横浜の海辺在住のPWファシリテーター、迫田(さこ3)です。
兵庫県西宮市で育った私にとって海の色は深緑色。砂浜は茶色く、掘ると真っ黒なヘドロでした。「真っ白な雪」と同様に、「真っ青な海」は絵本の中だけの話と信じていた子供の頃の私に新たな情報がインプットされるにつれ、「真っ青な海」に出会いたく、船員という職業を選びました。
帆船の日本丸や海王丸など遠洋航海を行う練習船勤務に始まり、水上タクシー、旅客船、調査船など国内船を経て、2年前にはペルー沖の荒波で遠洋マグロ漁船一等航海士として真っ青な海を満喫することができました。
横浜港では「カモメ」の姿をよく目にしますが、夏に見られるほとんどは「ウミネコ」です(カモメは冬に渡って来る渡り鳥です)。船が遠洋に向かって出航すると船の後ろを白い鳥がついてきます。「アルバトロス(あほうどり)」です。翼を広げると2mを越える個体もありますが、遠くを飛んでいるか海上で休んでいるので近くで見る機会は少なく、デッキに乗船することがあると、胃の内容物をケロケロ(ひなに餌を与える行動)するので船酔いしたのかと心配したものです。
次によく出会うのが「トビウオ」です。筋肉質なサンマくらいの大きさですが簡単に数百mの距離を飛びます。波が高いと勢い余ってデッキに飛び込むこともありますが、夜の見回り時には発見されず、翌朝日干し姿で発見されることが良くあります。マグロ漁船で一緒だったインドネシア船員達は好んで日干しのトビウオを食べていました(美味しいですよ)。
珍しいところでは「ホタテクラゲ(By The Wind Sailor)」。帆を立てたような形状で美しい青色の小さなクラゲです。ネット検索してもほとんど出てこず、私の個人HPでの紹介文がヒットしました(笑)。日本でもよくみかける「カツオノエボシ(毒)」と少し似ています。貨物船や客船で大海原を航海するとき、海上に漂う小さなクラゲは目につかないのですが、私の乗船していた帆船は風が弱ければ遅い速度で、風が無くなれば洋上で浮かんで風が吹くのを待つため、より沢山の生物との出会いがありました。
練習船の遠洋航海中、極稀に「マンボウ」の姿を見つけました。海上に横たわりプカプカ浮かんでいるのですが、その巨体(たたみ2畳ほど)のせいで急には潜れない為、実習生の訓練の為に要救助者のモデルを務めて頂きました。船を洋上で停止させて救助艇(小さいボート)を降ろし、要救助者の救助に向かうのです。数名でオールを漕いで近づき確保します。確保できれば記念撮影をおこなった後にリリースし訓練終了となります。
温かく静かな海を航海していた時、ウミガメと出会いました。一匹ではなく何百匹の群れです。船の速力を落とし、始めは細かく避けていましたが海面全域に広がっているために避け切らず、心の中で「カメさんゴメン」と唱えながらコツンコツンと優しくラッセルしながら通り過ぎました。このウミガメはマグロ漁船で良く遭遇したのですが、マグロ用の釣り針を誤食してしまう為、水産庁を中心に混獲についてのガイドラインが厳しく定められています。釣り針を工夫、餌を工夫、仕掛けの深さを工夫、誤食してしまった際の対処方法など、リアルな現場を体験することで私が環境教育を扱う上で大変糧になっています。
日本の港湾(横浜港内)でもイルカやクジラが多数目撃されています。今では多くの方がご存じの話ですが、イルカもクジラも同じ鯨類で違いは大きさ(4~5mより大きいとクジラ)です。水族館等で小さい鯨類を見る機会はありますが、世界最大のシロナガスクジラ(25m以上)にはブラウン管やスクリーン上でしか通常会うことが出来ません。小学校の出前教室で「シロナガスクジラはどれくらいの大きさ?」という質問をすると、真面目な顔で東京タワーの選択肢を選ぶ生徒がいます。リアルな体験が出来ていないので、大人も知識で知っているだけで実感は伴っていません。当然のことながら、身近な存在として意識しにくく、海洋環境がクジラに与える影響・・・何て話には興味が薄くて当然かもしれません。
私はプロジェクトワイルド水辺編の「くじらのしっぽ」を使用し、長さ25m。幅8m、高さ8mのシロナガスクジラ実物大体験を通じ、同じ地球上で一つの心臓を使って生きている仲間と感じてもらうところから、水の循環、海洋プラスチック問題などへの興味を引き出しています。農業用マルチシート(土壌還元型)を使用するので小さく畳むとボストンバックに入り電車で出前講座会場まで移動することも出来ますよ。
私自身が知らなかった多くのことを船員体験から学ぶことが出来ました。私の体験の一部を多くの方に伝え、考えて頂く事が使命だと感じています。
(2023年2月掲載)
Project WILD公式HPには環境教育活動事例などが掲載されています。 https://www.projectwild.jp/
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