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2.花壇が野菜畑


次は「花より団子」、と言ってもここではEdible Landscapeに関する公園の文化について触れたい。

 
数年前にロンドンに行った時、市内の公園を巡って気になったのが花壇の植え込みだった。通常であれば花卉類が植え込まれるところが、そこに植えてあったのは全て野菜。ローズマリー等ハーブの他に、パセリーやレタス、アーティチョークなどもある。ロンドン市内のチェルシー地区にある写真のホランド・パークには、京都から送られた日本庭園もあるし、テニスコートなどのスポーツ施設もあるロンドンを代表する都市公園の一つでもある。野菜畑の近くにはレストラン、案内図を見るとダッチ・ガーデンとあり、さらにその園路と植栽地のレイアウトを見ると、どう見ても元々は花壇であったと思われるスペースが野菜で埋め尽くされているのである。

このような光景がここだけに限った事と思ったら、ロンドンの他の公園でも、スペインのプラド美術館の隣の王立植物園でも、そしてロンドンで毎年開催される人気のチェルシー・フラワー・ショーでも、庭園展示の主会場がこのエディブルをテーマとした庭園として見ることができる。

なぜ花壇が野菜畑になったか?理由は、複数考えられる。もちろん子供達に野菜が育つところを見せる食育の場の提供も一つである。数年前のフラワー・ショーでは別の理由がその説明書きに記されていた。「もしロンドンが何かの理由で交通が途絶えたら、市内の食料は3日でなくなる。だから近くで食べ物を作り出すことが必要だ。それにはこの様なやり方がある」という意図での庭園展示であった。

都市での「食べることができる」ランドスケープの理由は、こんなところでも見つけることができる。イギリスの植物を主題としたテーマパーク「エデン・プロジェクト」には小さな畑の展示がある。わずか10m×10m程度の野菜畑は、英国の標準的4人家族が年間に消費する野菜の生産可能な面積と記されている。さらに、その標準家族が年間に排出する二酸化炭素量は、家庭の電気などの設備消費で4.2トン、車などの交通手段での消費が4.4トンであるのに対して、食物の生産、運搬、流通、包装などに8トンが排出される。だから身近なところで野菜など食べられる緑を作ることが大切で、それが二酸化炭素排出量削減に僅かでも貢献するという説明である。(数値は「エデン・プロジェクトのパンフレットより」)

ロンドンの都市公園の野菜畑の野菜が最終的にどのように食されるかは不明であるが、少なくともそれを見た人に自分の家で、プランターでも良いから野菜を育てる気にさせるというのがこれらの公園の野菜畑の意図であると考える。植物を育てる事で癒され、野菜を食して健康になる。さらにそれが少しでも地球環境に貢献、貢献せずとも環境を考えるキッカケになるのがこの野菜畑である。

日本の公園では花壇を野菜畑にするには、まだまだハードルが高い。そのハードルを下げるには、前述した都市で野菜を育てる理由づけが必要で、それがあれば都市で野菜、都市で農業を拡げる可能性が公園に大きく広がると考える。

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過去記事一覧
第29回 すべての人々へ自然体験を
28 都市公園が持つ環境保全への役割
27 フォトグラファー視点から見る公園
26 高齢社会日本から発信する新しい公園文化
25 植物園の魅力を未来につなげる
24 アートで公園内を活性化!
23 手触りランキング
22 和菓子にみる植物のデザイン
21 日本庭園と文様
20 インクルーシブな公園づくり
19 世田谷美術館―公園の中の美術館
18 ニュータウンの森のなかまたち
17 地域を育む公園文化~子育てと公園緑地~
16 公園標識の多言語整備について
15 環境教育:遊びから始まる本当の学び
14 青空のもとで子どもたちに本の魅力をアピール
13 関係性を構築する場として「冒険遊び場づくり」という実践
12 植物園・水族館と学ぶ地域自然の恵み
11 海外の公園と文化、そして都市
10 都市公園の新たな役割〜生物多様性の創出〜
09 日本の伝統園芸文化
08 リガーデンで庭の魅力を再発見
07 七ツ洞公園再生の仕掛け
06 ランドスケープ遺産の意義
05 公園文化を育てるのはお上に対する反骨精神?
04 公園のスピリチュアル
03 遺跡は保存、利活用、地域に還元してこそ意味をもつ  ~公園でそれを実現させたい~
02 公園市民力と雑木林
01 これからの公園と文化


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