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3.「真剣になる体験」がもたらす学び


ある時、自然発見塾で「クモ」をテーマとして、プログラムを行いました。クモは、大多数の人が「嫌い」なものとしてイメージする生物ではないでしょうか。参加者数も、普段に比べると少ない状況でした。会場には、「クモ」の図鑑やぬいぐるみなども並べてあったので、開始までの間、そこかしこから、「気持ち悪い」などの悲鳴があがっていました。

自然発見塾の最初に「クモ」が嫌いな人を尋ねると…、子どもだけでなく保護者も含めて、ほぼ全員の手が上がりました。「形が嫌い」「足が8本もある」「糸が嫌」など、その理由も様々。中には、「見るのも嫌」という人もいました。

 

まずはクモ本体ではなく、クモがどうして自分の糸にくっつかないのか体験してもらうことにしました。プラスティック容器のフタにセロハンテープでタテ糸、両面テープでヨコ糸を貼りクモの巣を模したものを子ども達の前に置きました。最初は、置かれたものになかなか手が伸びないのですが、「触って確かめてみよう」という言葉で手が伸び始めます。子ども達は、2つのテープで表した巣に「くっつく糸」と「くっつかない糸」があることに気が付きました。「くっつかない糸」を歩くことで、クモが自由自在に巣を歩くことが分かったのです。

次に、その足に注目してもらうことにしました。クモが巣で歩いている写真を置きました。嫌がっていた子どももいたのですが、「足は何本?」「足はどこから出ている?」「目はいくつ?」と問いかけると、そこからは写真をよく見ながら答えていました。さっき、嫌がっていた子も、一緒に観察し始めました。

そこに、透明のプラカップに入った実物のクモを置きました。途端に、「足に毛がついてる!」「糸が出てくるところ見えた!」と声があがります。子ども達は虫メガネを片手にじっくりと観察し始め、傍で見ていた保護者も、一緒に観察をし始めたのです。誰がクモ嫌いだったのか分からないくらい、全員が間近で観察をしていました。

 

しっかりと観察が終わったら、クモの糸の耐久実験を最後に行います。クモから糸を分けてもらい、その糸にカゴをぶら下げ、糸が切れるまで1円玉を乗せていきます。「どれくらい入ると思う?」と聞くと、3枚を予想した子がほとんどでした。1枚ずつ1円玉を持たせて、「1枚~、2枚~」と紙の皿に入れていきます。予想した3枚を超えて、4枚、5枚…、最初は遠巻きに見ていた子どもも保護者も、食い入るように見つめていました。その顔つきは真剣そのもの。1円玉の重みで糸が震える度に歓声があがります。コインを持つ手が震えている子もいました。糸は伸縮をしながら、ゆれたりたるんだりを繰り返して、いつ切れてもおかしくない状況です。

そして、とうとうその時がきました。15枚目を入れた瞬間、ぷっつりと切れました。「あー」と教室中に声が響きました。お互いに顔をみあって、自分たちが体験した話がたくさん膨らんでいきました。

この時は、複数の糸を束ね、10円玉をのせて実験した

この時は、複数の糸を束ね、10円玉をのせて実験した

自然発見塾の最後に、もう1度最初の問いかけをしてみました。子ども達からは「嫌いだったけど、クモってすごいやつだった」と感想が出てきました。最初は感情的に、「好き・嫌い」だったものが、プログラムを通して生態を理解して、その結果が「すごいやつ」に変わったのです。一つ一つの体験が子ども達の学びに繋がった瞬間でした。

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過去記事一覧
第17回 地域を育む公園文化~子育てと公園緑地~
16.公園標識の多言語整備について
15 環境教育:遊びから始まる本当の学び
14 青空のもとで子どもたちに本の魅力をアピール
13 関係性を構築する場として「冒険遊び場づくり」という実践
12 植物園・水族館と学ぶ地域自然の恵み
11 海外の公園と文化、そして都市
10 都市公園の新たな役割〜生物多様性の創出〜
09 日本の伝統園芸文化
08 リガーデンで庭の魅力を再発見
07 七ツ洞公園再生の仕掛け
06 ランドスケープ遺産の意義
05 公園文化を育てるのはお上に対する反骨精神?
04 公園のスピリチュアル
03 遺跡は保存、利活用、地域に還元してこそ意味をもつ  ~公園でそれを実現させたい~
02 公園市民力と雑木林
01 これからの公園と文化


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