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3.遊びは大人になるための準備


公園を使った子どもの遊びにも、これらの影響は及んでおり、私が子どもであった30年ほど前と比べると、今は子どもが親と一緒に公園などの遊び場に出かける機会は増えていると感じます。本来、子どもの遊びというものは、子ども自身の主体性を手掛かりにやりたいことにチャレンジしていく行為であるため大人を必要としません。また、大人がカテゴライズできる遊びは「かくれんぼ」「縄跳び」「ブランコ」など名前があったり、遊具に由来していたりするものがほとんどであることに対して、子どもから見た遊びというものは想像を超える広がりを見せるものであります。例えば、公園の植え込みに吹き溜まりとなっている落ち葉の中をガサゴソと歩いてみたり、園内灯の柱に片手をかけてグルグルと回ってみたり、目の前にある環境から遊びを見つけることに関しては専門家と呼んでも良いでしょう。

 

子どもはなぜそこまで夢中になって遊ぶことができるのでしょうか。そこには人間の種としての成長戦略があるのです。人間の子どもは生物として未熟に生まれ、20年近くかけながら成熟します。その期間の大半は子ども時代であり、育ちに必要な様々な体験を楽しいと感じ、遊びとして行うようになっているのです。「子ども」という大人になるための重要な準備期間に、しっかりと子どもらしく未熟に、子どもとして振る舞い、常に好奇心を持ち、失敗を恐れない無邪気さを保つことが必要です。その過程で、道具や素材、環境、他者、そして自身と対話を繰り返してこそ「大人」という状態になれるのです。

 

大人になるための準備としての遊びの延長線上には時に砂場でのおもちゃの取り合いの様に、人間関係を学ぶ機会も含まれています。しかし、おもちゃの取り合いの様なネガティブな事象はもとより、子どもらしく無邪気でいることすら担保されない様な育ちの環境が現代の子どもたちにはあります。親も周囲の大人も善意をもって、目の前の子どもが将来困らない様に先回りした大人としての手助けや助言を多く浴びせてしまっています。優しく思いやりを持って欲しいという願いが「貸してあげなさい」「我慢しなさい」という声かけになってしまっています。また、失敗ない人生を歩み、常に最適で最短な解を与えるべく「危ないからやめなさい」「こうすると失敗しないよ」と、未知との遭遇を日々楽しむ子どもたちの意欲を削ぐような介入をしてしまっているのです。



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過去記事一覧
31「公園を育てながら楽しみつくす「推しの公園育て」」 非営利型一般社団法人「みんなの公園愛護会」代表理事 椛田里佳
30「公園から始める自然観察と地域との連携」 日本大学 生物資源科学部 森林学科 教授 杉浦克明
29「すべての人々へ自然体験を」 自然体験紹介サイト「WILD MIND GO! GO!」 主宰 谷治良高
28「都市公園が持つ環境保全への役割」 札幌市豊平川さけ科学館 学芸員(農学博士)札幌ワイルドサーモンプロジェクト共同代表 有賀望
27「フォトグラファー視点から見る公園」 国営昭和記念公園秋の夜散歩 ライティングアドバイザー フォトグラファー 田島遼
26「高齢社会日本から発信する新しい公園文化」 鮎川福祉デザイン事務所 代表 埼玉県内 地域包括支援センター 介護支援専門員 (ケアマネジャー) 鮎川雄一
25「植物園の魅力を未来につなげる」 (公社)日本植物園協会 会長 水戸市植物公園 園長 西川綾子
24「アートで公園内を活性化!」 群馬県立女子大学文学部美学美術史学科准教授 アートフェスタ実行委員会代表 奥西麻由子
23「手触りランキング」 樹木医・「街の木らぼ」代表 岩谷美苗
22「和菓子にみる植物のデザイン」 虎屋文庫 河上可央理
21「日本庭園と文様」 装幀家 熊谷博人
20「インクルーシブな公園づくり」 倉敷芸術科学大学 芸術学部 教授、みーんなの公園プロジェクト代表
19「世田谷美術館―公園の中の美術館」 世田谷美術館学芸部 普及担当マネージャー 東谷千恵子
18「ニュータウンの森のなかまたち」 ごもくやさん 中田一真
17「地域を育む公園文化~子育てと公園緑地~」 東京都建設局 東部公園緑地事務所 工事課長 竹内智子
16「公園標識の多言語整備について」 江戸川大学国立公園研究所 客員教授 親泊素子
15「環境教育:遊びから始まる本当の学び」 すぎなみPW+ 関隆嗣
14「青空のもとで子どもたちに本の魅力をアピール」上野の森親子ブックフェスタ運営委員会(子どもの読書推進会議、日本児童図書出版協会、一般財団法人出版文化産業振興財団)
13「関係性を構築する場として「冒険遊び場づくり」という実践」 NPO法人日本冒険遊び場づくり協会 代表 関戸博樹
12「植物園・水族館と学ぶ地域自然の恵み」 福山大学生命工学部海洋生物科学科 教授 高田浩二
11「海外の公園と文化、そして都市」 株式会社西田正徳ランドスケープ・デザイン・アトリエ 代表 西田正徳
10「都市公園の新たな役割〜生物多様性の創出〜」 千葉大学大学院園芸学研究科 准教授 野村昌史
09「日本の伝統園芸文化」 東京都市大学環境学部 客員教授 加藤真司
08「リガーデンで庭の魅力を再発見」 (一社)日本造園組合連合会 理事・事務局長 井上花子
07「七ツ洞公園再生の仕掛け」 筑波大学芸術系 教授 鈴木雅和
06「ランドスケープ遺産の意義」  千葉大学名誉教授 赤坂信
05「公園文化を育てるのはお上に対する反骨精神?」 森本千尋
04「公園のスピリチュアル」 東京農業大学名誉教授・元学長 進士五十八
03「遺跡は保存、利活用、地域に還元してこそ意味をもつ~公園でそれを実現させたい~」 学校法人旭学園 理事長 高島忠平
02「公園市民力と雑木林」 一般社団法人日本樹木医会 会長 椎名豊勝 
01「これからの公園と文化」 一般財団法人公園財団 理事長 蓑茂壽太郎


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