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01 これからの公園と文化 02 公園市民力と雑木林 03 遺跡は保存、利活用、地域に還元してこそ意味をもつ  ~公園でそれを実現させたい~ 04 公園のスピリチュアル 05 公園文化を育てるのはお上に対する反骨精神? 06 ランドスケープ遺産の意義 07 七ツ洞公園再生の仕掛け 08 リガーデンで庭の魅力を再発見 09 日本の伝統園芸文化 10 都市公園の新たな役割〜生物多様性の創出〜 11 海外の公園と文化、そして都市 12 植物園・水族館と学ぶ地域自然の恵み 13 関係性を構築する場として「冒険遊び場づくり」という実践 14 青空のもとで子どもたちに本の魅力をアピール 15 環境教育:遊びから始まる本当の学び 16 公園標識の多言語整備について 17 地域を育む公園文化~子育てと公園緑地~ 18 ニュータウンの森のなかまたち 19 世田谷美術館―公園の中の美術館 20 インクルーシブな公園づくり 21 日本庭園と文様 22 和菓子にみる植物のデザイン 23 手触りランキング 24 アートで公園内を活性化! 25 植物園の魅力を未来につなげる 26 高齢社会日本から発信する新しい公園文化 27 フォトグラファー視点から見る公園 28 都市公園が持つ環境保全への役割 第29回 すべての人々へ自然体験を
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公園市民力と雑木林

「公園文化を語る」は、様々な分野のエキスパートの方々から、公園文化について自由に語っていただくコーナーです。
第2回目 は、専門的な知識と技術を活用して地域の緑の普及啓発にも活躍している、一般社団法人 日本樹木医会 椎名豊勝会長に語っていただきました。

一般社団法人 日本樹木医会
椎名豊勝 会長

国木田独歩は著書「武蔵野」で(なら)の雑木林に近代の新しい美しさを発見した。それから百年以上たった今、再び雑木林が脚光あび、社会的に存在することが求められている。

雑木林・里山林は今


人里近くに存在する里山林は地域により独自の景観を形成する。そのうち雑木林はナラ類等が優占する林で、関東地方では武蔵野の特徴的郷土景観として、広く知られている。

しかし現在雑木林は危機に瀕している。もちろん燃料革命により薪炭が忘れさられ、雑木林自体の生産的意義は終了した。そして経済的価値を失った林は手を入れられない状況にある。

その結果、成長しすぎた雑木は風倒木となり、その後に外来植物が侵入し、放置された林床はアズマネザサ等で植生は単純化され、挙句の果てに粗大ゴミ置き場と化した雑木林が少なくない。



祖先からの贈物、雑木林の生物多様性


武蔵野の雑木林は人為的行為によって、植生遷移を止めたものである。すなわち萌芽更新・下草刈り・クズハキ・クズ伐り・萱刈り等の作業を祖先が営々と繰返すことにより、ナラ・クヌギ林として維持しつづけてきた。

雑木林は多く恵みを与えてくれる。往時、薪・炭等は燃料、灰は肥料、落葉は堆肥、緑葉は緑肥、落葉・刈下草を家畜・サツマイモの敷料・飼料・苗床材料、キノコ栽培のホダ木利用、萌芽更新後に発生したススキは屋根材、長期的に育成されたアカマツは梁材、春の山菜、秋のキノコ、季節的強風の防風・砂防林と生活のあらゆる局面で利用されてきた。

落葉樹林の季節的変化がもたらすきめ細かく多様な環境、落葉堆積による土壌豊穣化など生物多様性のバックボーンは、それを維持してきた先人達の雑木林育成努力によるところが大きいのである。

多種多様な生物生息環境を可能とすることのできる雑木林の環境特性が、今日的価値を得て大きくクローズアップされ、甦りつつある。すなわち、生態系の多様性、種の多様性、遺伝的多様性に関し、雑木林の潜在能力は高く評価され大きな期待がかけられている。




公園雑木林が担うべき新たな価値


近年多くの公園で雑木林の造成、保護が頻繁に行われている。昭和43年開園した皇居東御苑は昭和天皇ご発意により昭和60年に庭園一部を二の丸雑木林とした。国営昭和記念公園では、新たに6haの雑木林(こもれびの丘)を造成した。東京都は丘陵地公園として、数多くの丘陵部で雑木林を保護している。一方、平野部の雑木林は、それぞれの自治体により公園・緑地に、さらに民有地雑木林は特別緑地保全地区等で保全されている。そして多くの場合、公園雑木林管理にボランティア組織が積極的にかかわっている。

今や、雑木林は単に緑量として林を保護・保全するにとどまらない、むしろ雑木林の有り様が問われているのである。質として林床を含めた生態系としての健全度、植物・動物・菌類など種の多種・多様度、さらには種内の多様性(遺伝子の多様性)と生物多様性評価が公園雑木林の価値を決定する時代が到来するのも遠いことではない。

公園市民力結集と雑木林社会的役割の確立


しかし、ここで問題なのは、従来経済採算の上に成立っていた雑木林の手入れを、今後誰がどのような形で担うのか、その行為を社会全体が、より高い評価与える構造を明確にする必要がある。

担うのは、ボランティアなどの公園市民力であろう。都市公園・緑地ならではの潜在的コミュニティー機能こそが公園市民力結集の源泉である。

さらに雑木林管理の公的評価システムが必要であろう。また、マスコミへの露出拡大等広く世論の支持を得る方策を進めるべきである。参加市民が社会的に明確な目標値をめざして努力することでき、評価が得られるという環境整備を行うことで、社会参画意識の向上、いきがい発見につながる。そして動植物の生物多様化が目に見える形で自己認識ができ、成果を各個人が獲得できる、この公園市民活動は大きな可能性を秘めている。

※文中に出てくる所属、肩書等は、ご寄稿いただいた時点のものです。2014年12月掲載



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過去記事一覧
第29回 すべての人々へ自然体験を
28 都市公園が持つ環境保全への役割
27 フォトグラファー視点から見る公園
26 高齢社会日本から発信する新しい公園文化
25 植物園の魅力を未来につなげる
24 アートで公園内を活性化!
23 手触りランキング
22 和菓子にみる植物のデザイン
21 日本庭園と文様
20 インクルーシブな公園づくり
19 世田谷美術館―公園の中の美術館
18 ニュータウンの森のなかまたち
17 地域を育む公園文化~子育てと公園緑地~
16 公園標識の多言語整備について
15 環境教育:遊びから始まる本当の学び
14 青空のもとで子どもたちに本の魅力をアピール
13 関係性を構築する場として「冒険遊び場づくり」という実践
12 植物園・水族館と学ぶ地域自然の恵み
11 海外の公園と文化、そして都市
10 都市公園の新たな役割〜生物多様性の創出〜
09 日本の伝統園芸文化
08 リガーデンで庭の魅力を再発見
07 七ツ洞公園再生の仕掛け
06 ランドスケープ遺産の意義
05 公園文化を育てるのはお上に対する反骨精神?
04 公園のスピリチュアル
03 遺跡は保存、利活用、地域に還元してこそ意味をもつ  ~公園でそれを実現させたい~
02 公園市民力と雑木林
01 これからの公園と文化


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