「先生、でっかいカエルが!」とか、「ヤモリの卵が(つまんでみるとぷにゅぷにゅして気持ちいい)!」とか、「クモがGを(食ってます)!」とか、「見たことないカメが!」(なんと天然記念物のリュウキュウヤマガメでした)とか、「死んだカマキリのお尻から何かが‼」(言わずと知れたハリガネムシ)とか、…。
びっくりを共有したかったり、一緒に観察してほしかったり、早く駆除してほしかったり、動機はいろいろですが、生きものを見つけるとわたしに声をかけてくれる生徒たち。
皆さん、わたしが生きもの好きなことをよ~く知っていらっしゃる。
今でこそ、生徒たちや同僚の先生方からも生きもの好きで知られるわたしですが、子どものころからそうだったわけではありません。
小学生の頃のわたしは、昆虫採集に血道をあげる弟の趣味が全く理解できず、生きもの(特に昆虫!)の面白さや可愛さなど全くわからないタイプの女の子でした。
そんなわたしが生きもの好きになったきっかけ、それは子育てでした。
出産後のわたしをサポートしてくれた母からのアドバイスのひとつが、「お母さんの嫌いなものを子どもは嫌いになるから、子どもの前で嫌な顔をしちゃダメだよ。」ということ。
これは、食べ物の好き嫌いについてのアドバイスだったのですが、心の引き出しにしっかり収められて時が来るのを待っていました。
ところで、幼い子どもというものは、なんにでも興味を持ちます。家の中だろうが、外だろうが、あちこちを這いまわりながら、熱心に飽きることなく探索活動を続け、何かを発見しては、小さな指でつまんで矯めつ眇めつ眺め、触ったり口に入れたり、様々な方法で確かめようとします。そうして、小さな世界を少しずつ広げていくのです。
やがて、動かないものから動くものに、さらに興味の幅が広がっていきます。でも、それを触れるようになるまでにはちょっとしたハードルがあるみたい。
じっと見ているだけで触ろうとはしません。対象物がいきなり動くとビクッとして後ずさり。
こわいんだね。よしよし、危険を察知する能力があるってことね。それ、わたしも怖くて触れないもん。
などと、わが子の様子を見ていた時、ふとあの母の言葉が引き出しの中からひょいと飛び出してきたのでした。
「お母さんの嫌いなものを子どもは嫌いになるから、子どもの前で嫌な顔をしちゃダメだよ。」
わたしが嫌がると、この子も嫌がる。
わたしが怖がると、この子も怖がる。
びくびくしながら生きものを注視しているこの子が、生きもの好きになれるかどうかはわたしの心持ちにかかっちゃってるわけかぁ。
この子の世界を、嫌いなものより好きなものでいっぱいにしてあげたいなぁ。
今はまだ生きものを好きだとは思えないけど、子どもと一緒に生きものを見てみよう。
できれば触ってみたり、育ててみたりするのもいいかも。
そうして、「こわいな」「気持ち悪いな」「嫌だな」、というわたしの気持ちはちょっと横に置いて、子どもの瞳が示すものを見て、してみたいことをして、でも怖がっていたら、大人のわたしがちょっと勇気を出して面白がって見せて。そうして、単純に生きものと関わっているうちに、「好き」も「面白い」もほんものになっていたのでした。
3人の子どもたちが生きもの好きになったことは言うまでもありません。
レイチェル・カーソンは「生まれつきそなわっている子どもの『センス・オブ・ワンダー』をいつも新鮮にたもちつづけるためには、わたしたちが住んでいる世界のよろこび、感激、神秘などを子どもといっしょに再発見し、感動を分かち合ってくれる大人が、すくなくともひとり、そばにいる必要があります。」と、その著書『センス・オブ・ワンダー』の中で述べていますが、本当にその通りでありました。けれど、逆もまた真。子どもの「センス・オブ・ワンダー」に刺激を受けて大人のそれが磨かれるということもあるのです。というか、そっちの方が大きいかも。
ところで、今まで育てた生きものの中で一番は?
もちろん、「人間」の子どもです!
近くの丘、嘉津宇岳(かつうだけ:沖縄県名護市)の頂上にて。
往復3時間のいつもよりちょっと長いお散歩は、いつもの水筒+ちょっとのお菓子が必須。亜熱帯ジャングルを縫う道なき道も、頂上近くの全身を使って登る岩場も、いろいろなイモムシやカタツムリ(なぜか蝶より人気でした)を探したり、草花で遊んだりしながら行くとあんまり疲れないみたい。でも、夜はあっと言う間に寝てくれたから、やっぱり疲れてたのか( ´∀` )
(2023年9月掲載)
Project WILD公式HPには環境教育活動事例などが掲載されています:https://www.projectwild.jp/
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