
第31回は、非営利型一般社団法人「みんなの公園愛護会」代表理事で、実態調査や取材を通して公園ボランティアを、地域を超えて情報でサポートをしている椛田里佳氏にご寄稿いただきました。
椛田氏は、大手上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクールの企画運営、家族中心生活を経て、現在は公園に関わる仕事や著書「推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり」に携わる等、幅広く活躍されています。

非営利型一般社団法人「みんなの公園愛護会」代表理事
椛田里佳氏
全国に11万ヶ所ある公園の多くは、暮らしの近くにある地域の小さな公園です。子どもたちが遊び、大人も憩う気持ち良い公園には、必ずと言っていいほど地域の人たちの手と愛情が入っています。お手入れの現場に遭遇する機会がなくても、花壇があったり、草や落ち葉がきれいになっていたら、公園ボランティア活動がある証。小さな公園は行政の力だけではなく、人々のボランティアで支えられているのです。
みんなの公園愛護会は、この人々の小さな営みのひとつひとつをリスペクトし応援する非営利型一般社団法人です。全国の公園ボランティア実態調査や、個別の活動の取材を通じて、公園ボランティア活動を、地域を超えて情報でサポートしています。

ナチュラリスティックガーデンづくりを楽しむ横浜市の師岡打越第三公園。
愛護会メンバーは0歳から80代まで。花壇の名前プレートも手作り。
公園ボランティアの先人たちが多くのことを教えてくれています。そのひとつは、単に利用するだけより、育てる側に一歩踏み込むと公園はもっと面白いということ。それも、みんなでやるから楽しく気持ちが良いこと。季節の移り変わりを楽しむガーデン、1年中緑でフカフカの芝生育て、落ち葉や草を堆肥にするエコな循環づくり、遊具やベンチのペンキ塗り、鳥の巣箱づくりや菜園づくりなど、公園育てを楽しんでいる人たちは多くいます。
また、生き物調査や自然あそびなど公園の魅力を深掘りする活動や、バザーやマルシェ・音楽会など地域の多世代が楽しめる手作りイベント、防災キャンプやかまどベンチ※クッキング、自然環境の再生など、地域とつながりまちに広がる活動も各地で行われています。地域みんなの庭である公園は、世代や文化・国籍を超えてまちを楽しむコミュニティ活動の場としても最適で、公園での活動はゆるやかな交流のきっかけとしても大いに機能しています。

都会の真ん中にある東京都の黎明橋公園でフカフカの芝生育てをするイクシバ!プロジェクトの皆さん
公園ボランティア活動は、いつでも、誰でも、気軽にチャレンジでき、何歳でも活躍できます。ゴミを拾うだけでも立派な活動。赤ちゃんもいるだけでみんなの癒しになりますし、作業だけではなく、おつかれさまのコーヒーや球根の提供など、関わり方も多様です。お互いにできることを無理なくやるのが大切だと多くの人が教えてくれています。
さらに、公園での活動は健康にも良いことが専門家の研究でも検証されています。外に出て、緑に触れ、体を動かす。仲間とのおしゃべりも大事な要素です。自分自身の健康のために続けているという人も多くいますが、健康維持やフレイル予防、孤独化対策としても有効な活動と言えるようです。
自分自身の楽しみや健康づくりが、同時に地域の公園の魅力や緑の質を高め、子どもたちが安全安心に遊べる環境を守り、みんなのためになる。なんて素晴らしい活動なのでしょう。何歳でも楽しめて、人生を豊かにする公園ボランティアが、趣味やレジャーのひとつになる日も近いかもしれません。
全国の自治体の多くには、公園ボランティア活動をサポートする制度があります。公園愛護会やアダプト制度など名称も様々で、清掃や除草に必要な道具類、ゴミ袋、花苗や球根、活動を周知するための看板や掲示板、おそろいの帽子やユニフォーム、熱中症対策グッズや飲み物、道具を保管する倉庫、ボランティア保険など、自治体によって支援の内容や方法も様々です。
みんなの公園愛護会では定期的に公園ボランティア実態調査を行い、全国の自治体の状況や、公園ボランティアの担い手視点でのやりがいや課題などのアンケートを実施し、調査レポートを公開しています。
2024年の全国自治体調査では、公園ボランティアの価値や効果について、約8割の自治体職員が「地域住民による公園利用の活性化」と「地域コミュニティの活性化」と回答。「街区公園の維持管理のコスト削減」を上回る結果となりました。

