公園文化ロゴ 公園・夢プラン大賞 facebook
公園文化ロゴ
facebook 公園・夢プラン大賞
語るパンくず
公園文化を語る 公園の達人 公園管理運営「チャレンジ!」しました 公園とSDGs 生きもの小話 みどり花コラム アートコラム 花みどり検定 公園の本棚 世界の公園 たまて箱 公園”Q&A /
過去記事一覧
01「これからの公園と文化」 一般財団法人公園財団 理事長 蓑茂壽太郎 02「公園市民力と雑木林」 一般社団法人日本樹木医会 会長 椎名豊勝  03「遺跡は保存、利活用、地域に還元してこそ意味をもつ~公園でそれを実現させたい~」 学校法人旭学園 理事長 高島忠平 04「公園のスピリチュアル」 東京農業大学名誉教授・元学長 進士五十八 05「公園文化を育てるのはお上に対する反骨精神?」 森本千尋 06「ランドスケープ遺産の意義」  千葉大学名誉教授 赤坂信 07「七ツ洞公園再生の仕掛け」 筑波大学芸術系 教授 鈴木雅和 08「リガーデンで庭の魅力を再発見」 (一社)日本造園組合連合会 理事・事務局長 井上花子 09「日本の伝統園芸文化」 東京都市大学環境学部 客員教授 加藤真司 10「都市公園の新たな役割〜生物多様性の創出〜」 千葉大学大学院園芸学研究科 准教授 野村昌史 11「海外の公園と文化、そして都市」 株式会社西田正徳ランドスケープ・デザイン・アトリエ 代表 西田正徳 12「植物園・水族館と学ぶ地域自然の恵み」 福山大学生命工学部海洋生物科学科 教授 高田浩二 13「関係性を構築する場として「冒険遊び場づくり」という実践」 NPO法人日本冒険遊び場づくり協会 代表 関戸博樹 14「青空のもとで子どもたちに本の魅力をアピール」上野の森親子ブックフェスタ運営委員会(子どもの読書推進会議、日本児童図書出版協会、一般財団法人出版文化産業振興財団) 15「環境教育:遊びから始まる本当の学び」 すぎなみPW+ 関隆嗣 16「公園標識の多言語整備について」 江戸川大学国立公園研究所 客員教授 親泊素子 17「地域を育む公園文化~子育てと公園緑地~」 東京都建設局 東部公園緑地事務所 工事課長 竹内智子 18「ニュータウンの森のなかまたち」 ごもくやさん 中田一真 19「世田谷美術館―公園の中の美術館」 世田谷美術館学芸部 普及担当マネージャー 東谷千恵子 20「インクルーシブな公園づくり」 倉敷芸術科学大学 芸術学部 教授、みーんなの公園プロジェクト代表 21「日本庭園と文様」 装幀家 熊谷博人 22「和菓子にみる植物のデザイン」 虎屋文庫 河上可央理 23「手触りランキング」 樹木医・「街の木らぼ」代表 岩谷美苗 24「アートで公園内を活性化!」 群馬県立女子大学文学部美学美術史学科准教授 アートフェスタ実行委員会代表 奥西麻由子 25「植物園の魅力を未来につなげる」 (公社)日本植物園協会 会長 水戸市植物公園 園長 西川綾子 26「高齢社会日本から発信する新しい公園文化」 鮎川福祉デザイン事務所 代表 埼玉県内 地域包括支援センター 介護支援専門員 (ケアマネジャー) 鮎川雄一 27「フォトグラファー視点から見る公園」 国営昭和記念公園秋の夜散歩 ライティングアドバイザー フォトグラファー 田島遼 28「都市公園が持つ環境保全への役割」 札幌市豊平川さけ科学館 学芸員(農学博士)札幌ワイルドサーモンプロジェクト共同代表 有賀望 29「すべての人々へ自然体験を」 自然体験紹介サイト「WILD MIND GO! GO!」 主宰 谷治良高 30「公園から始める自然観察と地域との連携」 日本大学 生物資源科学部 森林学科 教授 杉浦克明 31「公園を育てながら楽しみつくす「推しの公園育て」」 非営利型一般社団法人「みんなの公園愛護会」代表理事 椛田里佳 32 植物を見るなら、公園に行こう!植物観察家/植物生態写真家 鈴木純 33 「二酸化炭素と緑化と公園の話」九州工業大学客員教授 高橋克茂
公園文化を語る ロゴ

第33回 二酸化炭素と緑化と公園の話

第33回は九州工業大学客員教授の高橋克茂さんに御寄稿いただきました。
高橋氏は、千葉大学大学院で造園学を学び、旧建設省に入省し、国営常陸海浜公園、国営飛鳥歴史公園、淀川河川公園、国営吉野ケ里歴史公園などで、公園行政に従事しました。また、九州工業大学の客員教授としてチーム・マネジメントについて講義を行っています。

九州工業大学客員教授<br/>高橋克茂氏

九州工業大学客員教授
高橋克茂氏

地球温暖化のことを知ろう!


