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地域を育む公園文化~子育てと公園緑地~

第17回は、東京都建設局 東部公園緑地事務所 工事課長の竹内智子氏に公園の地域を育む力・文化をつくる力についてご寄稿いただきました。

東京都建設局 東部公園緑地事務所 工事課長 竹内智子氏

東京都建設局 東部公園緑地事務所
工事課長 竹内智子氏

「ゆりかごから墓場まで。児童公園から霊園まで」。都市における公園は、人間の一生にずっと寄り添う空間です。人々のライフスタイルの変化に応じて公園も変わり、公園が変わることで人々のライフスタイルも変わる。公園には地域を育む力・文化をつくる力があります。地方自治体の造園職員として、また一人の公園ユーザーとして、地域の子どもを育む公園の事例を紹介したいと思います。

街区公園×空き家×子育て支援施設


武蔵野市に2001年から2015年まで開設していた子育て支援施設「こどもテンミリオンハウスあおば」。

街区公園に隣接する昭和初期の古い家屋を一時預かりの保育の場にしたものです。

私の祖父母の家で、祖母が亡くなった時に、相続対策と敷地の細分化による緑の減少防止、子育てに困る共働き家庭のサポート事業として始まりました。娘たちが共働きに苦労する姿をみた私の母が提案し、市に事業化していただいたもので、私の長男が1歳の時に開所しました(写真1)。

 

武蔵野市が、共助の取組を行う市民団体やNPOに対し、年間1000万円(テンミリオン)を上限とする補助を行う福祉サービスの一環です。武蔵野市が貸借・改修し、運営は「NPOひまわりママ」。利用は登録制で、宿泊・送迎を含む時間単位で子供を預かる一時預かり事業、子育ての悩みや各種相談に応じる事業などを行っていました。

 

敷地は市立「青葉公園」と隣接していて、直接公園に出られるため、園庭のように遊びに行けました(図1)。建物が耐震基準を満たせなくなり13年間で閉館となりましたが、一時預かり事業延べ約3,000世帯、自由来所型事業延べ約35,000世帯と多くの利用がありました。

 

全国でも空き家や少子高齢化が問題となっており、空き家と公園を活用し子育て支援の課題解決を図るこのスキームは他の都市でも参考になりそうです。

歩車道分離の緑のネットワーク=子育てに優しい街


私は長男が5歳の時から港北ニュータウンで子育てをしてきました。

 

ここは、計画的に「グリーンマトリックス」という公園緑地のネットワークがつくられた街で、歩車道が分離され、小学校や中学校にほとんど車道と接しないで緑道を通って行くことができます(図2)。

息子の友達は3人きょうだいやそれ以上が多いのですが、子どもの手を繋がずに、安心して歩けるので3人以上子育てしようという気持ちになるのではと思います。

港北ニュータウンはとても平均年齢が低い若い街です。歩ける緑のネットワークは、少子高齢化に資する効果的なまちづくりです。

 

東京も中小河川がめぐっていて、既成市街地であっても、河川沿いの管理用通路や歩道を活用し、大規模公園を繋ぎ、人に優しい歩車道分離のネットワークができるのではないかと思います。

国土交通省も「ウォーカブルなまちづくり」の方向に舵を切っています。「歩行者が安全に歩けるまち」は今後ますます重要になります。公園単体だけではなく街づくりの中での利用を考えると既成市街地であっても、既存のインフラを活用した緑の歩行者ネットワークがつくれる街は意外とあるのではないでしょうか。

保育園⊂公園(公園の中に保育園が含まれる)


2017年から、国家戦略特区により都市公園内に保育園の設置ができるようになりました。その後、都市公園法が改正になり、現在はどこの都市公園でも保育園や通所型の福祉施設が設置可能になっています。

 

都立公園でも、汐入公園、祖師谷公園、代々木公園、蘆花恒春園、東綾瀬公園、木場公園、和田堀公園に既に保育園やこども園が設置されています。場所の選定方法・経緯や、既存の公園ゾーニングとの関係、保育園の空間デザインや運営方針などにより、公園と保育園のかかわり方は様々です。公園の中にある、という特徴を活かせていない保育園がある一方で、代々木公園の「まちのこども園」のように建物内をつかった展示や、公園の自然を活用したプログラム、大学と連携した教育研究など地域と公園の広がりの場として期待できるものもあります。公園内の保育園は、公園や街に開かれた空間デザインと、整備後どのように公園と繋がっていくか、管理運営面のお互いを活かす取組が重要だと考えます。

