年齢と共に人間は、イビキをかくようになります。これは恥ずかしいことではありません。
喉の筋肉が衰えてくるため、仕方がないのです。
ある夏の夜、実家に帰省した時のこと…
母の隣に布団を敷いて寝ていると、真夜中に猫の鳴き声が聞こえてくるような…。
だんだん目が覚めてくると、確かに猫が母の隣で鳴いているのです。それも何とも言えない、やさしい鳴き声なのです。「愛」を表現しているとしか思えない声で!
にゃ~にゃ~ にゃ~にゃ~
猫の言葉はわからにゃいけど、愛って伝わるなぁ~って心から思いました。これって求愛…??
さて、この猫ちゃんは誰に愛を告白しているのだろうか?
すると、ぐぅぁ~ぐぐぐ すぴぴぴぴ、ぐぅぁ~…言葉では表現しにくい音が聞こえてきます。
けっこう大きい。それは母の超重低音なイビキでした。
グゥア~ぐぅぁ~ スプスプすぷ
にゃ~にゃ~(愛)
がぁ~ガガッがぁ~ぐぐぐっ~
にゃ~にゃ~にゃ~(Full of LOVE)
なんと母の重低音イビキに、猫が精一杯のラブコールを送っているのです。
すごくカッコ良い貫禄のある猫だと思ったのだろうか?
とにかく母がイビキをかくたびに、にゃ~にゃ~♪と…これぞまさに「猫撫で声」…本当にやさしく甘い声なのです♪
最初は、部屋の中に猫がいると思ったのですが、窓際に寝ている母の隣(外)は、ウッドデッキ!そこに猫がやってきて鳴いていたのです。
そのやさしい猫の鳴き声と母の重低音イビキは、絶妙なハーモニーを奏で、あまりに面白く、布団の中でニヤニヤしてしまいました。なんだか幸せな気分になって、そのまま再び眠りに落ちたのですが、あのラブコールは、その後、どれぐらい続いたのだろうか(笑)
さて、生きものたちは、色んな形で求愛をします。その中でも声を発して求愛する生きものたちはたくさんいますね。
多くの方々は鳥を思い出すのではないでしょうか?特に英語でSong Birdと呼ばれる鳥たちは、その美しい鳴き声でメスを精一杯、誘惑します。
しかし、私の頭にポンと浮かんだ生きものは、ツクツクボウシとマツムシでした。
皆さん、ツクツクボウシってご存じですか?面白い名前です。日本を代表するセミの一種で、鳴き声がそのまま名前になったのでしょうね。彼らが鳴き始めると、夏もそろそろ終わりだなぁ~って、ちょっとノスタルジックな何とも言えない感じを私に運んでくれます。
さて、そのツクツクボウシ君も、羽化して間もない頃は、美しく鳴くことができません。すごく下手なのです。表現が難しいのですが、ズクズクシ~ ジャクジャクジャク~と軽快なリズムはどこへやら。おそらく、体(見た目)は成虫(セミ)になっても、まだ体の中(筋肉や内臓など)までしっかり機能していないんだと思います。どんな生きものでも練習が必要なのです。
そして、寿命が近くなって体に力がなくなってくると、澄み切ったクリアな音は消えて
ヅクヅクボウ~ジ ジャクジャクボ~ジ ジャジャジャジャ~と濁音がどんどん増えていきます。
ツクツクオ~シ♪ツクツクオ~シ♪ツクインヨ~シ、ツクインヨ~シ♪ジィ~~~
この軽快な澄み切った音色は、元気の証明なんですね。腹部の筋肉をフル稼働させて、音を共鳴させて、あの軽快な音色を生み出している。鳴いているツクツクボウシを観察すると、腹部を細かく震わせているのがよくわかります。この軽快な心震わすようなサウンドにメスは魅了されるのです。
イケメン(男前)の判断は、鳴き声なんですね。できるだけ健康で強い遺伝子を次世代に残すための物差し(基準)なのです。
秋の鳴く虫の代表格の一種であるマツムシもそうです。
チッチロリ♪チッチロリ♪ピッピロリ♪♪
美しいリズミカルな音色は、私は健康ですよ!って精一杯、メスたちにアピールしているのです。
これが老齢個体となると、音色はジッジロリ…。おまけに長く連続して鳴くことができなくなります。
軽快な美しい音色を生み出すためには体力を要することがよくわかります。
ジッジロ ジッジロ
力がなくなってきても、オスは決して鳴くことをやめません。
子孫を残す為に、彼らは必死なんですね。
皆さん、セミの鳴き声、鳴く虫たちの音色を聞いたら、女性(メス)に振り向いてもらうため、子孫を残すため、体力の続く限り戦っている彼らを応援してほしいです。
さて、母のこの渋いイビキに、猫ちゃんは何を感じたのだろうか?やはり貫禄?それとも老齢な知恵を感じたのでしょうか??
あの重低音のイビキから、母の深い優しさを感じ取ってくれたのかもしれません。
母さん、大好きよ~ にゃ~にゃ~💛
(2023年8月掲載)
Project WILD公式HPには環境教育活動事例などが掲載されています:https://www.projectwild.jp/
少年の日の想い出 Memories of my Childhood
カラスの子には、ご用心?!
母とペンギンとコウモリ MOM, Penguin and Bat
「豊かさが繋いでくれるもの」
あなたの隣にもきっといる、クモ界のアイドル「ハエトリグモ」
幼少期は好きで触っていたのに今は…
どこもかしこも野生生物「ロードキル編」
夏の闇の恐怖、その後、風通し良く
ハリガネ Rock’n’roll
出会いは当然に~振り向けばリュウキュウヤマガメがいる~
なんで苦手?
今年はクマのニュースが! Bear Coming Out
「生きもの」小話? わたしが生きものを愛するようになったわけ
母のイビキと猫 Mom’s Snoring and Cat
真夏のシャワー…香り付き
Midsummer Shower with some Fragrance
「秘境」の国の生きものたち ~海の生きもの編~
音のあるじは? Where does this sound come from?
ブナの森で実感した「オーディア」の必須要素
渡らない渡り鳥 ~変わりゆく渡り鳥のゆくえ~
海の仲間と船乗り
チョウチョと思ったら!I thought it’s a butterfly!
少年時代の生き物回顧録
恐るべし!驚異の身体能力を持つゴキブリ君
朋が教えてくれたこと
痛っ! It Hurts!
イトウの原野
爺ちゃんとの思い出 Memories with my Grandpa
ゆりかご代わり?こんなところに?!
牛乳ビンと幼虫 Milk Bottle and Caterpillar
スコーピオン Scorpion
カラスとおしゃべり!
生きもの小話 ホッキョクグマ編
忘れられない“お正月” Unforgettable "New Year"
「沖縄、トカゲモドキ奮闘記!」
I LOVEイモリ💗
サケの遡上を体験する
かわいい?厄介者? 『ニホンザル』人と野生動物との関係とは。
今年もバルタン星人 現わる! The Emergence of Alien Baltan
「Pura Vida」の国の生きものたち~魚編~
危険??生物 マムシ
Dangerous??Creature Japanese Copperhead
初めて触れた天然記念物の生きもの
Natural Treasure Creature that I touched for the first time