
最後は、前節に関連して公園と街との関係を考えて見たい。
先のニューヨーク、リバーサイド・パークよりもハドソン川をより下流に下ったところに、現在ハドソン・リバー・パークの建設が進行中である。パークとは言っても、そのほとんどは土地ではなく既存の桟橋がその機能を失い使われずに放置されていたものを、公園化したものである。
ニューヨークは18,19世紀には貿易港として栄え、それを支えた桟橋が数百と存在していた。それらの桟橋のうち、ハドソン川沿いの100近くを公園化する計画は、全体面積で220haにおよび、セントラル・パークの半分以上の規模の緑地をここ10年足らずで作り出すものである。
この公園は単なるレクリエーションの緑地の増加だけに留まらず、ハドソン川に面する前述したウェストサイドの街の変革にも貢献しつつある。
前述のお花畑と同様に、公園を作る事により、住民が公園に出かける、公園に人が居ると、その人々が公園の監視役として犯罪が少なくなる、するとさらに公園に人が増える。そうすると、公園だけではなく、近隣の街自体も安全になり、人が街に出て来る。すると街も安全になり、商業が再生し、オフィスやホテルまで新たに作られて街が再生、活性化するという現象が起きる。
この現象はすでにこの公園よりさらに南にあるハイ・ラインで実証されている。使われなくなった都市インフラの高架線を緑道に変え、ほんのわずか2haの公園が街を活性化し、近隣に店舗が復活し、アパートの賃料は倍に跳ね上がり、オフィスやホテルまで作られ、その経済効果は数千億円に上るという試算が発表されている。
この動きはランドスケープ・アーバニズムとも呼ばれる。日本でのランドスケープ・アーバニズムを問われた時に、ニューヨークを例に取ろうとしても、日本の都市構造やインフラの違いから同じ様にはいかない。日本には日本流のランド
スケープ・アーバニズムが必要であり、それを考えるには、日本的な公園の楽しみ方、使い方、そして人の参画の仕方、すなわち日本流の公園の文化があって、それが日本の都市文化と融合した時に初めて成り立つものであると考える。
※文中に出てくる所属、肩書等は、取材時(2018年3月)のものです。2018年3月掲載

31「公園を育てながら楽しみつくす「推しの公園育て」」 非営利型一般社団法人「みんなの公園愛護会」代表理事 椛田里佳
30「公園から始める自然観察と地域との連携」 日本大学 生物資源科学部 森林学科 教授 杉浦克明
29「すべての人々へ自然体験を」 自然体験紹介サイト「WILD MIND GO! GO!」 主宰 谷治良高
28「都市公園が持つ環境保全への役割」 札幌市豊平川さけ科学館 学芸員(農学博士)札幌ワイルドサーモンプロジェクト共同代表 有賀望
27「フォトグラファー視点から見る公園」 国営昭和記念公園秋の夜散歩 ライティングアドバイザー フォトグラファー 田島遼
26「高齢社会日本から発信する新しい公園文化」 鮎川福祉デザイン事務所 代表 埼玉県内 地域包括支援センター 介護支援専門員 (ケアマネジャー) 鮎川雄一
25「植物園の魅力を未来につなげる」 (公社)日本植物園協会 会長 水戸市植物公園 園長 西川綾子
24「アートで公園内を活性化!」 群馬県立女子大学文学部美学美術史学科准教授 アートフェスタ実行委員会代表 奥西麻由子
23「手触りランキング」 樹木医・「街の木らぼ」代表 岩谷美苗
22「和菓子にみる植物のデザイン」 虎屋文庫 河上可央理
21「日本庭園と文様」 装幀家 熊谷博人
20「インクルーシブな公園づくり」 倉敷芸術科学大学 芸術学部 教授、みーんなの公園プロジェクト代表
19「世田谷美術館―公園の中の美術館」 世田谷美術館学芸部 普及担当マネージャー 東谷千恵子
18「ニュータウンの森のなかまたち」 ごもくやさん 中田一真
17「地域を育む公園文化~子育てと公園緑地~」 東京都建設局 東部公園緑地事務所 工事課長 竹内智子
16「公園標識の多言語整備について」 江戸川大学国立公園研究所 客員教授 親泊素子
15「環境教育:遊びから始まる本当の学び」 すぎなみPW+ 関隆嗣
14「青空のもとで子どもたちに本の魅力をアピール」上野の森親子ブックフェスタ運営委員会(子どもの読書推進会議、日本児童図書出版協会、一般財団法人出版文化産業振興財団)
13「関係性を構築する場として「冒険遊び場づくり」という実践」 NPO法人日本冒険遊び場づくり協会 代表 関戸博樹
12「植物園・水族館と学ぶ地域自然の恵み」 福山大学生命工学部海洋生物科学科 教授 高田浩二
11「海外の公園と文化、そして都市」 株式会社西田正徳ランドスケープ・デザイン・アトリエ 代表 西田正徳
10「都市公園の新たな役割〜生物多様性の創出〜」 千葉大学大学院園芸学研究科 准教授 野村昌史
09「日本の伝統園芸文化」 東京都市大学環境学部 客員教授 加藤真司
08「リガーデンで庭の魅力を再発見」 (一社)日本造園組合連合会 理事・事務局長 井上花子
07「七ツ洞公園再生の仕掛け」 筑波大学芸術系 教授 鈴木雅和
06「ランドスケープ遺産の意義」 千葉大学名誉教授 赤坂信
05「公園文化を育てるのはお上に対する反骨精神?」 森本千尋
04「公園のスピリチュアル」 東京農業大学名誉教授・元学長 進士五十八
03「遺跡は保存、利活用、地域に還元してこそ意味をもつ~公園でそれを実現させたい~」 学校法人旭学園 理事長 高島忠平
02「公園市民力と雑木林」 一般社団法人日本樹木医会 会長 椎名豊勝
01「これからの公園と文化」 一般財団法人公園財団 理事長 蓑茂壽太郎