遊具設置に対する反対の声

私は最近3年間、工事課長として何箇所かの遊具の整備・改修に携わってきました。遊具の設置は地域に賛成されるケースだけではありません。以前、住宅からある程度離れている公園内の草地に、滑り台を一基設置する際、「踏圧で木の根がいたむ。草地面積が減って自然破壊だ」と3名の高齢者の方が反対の陳情を出したことがあります。毎日のように来るメールの回答をして、木の保全対策を提案してもご理解いただけませんでした。工事が止まっていると、近所の保育園の保護者の方々が遊具の早期設置を求める陳情を出し、最終的に議会で審査して無事工事を進めることができました。

 

苦情者と接していると、本当は誰かと話したい、関わりたい、または自分の思い通りに公園を使いたい、など別な理由が見え隠れすることがあります。また、子育て世代は忙しく、賛成者はわざわざ賛成の意を示さないので、少数の反対者の声が大きく取り上げられてしまうことがあります。工事の広報のあり方について考えさせられました。

インクルーシブな子どもの遊び場づくり


 

2020年3月、砧公園に、整備に携わった「障がいのある子もない子も遊べる、インクルーシブな遊具のある広場」がオープンしました。都立公園で第一号の「インクルーシブ公園」プロジェクトです。駐車場からの段差や不陸をなくし、近くのトイレは障がい者用の大型ベッドやオストメイトをつける改修をし、車椅子でも登れる遊具や音の出る遊具、体幹が弱くても乗れるブランコなどを整備しました(写真5,6)。

障がい者向けの遊具広場、というと地元に強力な反対者が出て、他の自治体では設置が中止になった事例もあるそうです。今回は、少数の反対者による工事中断の苦い経験を活かし、遊具を使うことを楽しみにしている利用者向けにもっとPRをしていきたいと考えました。広報板を作成、利用者向け講座(残念ながらコロナウィルス感染拡大防止対応で中止)を公園で活動する子どもの外遊び専門のNPOに委託しました。工事の広報も使う人がワクワクするように、設計意図を理解していただけるように、工夫しています。これはとても評判がよく、都議会でも取り上げられました。さらに完成後の管理もスムーズに行えるよう、管理者向けの講習会も行いました。

図3 砧公園では完成した遊具のイラストを工事中に掲示

図3 砧公園では完成した遊具のイラストを工事中に掲示

少子高齢化社会の公園づくりに向けて

公園と子どもの遊び場の整備に関わる中で、アイディアを出し合っていた時、「公園と高齢者介護も同じように考えられないか」という意見が親を介護中の職員から出ました。自分の親を見ていても、高齢者も仕事をせずに介護を受けるだけでなく、緑に囲まれた中で地域の子どもたちと交流しつつ、社会のプレイヤーとしてずっと誰かの役に立つような場があるといいと思います。次は、地域のみんな、多様な世代に寄り添う公園づくりにも取り組んでいきたいと考えています。

 

 

※文中に出てくる所属、肩書等は、掲載時のものです。(2020年4月掲載)

 

 

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過去記事一覧
第17回 地域を育む公園文化~子育てと公園緑地~
16.公園標識の多言語整備について
15 環境教育:遊びから始まる本当の学び
14 青空のもとで子どもたちに本の魅力をアピール
13 関係性を構築する場として「冒険遊び場づくり」という実践
12 植物園・水族館と学ぶ地域自然の恵み
11 海外の公園と文化、そして都市
10 都市公園の新たな役割〜生物多様性の創出〜
09 日本の伝統園芸文化
08 リガーデンで庭の魅力を再発見
07 七ツ洞公園再生の仕掛け
06 ランドスケープ遺産の意義
05 公園文化を育てるのはお上に対する反骨精神?
04 公園のスピリチュアル
03 遺跡は保存、利活用、地域に還元してこそ意味をもつ  ~公園でそれを実現させたい~
02 公園市民力と雑木林
01 これからの公園と文化


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