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冬の植物をモチーフとした菓子

現代に話を戻しまして、とらやを例に、いくつか冬の菓子を見てみましょう。たとえば、『氷の上』という、水仙をかたどった菓子があります。菓銘からは、寒い冬、凍りついた湖や池のほとりに咲く水仙の花が想像されます。

 

羊羹製(餡に小麦粉・寒梅粉を混ぜて蒸し、揉み込んだもの)の生地で、 木型を使って作られる『氷の上』

羊羹製(餡に小麦粉・寒梅粉を混ぜて蒸し、揉み込んだもの)の生地で、木型を使って作られる『氷の上』

 

『新山茶花』のように、植物が抽象的に表現されたものもあります。紅と白というシンプルな2色の色合いですが、不思議と山茶花の凛とした美しさが感じられるようです。

 

紅白に染め分けた外(うい)良(ろう)で黄色の餡(あん)を包んでいる。 切ると中餡の黄色が見え、おしべを思わせる。

紅白に染め分けた外郎ういろうで黄色のあんを包んでいる。 切ると中餡の黄色が見え、
おしべを思わせる。

 

 

また、1月になると、早くも梅の菓子が店頭に並び始めます。梅は他の花よりも早く咲くことから百花の魁(さきがけ)と呼ばれ、春を告げる花とされます。実際にはまだ寒い季節に販売されることも多いのですが、梅の菓子の登場によって、冬から春へ季節が移りつつあることが感じられます。

 

羊羹製『寒紅梅』、きんとん製『木の花』、薯蕷製『月(つき)ヶ(が)瀬(せ)』 きんとん製は、そぼろ状にした餡を、煉(ねり)切(きり)や求(ぎゅう)肥(ひ)で餡玉を包んだ芯のまわりにつけたもの。

羊羹製『寒紅梅』、きんとん製『木の花』、薯蕷製『月ヶ瀬つきがせ
きんとん製は、そぼろ状にした餡を、煉切ねりきり求肥ぎゅうひで餡玉を包んだ芯のまわりにつけたもの。

 

面白いのは、同じ梅モチーフの菓子でも、意匠や菓銘がさまざまなことです。『寒紅梅』は寒さの中に咲く一輪の紅梅。『木の花』という銘は、『古今和歌集』の序に「なにはづ(難波津)に咲くやこの花冬ごもり……」とあるように梅の別名であり、紅白のそぼろは、咲き誇る梅を連想させます。『月ヶ瀬』は奈良の地名で、名張川なばりがわの渓谷沿いにある梅の名勝地。白い饅頭に青い線が入ったシンプルな意匠ですが、菓銘とあわせて見ることで、川の両岸に白梅が咲き匂う情景が浮かぶ趣ある菓子です。

『寒紅梅』は花の形、『木の花』は赤と白という色合いの妙、『月ヶ瀬』は、梅が咲き匂う情景など、それぞれ違った視点で梅の美しさを捉えており、植物を観賞する際の視点を教えてくれるようでもあります。

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過去記事一覧
22 和菓子にみる植物のデザイン
21 日本庭園と文様
20 インクルーシブな公園づくり
19 世田谷美術館―公園の中の美術館
18 ニュータウンの森のなかまたち
17 地域を育む公園文化~子育てと公園緑地~
16 公園標識の多言語整備について
15 環境教育:遊びから始まる本当の学び
14 青空のもとで子どもたちに本の魅力をアピール
13 関係性を構築する場として「冒険遊び場づくり」という実践
12 植物園・水族館と学ぶ地域自然の恵み
11 海外の公園と文化、そして都市
10 都市公園の新たな役割〜生物多様性の創出〜
09 日本の伝統園芸文化
08 リガーデンで庭の魅力を再発見
07 七ツ洞公園再生の仕掛け
06 ランドスケープ遺産の意義
05 公園文化を育てるのはお上に対する反骨精神?
04 公園のスピリチュアル
03 遺跡は保存、利活用、地域に還元してこそ意味をもつ  ~公園でそれを実現させたい~
02 公園市民力と雑木林
01 これからの公園と文化


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