミになりきるわけですから、その特徴を掴まなければなりません。クマゼミはいつも木の一番高いところで鳴いていました。そして、鳴き声は、シュワシュワ..またはシャ~シャ~と聞こえる人もいるでしょう。今、考えると..まったく何が面白かったのだろうか??不思議です…苦笑

 

さて、いつものように仲良い友達4~5人でセミごっこをしていたときでした。

私はシナサワグルミの一番てっぺんに陣取り、どうだ!と言わんばかりにシュワシュワシュワ…ジジジジじぃ~♪と大声で鳴いていました。そのとき…素敵!?なものを見つけたのです。巨大なイモムシ(青虫)がご機嫌に葉っぱを食べているではありませんか。最初はその大きさにギョッとしたのですが、こいつは毒も持っていないし…。触ると弾力があってなかなか気持ち良い!触りすぎると尻尾をフリフリして嫌がります。

 

大きさは10センチほどでしょうか?サワグルミの葉っぱと同じ色合いなので、最初はまったく気づきませんでした。美しい緑色で尻尾付き!間違いなくスズメガの幼虫です。

 

子どもって、興味がある物を見つけると集めます。良く見ると、シナサワグルミのあちこちの葉っぱにいるわいるわ。そういえば、いつも夏になるとうっそうと葉を茂らせるのに、あのときはけっこう見晴らしが良かったなぁ~って。食欲旺盛な幼虫たちのせいで葉の量が減っていたのですね。

セミごっこは中断、野球帽の中にどんどん巨大な幼虫を入れていきました。30分ほどで帽子は満タン。その木の幼虫は、ほぼすべて採り切ったと記憶しています。採ったら満足なのです。そして、手に入れたものを逃がすのは嫌なのです!

 

するすると木から降りて、すぐさま団地の3階まで駆け上がり、ドアを開けると白バラ牛乳の巨大なビン(1リットルほどの大きなものでした)が玄関先に洗って置かれていました。これは良い!と、帽子から溢れ出た幼虫たちを投入していきました。丸々とした終令幼虫が20匹はいたかと思います。ちょうどビンの半分ぐらいまで緑色が積み重なりました。幼虫たちを入れ終わり大きな達成感を味わうと、下駄箱の上に幼虫ビンをドカッと置いて外に再出撃しました。

 

真夏の陽は長く、日暮れまでたっぷり遊びを満喫して、ご機嫌で我が家へと…幼虫のことなんてすっかり忘れていました。

 

すると扉の前で買い物袋を持ったままの母が、鬼のような形相で仁王立ちしているではありませんか。その顔は、あきらかに半端ないぐらい怒っています。頭には2本の角が見えたような…

 

母には本当によく怒られましたが、この事件は、その中でもトップ3に入るかと思います。

 

玄関を早く何とかしなさい!と…すごい剣幕で怒鳴りつけられ…

 

なぜ怒られているのか?わからないまま扉を開けると、天井、壁、床の上を巨大な幼虫たちが這いまわっていました。いやいや、今でもあの光景は脳裏に焼き付いています(苦笑)

 

まさかツルツルの牛乳ビンを、幼虫たちが這い登るなんて考えもしなかった。

 

急いで、すべての幼虫をビンに回収して、シナサワグルミに逃がしに行って帰ってくると、予想通り…“開かずの扉”になっておりました。

 

1時間以上、家に入れてもらえず、扉の前で座り込んでいると、お向かいの橋本君のお母さんに、「大丈夫?怒られたの?」なんて慰めていただいたり、仕事から帰ってきた4階に住む辻川君のお父さんに「ヒロシくん、また怒られたのか!わはは!」とか…。懐かしい思い出です。こういう記憶って忘れませんね。ほぼ50年近く前のお話です。これだけ憶えているわけですから、幼い頃の実体験はその人の人生に間違いなく影響を及ぼしていると考えられます。

 

子どもたちにとって心に残るリアルな体験の機会を少しでも増やしたい!そんな思いを持って、この仕事(環境教育)を頑張っていこうと思います。

 

もちろん、上記のような体験を子どもたちに望んでいるわけではございませんよ(笑)

Drawing 1 モンホソバスズメの幼虫/終齢幼虫は全長10センチほど!こんなに大きいのに、サワグルミの葉っぱにくっついていると、意外と気づきません。天敵の鳥などに食べられないよう、精一杯、カムフラージュしているのです。

Drawing 1
モンホソバスズメの幼虫/終齢幼虫は全長10センチほど!こんなに大きいのに、サワグルミの葉っぱにくっついていると、意外と気づきません。天敵の鳥などに食べられないよう、精一杯、カムフラージュしているのです。

 

Drawing 2 モンホソバスズメ/戦闘機のようなシャープな形状が格好良い。美しいフォルムですね。ガンダム世代の私は、見れば見るほどモビルアーマーのグラブロに見えてきます。

Drawing 2
モンホソバスズメ/戦闘機のようなシャープな形状が格好良い。美しいフォルムですね。ガンダム世代の私は、見れば見るほどモビルアーマーのグラブロに見えてきます。

 

庭のレモンにやってくるアゲハの幼虫を毎年、玄関で飼育していました。そのせいか、あれほど幼虫嫌いだった母が、ひかり号(0系新幹線)みたいでかわいいね!と言い始め…。 しかしアゲハの幼虫以外はすべてダメです。いろんな意味で慣れるって大事ですね(笑)

庭のレモンにやってくるアゲハの幼虫を毎年、玄関で飼育していました。そのせいか、あれほど幼虫嫌いだった母が、ひかり号(0系新幹線)みたいでかわいいね!と言い始め…。
しかしアゲハの幼虫以外はすべてダメです。いろんな意味で慣れるって大事ですね(笑)

(2022年5月掲載)

 

Project WILD公式HPには環境教育活動事例などが掲載されています: https://www.projectwild.jp/

キーワード: クマゼミ、シナサワグルミ、食草、スズメガ、モンホソバスズメ、子供の頃の自然体験
川原 洋(かわはら ひろし) <br/>Nickname / ひろ(Hiro)
川原 洋(かわはら ひろし)
Nickname / ひろ(Hiro)
一般財団法人 公園財団 公園管理運営研究所 開発研究部 環境教育推進室長
Project WILD 日本代表 コーディネーター

幼少から奈良で育ち、今年、55歳になります。
大阪府立大学農学部卒業後、同大学の修士課程(造園学修士)を修了。修士の時にオーストラリアのメルボルン工科大学に留学経験を持っています。
29歳のときに転職し(財)公園緑地管理財団に入社。得意の英語を生かして2008年から東京本部にてProject WILDの普及に力を注いでいます。アメリカで年1回開催されるProject WILD コーディネーター会議に、日本代表として毎年参加し、AFWA(全米野生生物協会)や全米各州の環境教育関係者としっかりとしたネットワークを持っていることが強みです。
2019年に全米各州の指導者から選出される名誉ある「最優秀コーディネーター賞」を受賞。アメリカ人以外の受賞は、Project WILDの長い歴史の中で初めて!日本人初の受賞となりました。
幼少から自然の中で遊ぶことが大好きで、家の中で遊んだ記憶がほとんどありません。私の小話はすべて実体験から生まれたものです。
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