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第16回 公園標識の多言語整備について

第16回は、江戸川大学名誉教授・現江戸川大学国立公園研究所客員教授、親泊素子氏に公園の標識の海外と日本の状況について語っていただきました。

江戸川大学国立公園研究所客員教授 親泊素子氏

江戸川大学国立公園研究所客員教授
        親泊素子氏

 

 

はじめに

近年、訪日外国人観光客の増加により、観光庁、環境省、地方自治体のみならず、鉄道、宿泊施設、地元の観光協会などが多言語対応の標識整備に力を入れ始めています。そこで今回は日本の多言語標識整備について考えてみましょう。

1.公園標識とは

標識やサインは英語でsignageと言い、人々に情報を示すためにつくられた視覚的な記号で道や建物内外に設置して情報提供を行うことに利用されます。

公園標識には公園の導入部分に設置される入口標識から、案内、解説、注意標識まで様々なタイプが存在しますが、最近はスマートフォンの利用が進み、外国人だけでなく多くの日本人ビジターもスマホを活用しながら公園情報を得ているようです。

2.公園標識の書き方心得


一般に標識の基本は寸時に見てすぐにわかるものが好ましいといえましょう。なぜなら、公園を訪れる人は最初の数秒でその標識に関心を持つか持たないかを判断してしまいます。

 

マーケティングの世界で3-30-3ルールというのがあります。最初の3秒で顧客を立ち止まらせ、次の30秒で関心を持たせ、残りの3分で詳しく説明する。すなわち、商品についての説明をそのテンポで表示すると購買力が高まるということです。

 

これは公園の解説文にも応用できる発想です。見出しはインパクトのある言葉で、さらにそれに続く小見出しと説明の文章は簡潔、明瞭、正確さをもって作成することが大切です。

そのためには俳句のようにそのエッセンスを短文で書くように心掛けましょう。また、できるだけ誰もが理解できるようなわかりやすい言葉を使うことが大切です。(写真1)



3.多言語対応の公園標識

標識の日本語解説文を多言語に翻訳する時に心がけることは、まず言語の直訳をすることは適切ではないということです。日本語を正確に訳すことと内容を忠実に訳すこととは異なります。なぜならそれを読む人の国の文化の違いで受け取るニュアンスのずれがおこるからです。このニュアンスのずれが文化のずれであって、そのニュアンスをふまえた翻訳が大切です。

したがって、多言語整備をする時には、日本語解説文のエッセンスを翻訳することが必要で、そのためには意訳の気持ちで取り組みましょう。

4. 日本の多言語標識の問題

日本の公園を歩いていると多言語標識で気になるのが誤字、脱字、文法の間違いです。(写真2 )

また、日本語をうまく訳すことができない苦肉の策として英語と日本語をミックスしたものや(写真3)、中には日本語とかなりちがう不完全燃焼の多言語標識もみかけます。(写真4,5)また、注意、警告標識の場合は “No Smoking” や “Don’t Touch!”といった「するな」「はいるな」「ふれるな」等の否定的表現が多く見かけられますが、もう少しビジターの心を和ませる注意・警告標識を工夫していきたいものですね。

 

 

 

写真2 誤字

(写真2) 誤字

 

 

 

写真3 英語と日本語のミックス

(写真3) 英語と日本語のミックス

 

 

 

 

 

 

写真4 不完全な訳 

(写真4) 不完全な訳

 

写真5 不完全な説明文

(写真5) 不完全な説明文

 

 

写真6 “No”を使わない禁煙標識 

(写真6) “No”を使わない禁煙標識

写真7 桜の保存を訴える表現

(写真7) 桜の保存を訴える表現

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5. ユーモアのセンス


ユーモアは思いやりを含んだコミュニケーションの手段であり、できれば標識文言にもユーモアのセンスを取り入れることができれば、公園利用がもっと楽しいものになるのではないでしょうか。

 

外国ではよく類似の韻を用いたリズム感のある言葉や、二重の意味を含んだ表現方法を見かけることがあります。例えば、次のような標識を発音してみて下さい。飲酒運転に注意を促す ”After Whisky, Driving Risky”, “Booze it and Lose it!”や、スピード運転に対する ”No Safety, Know Pain”, “Think Safety, Act Safely”, “ Speed Thrills But Kills” 等はいくつかの韻を含んだ事例です。

 

また、ナッツを食べるリスや(写真8)や、たばこを吸うパフィン(ツノメドリ)(写真9)は駐車禁止や禁煙の注意・警告サインですが、これはまさにユーモアを交えた注意標識で思わず笑ってしまうでしょう?ダブルミーニングのもう一つの意味はお分かりでしょうか?