みんなの公園愛護会 公園ボランティア実態調査2024 全国自治体編より:
自治体職員が考える公園ボランティアの価値や効果について
人口減少や予算縮小の中、地域の公園を維持管理していくには、これまで以上に市民協働が必要です。
ライフスタイルが多様化する中、より多くの市民が気持ちよく公園育てに関われるよう、サポートの内容や方法を工夫する自治体も増えています。地域住民による公園利用や地域コミュニティの活性化をはじめ、公園の魅力を高めるパートナーとしての公園ボランティアの価値が見直されています。
もし近所の公園が荒れていたら、それはむしろ自分たちで面白いことができるチャンスかも!?
楽しみ方は無限大です。推しの公園育てを楽しむ人が各地でもっと増えていきますように。
もうすでに楽しんでいる方は、ぜひあなたの活動のことを教えてください。
※ かまどベンチとは、通常はベンチとして使用し、災害時に座板を外すことで炊き出し用かまどとして使用できるベンチです。
■関連ページ
みんなの公園愛護会 https://park-friends.org/
推しの公園を育てる!公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり
https://book.gakugei-pub.co.jp/gakugei-book/9784761528881/
(リンク先で目次やプロローグ・エピローグが読めます)
※文中に出てくる所属、肩書等は、掲載時のものです。(2024年10月掲載)

31「公園を育てながら楽しみつくす「推しの公園育て」」 非営利型一般社団法人「みんなの公園愛護会」代表理事 椛田里佳
30「公園から始める自然観察と地域との連携」 日本大学 生物資源科学部 森林学科 教授 杉浦克明
29「すべての人々へ自然体験を」 自然体験紹介サイト「WILD MIND GO! GO!」 主宰 谷治良高
28「都市公園が持つ環境保全への役割」 札幌市豊平川さけ科学館 学芸員(農学博士)札幌ワイルドサーモンプロジェクト共同代表 有賀望
27「フォトグラファー視点から見る公園」 国営昭和記念公園秋の夜散歩 ライティングアドバイザー フォトグラファー 田島遼
26「高齢社会日本から発信する新しい公園文化」 鮎川福祉デザイン事務所 代表 埼玉県内 地域包括支援センター 介護支援専門員 (ケアマネジャー) 鮎川雄一
25「植物園の魅力を未来につなげる」 (公社)日本植物園協会 会長 水戸市植物公園 園長 西川綾子
24「アートで公園内を活性化!」 群馬県立女子大学文学部美学美術史学科准教授 アートフェスタ実行委員会代表 奥西麻由子
23「手触りランキング」 樹木医・「街の木らぼ」代表 岩谷美苗
22「和菓子にみる植物のデザイン」 虎屋文庫 河上可央理
21「日本庭園と文様」 装幀家 熊谷博人
20「インクルーシブな公園づくり」 倉敷芸術科学大学 芸術学部 教授、みーんなの公園プロジェクト代表
19「世田谷美術館―公園の中の美術館」 世田谷美術館学芸部 普及担当マネージャー 東谷千恵子
18「ニュータウンの森のなかまたち」 ごもくやさん 中田一真
17「地域を育む公園文化~子育てと公園緑地~」 東京都建設局 東部公園緑地事務所 工事課長 竹内智子
16「公園標識の多言語整備について」 江戸川大学国立公園研究所 客員教授 親泊素子
15「環境教育:遊びから始まる本当の学び」 すぎなみPW+ 関隆嗣
14「青空のもとで子どもたちに本の魅力をアピール」上野の森親子ブックフェスタ運営委員会(子どもの読書推進会議、日本児童図書出版協会、一般財団法人出版文化産業振興財団)
13「関係性を構築する場として「冒険遊び場づくり」という実践」 NPO法人日本冒険遊び場づくり協会 代表 関戸博樹
12「植物園・水族館と学ぶ地域自然の恵み」 福山大学生命工学部海洋生物科学科 教授 高田浩二
11「海外の公園と文化、そして都市」 株式会社西田正徳ランドスケープ・デザイン・アトリエ 代表 西田正徳
10「都市公園の新たな役割〜生物多様性の創出〜」 千葉大学大学院園芸学研究科 准教授 野村昌史
09「日本の伝統園芸文化」 東京都市大学環境学部 客員教授 加藤真司
08「リガーデンで庭の魅力を再発見」 (一社)日本造園組合連合会 理事・事務局長 井上花子
07「七ツ洞公園再生の仕掛け」 筑波大学芸術系 教授 鈴木雅和
06「ランドスケープ遺産の意義」 千葉大学名誉教授 赤坂信
05「公園文化を育てるのはお上に対する反骨精神?」 森本千尋
04「公園のスピリチュアル」 東京農業大学名誉教授・元学長 進士五十八
03「遺跡は保存、利活用、地域に還元してこそ意味をもつ~公園でそれを実現させたい~」 学校法人旭学園 理事長 高島忠平
02「公園市民力と雑木林」 一般社団法人日本樹木医会 会長 椎名豊勝
01「これからの公園と文化」 一般財団法人公園財団 理事長 蓑茂壽太郎