公園文化ロゴ
公園文化ロゴ
公園文化を語る 公園の達人 公園管理運営「チャレンジ!」しました 生きもの小話 みどり花コラム アートコラム 花みどり検定 公園の本棚 世界の公園 たまて箱 公園”Q&A /
公園文化を語る ロゴ

作品のない展示室


2020年の夏、当館は一風変わった企画を開催しました。それまで考えてもみなかった状況に世の中が一変し、世界中で多くの美術館が休館するという事態となりました。当館もまた、3月31日から6月1日まで休館となり、その後も予定を大幅に変更せざるを得ませんでした。海外からはおろか、当面、国内からも作品を借用することが難しくなり、急遽、所蔵品による展示に切り替えることにしたのですが、どうしても準備のために催しの空白の期間ができてしまいました。

 

その期間を一体どうするか?相談の中で、いっそのこと何も展示せずに、美術館そのものと外の風景を見てもらったらどうか、というアイデアが出たのです。

 

当館の設計は戦後を代表する建築家のひとりである内井昭蔵(1933-2002)によるものです。内井昭蔵は設計上のコンセプトを「生活空間としての美術館」、「オープンシステムとしての美術館」、「公園美術館としての美術館」の3点としました。そのため、当館には多くの窓とアプローチがあり、本来は開放的な作りとなっています。光あふれる自然の中で作品と接する場となる狙いだったのですが、ところが、美術館としては作品保全の観点から、作品を太陽光にさらすわけにはいかず、残念ながら通常の展示ではこの窓はシャッターで堅く閉ざされています。この件については、内井先生は来館の度に残念がっていらっしゃいました。

 

この『作品のない展示室』という企画は「型破り」「前代未聞」として思いのほか、話題にしていただきましたが、わたしたち職員にとってはごく自然なことでした。なぜなら、わたしたちはこの建物の本来の姿を知っていましたから。

窓をあけることにより、初めてランドマークであるはずのくぬぎの木や屋外彫刻の存在に気付かれた方も多く、外の風景を「まるで絵のようだ」とゆったりと楽しみ、くつろいで過ごしていただきました。

美術館とは、ただ作品を見せる場所ではない、当館は開館以来ずっと、そう考えてきたのですが、この企画をすることで、改めて実感しました。

 

『作品のない展示室』では本来の建物の姿を多くの人が楽しんだ

『作品のない展示室』では本来の建物の姿を多くの人が楽しんだ

 

 

今回、寄稿させていただくにあたり、ふと「公園」の定義とは何かを調べてみました。Wikipediaによると「公園とは、公衆が憩い、また遊びを楽しむために公開された場所」とありました。この言葉通りに考えれば、美術館も公園のひとつだと考えられるのではないでしょうか?

 

 

 

◆関連ページ

世田谷美術館HP:https://www.setagayaartmuseum.or.jp/

 

※文中に出てくる所属、肩書等は、掲載時のものです。

(2020年12月掲載)

区切り線
過去記事一覧
20 インクルーシブな公園づくり
19 世田谷美術館―公園の中の美術館
18 ニュータウンの森のなかまたち
17 地域を育む公園文化~子育てと公園緑地~
16 公園標識の多言語整備について
15 環境教育:遊びから始まる本当の学び
14 青空のもとで子どもたちに本の魅力をアピール
13 関係性を構築する場として「冒険遊び場づくり」という実践
12 植物園・水族館と学ぶ地域自然の恵み
11 海外の公園と文化、そして都市
10 都市公園の新たな役割〜生物多様性の創出〜
09 日本の伝統園芸文化
08 リガーデンで庭の魅力を再発見
07 七ツ洞公園再生の仕掛け
06 ランドスケープ遺産の意義
05 公園文化を育てるのはお上に対する反骨精神?
04 公園のスピリチュアル
03 遺跡は保存、利活用、地域に還元してこそ意味をもつ  ~公園でそれを実現させたい~
02 公園市民力と雑木林
01 これからの公園と文化


TOPに戻る

公園文化ロゴ2