太陽からの日射は、地球の大気を素通りして地面を暖め、その地面から放射される熱を温室効果ガスが吸収し、大気を暖めています。産業革命以降、人間の活動由来の二酸化炭素、メタンなどの温室効果ガスが大量に排出されて、その大気中濃度が高まった結果、地球の気温が上昇しています。これが地球温暖化です。温室効果ガスの中でも二酸化炭素(CO₂)はもっとも温暖化への影響が大きいガスと言われています。

 

 

 

温室効果ガスの働き

温室効果ガスの働き



地球の大気中にはどれくらいの二酸化炭素があるの?

ところで、大気全体の中の二酸化炭素の量(CO2換算)を大まかな数字で観察してみます。

 

地球大気の総重量:      5,000兆トン(5,000,000,000,000,000トン)

二酸化炭素の重量:      2兆1,000億トン(2,100,000,000,000トン)

二酸化炭素の割合:0.042%(420ppm)

1年間の世界の二酸化炭素排出量:400億トン(40,000,000,000トン)

1年間の日本の二酸化炭素排出量:  11億トン(1,100,000,000トン)

 

ちなみに、産業革命前の二酸化炭素の割合は0.028%(280ppm)でしたので、現在、その濃度は1.5倍になっています。つまり産業革命以降大気中の二酸化炭素の重量は、1兆4,000億トン(CO2換算)から、7,000億トン(CO2換算)増えて、2兆1,000億トン(CO2換算)になりました。

 

ところで、地球の大気全体の組成をみます。窒素78%、酸素21%で、この2つの気体だけで99%を占めています。残りの1%の組成はアルゴン0.9%、二酸化炭素0.042%などです。

 

地球大気全体の組成

地球温暖化を止めるには?

ここで、地球温暖化対策としての、大気中からの二酸化炭素の除去方法について考えます。

 

A.二酸化炭素除去技術

Chat GPT で調べたところ、大気中から二酸化炭素を除去する技術はすでにあるそうです。しかし、除去できるのは、莫大なエネルギーを消費しても、年間数万トンレベルとのことです。よって、現在の技術では、大気中から直接二酸化炭素を除去することは現実的ではありません。

 

B.緑化による二酸化炭素除去(固定)

地球上の植物の総重量は炭素換算で4,500億トンです。これを二酸化炭素換算してみます。炭素の分子量が12、二酸化炭素の分子量が44ですから、4,500億トンに、44/12を乗じます。その結果は、1兆6,500億トン(CO2換算)です。

 

ちょっと荒っぽい計算になりますが、産業革命以降に大気中で増えた二酸化炭素7,000億トン(CO2換算)を、緑化によって除去する、つまり植物が光合成により体内に取り込み固定するためには、地球上の植物の総重量1兆6,500億トン(CO2換算)を、7,000億トン(CO2換算:42%)増やして、2兆3,500億トン(CO2換算)にする必要があります。

 

アマゾンの熱帯雨林

アマゾンの熱帯雨林

地球上の緑地の面積を1.42倍に増やすことは可能なの?

サハラ砂漠の衛星写真

 

非常に単純な言い方をします。地球上の緑地の面積を1.42倍に増やすと、緑化によって二酸化炭素7,000億トン(CO2換算)を大気中から除去(固定)し、大気中の二酸化炭素の割合を産業革命以前の割合に戻すことができます。個人的には、この方法しか、有効な手段はないのではないかと感じています。しかし、数字で表すのは簡単ですが、どう実現するかについては定まった方法はありません。あくまで想像ですが、規模感としては、サハラ砂漠をすべて森林に変えるくらいの緑化が必要だと思います。いや、それ以上の規模かもしれません。

 

2007年、アフリカ55の国・地域が加盟する世界最大級の地域機関、アフリカ連合(AU)によって承認された『グレート・グリーン・ウォール』という国際的イニシアティブがあります。これはサハラ砂漠の南縁部に位置するサヘル地域の緑化を進める壮大なプロジェクトで、アフリカ大陸を東西に横断するかたちで展開しています。その規模はなんと、全長およそ8,000kmにも及びます。

出典:【Steenz Breaking News】:https://steenz.jp/31969/

 

世界最大の緑の壁をアフリカに

世界最大の緑の壁をアフリカに

公園の役割は一人ひとりの緑化への理解と行動につながる普及啓発!

