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生きもの小話
爺ちゃんとの思い出 Memories with my Grandpa

私が小学校低学年だったかと…

毎夏、田舎に帰るのが楽しくて仕方ありませんでした。

いろんな自然体験ができるからです。その体験を演出してくれた1人が爺ちゃんでした。

 

その日も、爺ちゃんが、「ヒロ、大川にアユ採り行くか?」

 

「行くっ!」もちろん即答です。

 

「真っ暗でも泣かへんか?」

 

「絶対泣かへん!」

 

「そうか、約束やぞ!」

 

「うん!」

 

 

「大川」とは三重県勢和村丹生を流れる櫛田川のことです。大きい川だから、村の人たちは皆、そう呼んでいたのでしょう。

 

さぁ陽が落ちて辺りが暗くなってから、自転車で大川へ向かいます。私は後ろの荷台にまたがり、いつものようにジィちゃんのお腹にしがみつきます。結構なスピードで疾走、民家の間を走り抜け、集落を抜けると、養豚場から何とも言えない臭いが漂ってきます。いつものように息を止めます。止めてられるのも1分ほど…苦しくなって息を吸い込んだ時、風の香りが何とも言えない田園の香りに変わっていました。草の香りと言ったらよいでしょうか。そして、舗装道路からデコボコ道に突入…お尻が痛い…。ジィちゃんに強くしがみついてお尻を少し上げると痛み回避。競馬のジョッキーのようなイメージです。田んぼの畔に自転車を止めて辺りを見回すと、月明かりに美しく照らされた河畔林が目の前に広がっています。林の奥にある川は見えません。河畔林にぽっかりと空いた入口は、なんだかお化けが大きな口を開けているような。怖いから爺ちゃんに一生懸命ついていきます。入口から一気に下ります。川に近づくにつれて、地面がサラサラの砂地に変わり、川の音がどんどん大きくなっていきました。林を20メートルほど突っ切ると、砂地にごろごろとした丸い大きな石が散らばる川辺に到着。少し生臭い川の香りが漂っています。

 

さぁ、アユ採りです。川の瀬に仕掛けた網を丁寧に確認していきます。すると爺ちゃんが、「川の奥に行くから、ヒロは危ないから待っとれ」と、川辺で荷物と共に一人お留守番となりました。月明かりの下、爺ちゃんの姿が見えると安心です。厚い雲がさぁ~っと月を覆い隠すと、驚くほどの闇が周囲に広がります。体験した人は良くわかると思うのですが、本当に見えなくなります。月が隠れると漆黒の闇…自分の掌を目の前にかざしても、まったく見えません。

 

月が顔を出すと、なんと明るいこと!ホッと安心感が広がります。

 

待っている間に面白いことに気付きました。お月様は雲から出たり隠れたりを繰り返します。月明かりが辺りを照らすと野生動物たちは活動を始めるのです。川の音に混じって、カサカサと小さな音があちこちから聞こえてきます。ネズミくらいの小動物です。これが真っ暗になると音がパタリと聞こえなくなります。夜行性の動物も真っ暗になると警戒して動きを止めることを知りました。

 

虫たちが鳴いています。スイーッチョン♪スイーッチョン♪と近くの樹上から、これはウマオイだ。昆虫たちは月明かりに関係なく鳴き続けます。フクロウの鳴き声が遠くの方から聞こえてきます。

 

川面で動き回る爺ちゃんの黒い影とジャブジャブ音が聞こえていたときは、まだ安心できたのですが、アユ採りに夢中になった爺ちゃんはどんどん遠く離れていきました。しばらくすると爺ちゃんの姿はもちろんのこと、ジャブジャブ音もまったく聞こえなくなりました。月が隠れ、真っ暗闇の中で聞こえるのは川の流れる音とスイーッチョンだけ。

 

 

ザァー…スイーッチョン…。

 

ザァーザァー…スイーッチョン

 

 

漆黒の闇の中で、このスイーッチョンが耳に残ります。川の音も怖いのですが、スイーッチョンが不気味に聞こえてこれまた怖い!怖い気持ちがどんどん増幅していきました。

真夏でも川辺は涼しいのですが、それ以上にゾゾっと髪の毛が逆立つような悪寒が全身を包みます。

絶対泣かない!大好きな爺ちゃんとの約束です。泣いたらアカン…絶対に泣かへん。

 

爺ちゃんのジャブジャブ音が聞こえなくなってからどれぐらいの時間が経過しただろう?10分くらいは…いや5分も我慢できなかったかもしれません。

怖くて、私の口はへの字に曲がり、爺ちゃんとの約束はどこへやら…堰を切ったように全力で泣き叫びました。涙と鼻水も全開で、もうベチャベチャ…思いっきりシャクリあげました。恥ずかしい…。

自転車の荷台に乗った私に、爺ちゃんは何一つ小言を言いませんでした。約束を破ったことを猛省している私に追い打ちをかけることはしません。ここが爺ちゃんの格好良いところ!

ただ、あの時以来、爺ちゃんは二度と連れて行ってくれなくなりました…私にとって最初で最後の夜のアユ採りとなったのでした…苦笑

 

 

50年近く経過した今でも記憶にしっかりと刻まれています。幼い頃の五感を通したリアルな体験は宝ですね。

あのときの川の香りや流れる音を耳にすると、ときどき、爺ちゃんのことを思い出します。

 

 

 

スイーッチョン♪

 

 

スイーッチョン♪と伸ばすのはハヤシノウマオイ。ハタケノウマオイは、スイッチョ♪スイッチョ♪と伸びないようです。私の記憶ではスイーッチョンと伸ばす音が聞こえていたので、あのときのウマオイは間違いなくハヤシノウマオイ…だった…。

スイーッチョン♪と伸ばすのはハヤシノウマオイ。ハタケノウマオイは、スイッチョ♪スイッチョ♪と伸びないようです。
私の記憶ではスイーッチョンと伸ばす音が聞こえていたので、あのときのウマオイは間違いなくハヤシノウマオイ…だった…。

 

(2022年7月掲載)

 

Project WILD公式HPには環境教育活動事例などが掲載されています。https://www.projectwild.jp/

 

キーワード: アユ、ハヤシノウマオイ、ハタケノウマオイ、櫛田川
川原 洋(かわはら ひろし) <br/>Nickname / ひろ(Hiro)
川原 洋(かわはら ひろし)
Nickname / ひろ(Hiro)
一般財団法人 公園財団 公園管理運営研究所 開発研究部 環境教育推進室長
Project WILD 日本代表 コーディネーター

幼少から奈良で育ち、今年、55歳になります。
大阪府立大学農学部卒業後、同大学の修士課程(造園学修士)を修了。修士の時にオーストラリアのメルボルン工科大学に留学経験を持っています。
29歳のときに転職し(財)公園緑地管理財団に入社。得意の英語を生かして2008年から東京本部にてProject WILDの普及に力を注いでいます。アメリカで年1回開催されるProject WILD コーディネーター会議に、日本代表として毎年参加し、AFWA(全米野生生物協会)や全米各州の環境教育関係者としっかりとしたネットワークを持っていることが強みです。
2019年に全米各州の指導者から選出される名誉ある「最優秀コーディネーター賞」を受賞。アメリカ人以外の受賞は、Project WILDの長い歴史の中で初めて!日本人初の受賞となりました。
幼少から自然の中で遊ぶことが大好きで、家の中で遊んだ記憶がほとんどありません。私の小話はすべて実体験から生まれたものです。
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