6.過剰な整備は公園文化を楽しむ機会を奪う。


標識看板の整備はできるだけ最小限度に

アメリカの国立公園の施設整備の考え方の一つにRustic (田舎の、質素な) スタイルという概念があります。

それはあるがままに壊さない、作らない、つくるなら自然と調和のとれた素材、デザインを用いて整備をするという方法です。

公園の施設整備は必要最小限度にして、できるだけ自然、風景、文化、歴史といった公園の素材を損なわない形でという考え方です。

安全性にかかわる情報についてはしっかりと標識等で示すことが大切ですが、その他の情報については、標識よりも公園職員やインタープリターによる情報提供が大切です。

したがって、本来は標識の多言語整備を行うより、公園職員の語学訓練の方を最初にやるべきことなのです。

 

また、公園の職員の語学力が不足していても、片言の英語やジェスチャーで外国人ビジターを助けてあげることができれば、彼らとのコミュニケーションの機会ができ、意外な文化交流を楽しめるかもしれません。「過ぎたるは猶及ばざるが如し」で、公園内のたくさんの標識に誘導されるよりも、時には公園の中で迷ったり、さまよったりするハプニングもあって良いのではないでしょうか。ビジターは不安の中で「trial and error」を繰り返すうちに冒険心が湧いてきたり、遊び心が生まれたりと、最後にはハラハラドキドキの思い出深い公園体験を楽しむかもしれません。

 

標識の多言語整備も時には不親切や不十分も悪くないかもしれません。(写真10, 11)

7. おわりに


日本はヨーロッパの国々と比較して音でも文字でも圧倒的に情報過多のような気がします。そしてそれが標識整備にも表れています。

その結果、時にはそこの景観の美しさを損ねる結果を招く場合も起こっています。(写真 12)

この情報過多の傾向はアメリカの広告戦略の影響からか、日本人の親切心が強すぎるからなのか、その両方なのか、いずれが原因であっても標識整備の考え方の基本は「主役」ではなく「裏方」です。

 

ハワイの歴史公園では誘導標識にヤシの実を使っていました。イースター島では石の素材を使っていました。(写真 13)これらはそこの自然や風景に寄り添った方法で標識整備を行っている事例といえましょう。

写真13 自然に溶け込んだ素材

(写真13) 自然に溶け込んだ素材

郷土の色や素材などを上手に取り入れることで、そこの環境に溶け込んだ標識の整備も可能です。(写真14)

 

標識の本来の役割はビジターに必要な情報を提供することですが、公園内の標識の数や、色、素材、大きさ、場所などを考慮しながら、また、時代の変化にも対応しながら、確かな役割を果たす黒子の存在であってほしいものです。(写真15)

アメリカのユニセックスのトイレ

(写真15) アメリカのユニセックスのトイレ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※文中に出てくる所属、肩書、情報などは、掲載時のものです。(2019年11月掲載)

 

 

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過去記事一覧
18 ニュータウンの森のなかまたち
17 地域を育む公園文化~子育てと公園緑地~
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15 環境教育:遊びから始まる本当の学び
14 青空のもとで子どもたちに本の魅力をアピール
13 関係性を構築する場として「冒険遊び場づくり」という実践
12 植物園・水族館と学ぶ地域自然の恵み
11 海外の公園と文化、そして都市
10 都市公園の新たな役割〜生物多様性の創出〜
09 日本の伝統園芸文化
08 リガーデンで庭の魅力を再発見
07 七ツ洞公園再生の仕掛け
06 ランドスケープ遺産の意義
05 公園文化を育てるのはお上に対する反骨精神?
04 公園のスピリチュアル
03 遺跡は保存、利活用、地域に還元してこそ意味をもつ  ~公園でそれを実現させたい~
02 公園市民力と雑木林
01 これからの公園と文化


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