ここで公園の役割について考えます。

 

千葉大学の柳井重人先生らの研究によると、概算の数字で、都市公園1ha当たりの二酸化炭素吸収量は約1トン/年です。日本の都市公園面積は約13万ha(2023年度末)ですから、荒っぽく計算すると、公園による二酸化炭素吸収量は合計で13万トン/年(CO2換算)です。この数字は日本の二酸化炭素排出量(約11億トン/年:CO2換算)の約8,500分の1です。

 

それよりも、公園の役割として大きいのは「一人ひとりの緑化への理解と行動につながる普及啓発」効果だと思います。

 

例えば、国営常陸海浜公園の「みはらしの丘」に立った時、あなたが立っている場所は、アメリカ軍の旧射爆撃場跡地に建設残土などを盛土した丘です。そこではコキアやネモフィラがあなたを楽しませてくれます。遠くには樹林ゾーンがあり、日々、二酸化炭素を吸収してくれています。

 

こんなことを考えながら公園を楽しみ、学ぶと、地球温暖化対策としての緑化・そして公園の大切さに思いを馳せることになるかも知れません。

 

国営常陸海浜公園のみはらしの丘の「コキア」と背景の「樹林ゾーン」

国営常陸海浜公園のみはらしの丘の「コキア」と背景の「樹林ゾーン」

 

日比谷公園の成熟した森とネモフィラ

日比谷公園の成熟した森とネモフィラ

 

※文中に出てくる所属、肩書等は、掲載時のものです。(2025年7月更新)

区切り線
過去記事一覧(敬称略)
33 「二酸化炭素と緑化と公園の話」九州工業大学客員教授 高橋克茂
32 植物を見るなら、公園に行こう!植物観察家/植物生態写真家 鈴木純
31「公園を育てながら楽しみつくす「推しの公園育て」」 非営利型一般社団法人「みんなの公園愛護会」代表理事 椛田里佳
30「公園から始める自然観察と地域との連携」 日本大学 生物資源科学部 森林学科 教授 杉浦克明
29「すべての人々へ自然体験を」 自然体験紹介サイト「WILD MIND GO! GO!」 主宰 谷治良高
28「都市公園が持つ環境保全への役割」 札幌市豊平川さけ科学館 学芸員(農学博士)札幌ワイルドサーモンプロジェクト共同代表 有賀望
27「フォトグラファー視点から見る公園」 国営昭和記念公園秋の夜散歩 ライティングアドバイザー フォトグラファー 田島遼
26「高齢社会日本から発信する新しい公園文化」 鮎川福祉デザイン事務所 代表 埼玉県内 地域包括支援センター 介護支援専門員 (ケアマネジャー) 鮎川雄一
25「植物園の魅力を未来につなげる」 (公社)日本植物園協会 会長 水戸市植物公園 園長 西川綾子
24「アートで公園内を活性化!」 群馬県立女子大学文学部美学美術史学科准教授 アートフェスタ実行委員会代表 奥西麻由子
23「手触りランキング」 樹木医・「街の木らぼ」代表 岩谷美苗
22「和菓子にみる植物のデザイン」 虎屋文庫 河上可央理
21「日本庭園と文様」 装幀家 熊谷博人
20「インクルーシブな公園づくり」 倉敷芸術科学大学 芸術学部 教授、みーんなの公園プロジェクト代表
19「世田谷美術館―公園の中の美術館」 世田谷美術館学芸部 普及担当マネージャー 東谷千恵子
18「ニュータウンの森のなかまたち」 ごもくやさん 中田一真
17「地域を育む公園文化~子育てと公園緑地~」 東京都建設局 東部公園緑地事務所 工事課長 竹内智子
16「公園標識の多言語整備について」 江戸川大学国立公園研究所 客員教授 親泊素子
15「環境教育:遊びから始まる本当の学び」 すぎなみPW+ 関隆嗣
14「青空のもとで子どもたちに本の魅力をアピール」上野の森親子ブックフェスタ運営委員会(子どもの読書推進会議、日本児童図書出版協会、一般財団法人出版文化産業振興財団)
13「関係性を構築する場として「冒険遊び場づくり」という実践」 NPO法人日本冒険遊び場づくり協会 代表 関戸博樹
12「植物園・水族館と学ぶ地域自然の恵み」 福山大学生命工学部海洋生物科学科 教授 高田浩二
11「海外の公園と文化、そして都市」 株式会社西田正徳ランドスケープ・デザイン・アトリエ 代表 西田正徳
10「都市公園の新たな役割〜生物多様性の創出〜」 千葉大学大学院園芸学研究科 准教授 野村昌史
09「日本の伝統園芸文化」 東京都市大学環境学部 客員教授 加藤真司
08「リガーデンで庭の魅力を再発見」 (一社)日本造園組合連合会 理事・事務局長 井上花子
07「七ツ洞公園再生の仕掛け」 筑波大学芸術系 教授 鈴木雅和
06「ランドスケープ遺産の意義」  千葉大学名誉教授 赤坂信
05「公園文化を育てるのはお上に対する反骨精神?」 森本千尋
04「公園のスピリチュアル」 東京農業大学名誉教授・元学長 進士五十八
03「遺跡は保存、利活用、地域に還元してこそ意味をもつ~公園でそれを実現させたい~」 学校法人旭学園 理事長 高島忠平
02「公園市民力と雑木林」 一般社団法人日本樹木医会 会長 椎名豊勝 
01「これからの公園と文化」 一般財団法人公園財団 理事長 蓑茂壽太郎


TOPに戻る