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1. お花見文化の違い


公園文化、分解して公園と文化ということで最初に思い出すのは、お花見に見る文化の違いだ。

昔、アメリカ東海岸数都市への視察の際に、ワシントンD.C.ポトマック河畔にお花見の機会を得た。

花見と言っても、満開の桜の中の園路を多くの人が歩くだけで、桜の花の下、芝生の上に座る人は皆無だったと記憶している。静かに歩くだけで桜を鑑賞するだけの風景に日本の花見との違いを感じた。

この花見の風景の差異は、まずは州によっても違うが、屋外での飲酒が原則禁止というのも原因の一つであろう。しかし、アメリカの文化としてピクニック専用のバスケットにサンドイッチなどを詰め込んで、自然の中で芝生の上でのランチはあるはずである。それなのに、桜の下での飲み食いが無いのは、この場所が首都の、しかも国立公園として指定されている事に起因するとも考える。

お酒に関しては、禁酒法があったアメリカと、神様にお酒を奉納する日本の宗教的な考え方の違いもあるが、日本の花見のどんちゃん騒ぎにはアメリカ建国以前からの古い歴史がある。秀吉の吉野や醍醐の花見、将軍吉宗により造られた王子飛鳥山など、花見には飲み食いが付き物で江戸時代から今に至っている。

王子飛鳥山といえば、明治初期に太政官布達により公園として最初に指定された公園である。指定に際しては江戸時期の遊興地を選び、それを西洋の公園として指定したのであるが、花見という日本流の公園の使い方は日本の文化の一つとして、すでにその時点で完成していた。

今では海外から日本の花見の時期に観光に来る来訪者も増えている。良い風景を見ながら食べたり飲んだりしたいというのは誰もが抱く願望である。東京日比谷公園には戦前からのレストランがあり、その願望は叶うが、他の都市公園では今までは、公園法の建蔽率の制限もあり、売店でのアンパン程度で我慢せざるを得なかった。最近の都市公園法の改正により、公園内に民間のカフェなども増えて、公園内での飲食の風景が以前に増して豊かになりつつある。

 
花見は、日本人の屋外空間の楽しみ方の原点でもあり、日本の文化の一つでもある。それがゆえに、今では海外から日本の花見の時期の観光客も増えている。

 
もちろん管理する側からの規制も必要ではあるが、花見を公園文化の一つとして育てていく気持ちとさらなる工夫が求められていると考える。

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過去記事一覧
31「公園を育てながら楽しみつくす「推しの公園育て」」 非営利型一般社団法人「みんなの公園愛護会」代表理事 椛田里佳
30「公園から始める自然観察と地域との連携」 日本大学 生物資源科学部 森林学科 教授 杉浦克明
29「すべての人々へ自然体験を」 自然体験紹介サイト「WILD MIND GO! GO!」 主宰 谷治良高
28「都市公園が持つ環境保全への役割」 札幌市豊平川さけ科学館 学芸員(農学博士)札幌ワイルドサーモンプロジェクト共同代表 有賀望
27「フォトグラファー視点から見る公園」 国営昭和記念公園秋の夜散歩 ライティングアドバイザー フォトグラファー 田島遼
26「高齢社会日本から発信する新しい公園文化」 鮎川福祉デザイン事務所 代表 埼玉県内 地域包括支援センター 介護支援専門員 (ケアマネジャー) 鮎川雄一
25「植物園の魅力を未来につなげる」 (公社)日本植物園協会 会長 水戸市植物公園 園長 西川綾子
24「アートで公園内を活性化!」 群馬県立女子大学文学部美学美術史学科准教授 アートフェスタ実行委員会代表 奥西麻由子
23「手触りランキング」 樹木医・「街の木らぼ」代表 岩谷美苗
22「和菓子にみる植物のデザイン」 虎屋文庫 河上可央理
21「日本庭園と文様」 装幀家 熊谷博人
20「インクルーシブな公園づくり」 倉敷芸術科学大学 芸術学部 教授、みーんなの公園プロジェクト代表
19「世田谷美術館―公園の中の美術館」 世田谷美術館学芸部 普及担当マネージャー 東谷千恵子
18「ニュータウンの森のなかまたち」 ごもくやさん 中田一真
17「地域を育む公園文化~子育てと公園緑地~」 東京都建設局 東部公園緑地事務所 工事課長 竹内智子
16「公園標識の多言語整備について」 江戸川大学国立公園研究所 客員教授 親泊素子
15「環境教育:遊びから始まる本当の学び」 すぎなみPW+ 関隆嗣
14「青空のもとで子どもたちに本の魅力をアピール」上野の森親子ブックフェスタ運営委員会(子どもの読書推進会議、日本児童図書出版協会、一般財団法人出版文化産業振興財団)
13「関係性を構築する場として「冒険遊び場づくり」という実践」 NPO法人日本冒険遊び場づくり協会 代表 関戸博樹
12「植物園・水族館と学ぶ地域自然の恵み」 福山大学生命工学部海洋生物科学科 教授 高田浩二
11「海外の公園と文化、そして都市」 株式会社西田正徳ランドスケープ・デザイン・アトリエ 代表 西田正徳
10「都市公園の新たな役割〜生物多様性の創出〜」 千葉大学大学院園芸学研究科 准教授 野村昌史
09「日本の伝統園芸文化」 東京都市大学環境学部 客員教授 加藤真司
08「リガーデンで庭の魅力を再発見」 (一社)日本造園組合連合会 理事・事務局長 井上花子
07「七ツ洞公園再生の仕掛け」 筑波大学芸術系 教授 鈴木雅和
06「ランドスケープ遺産の意義」  千葉大学名誉教授 赤坂信
05「公園文化を育てるのはお上に対する反骨精神?」 森本千尋
04「公園のスピリチュアル」 東京農業大学名誉教授・元学長 進士五十八
03「遺跡は保存、利活用、地域に還元してこそ意味をもつ~公園でそれを実現させたい~」 学校法人旭学園 理事長 高島忠平
02「公園市民力と雑木林」 一般社団法人日本樹木医会 会長 椎名豊勝 
01「これからの公園と文化」 一般財団法人公園財団 理事長 蓑茂壽太郎


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