ユニバーサルデザインは、多様な利用者の幅広いニーズに応えて誰もが使えるようにすることであり、特定のニーズに合わせた「専用品」をデザインすることではありません。専用品は、その利用者を特別な人だと浮き立たせ差別の意識を生む要因にもなります。
ユニバーサルデザインによる公園は特定の人のための場所ではなく、あらゆる人が一緒に遊び、心地よく過ごすことができます。この誰をも排除しないインクルーシブな場が今後の公園のあり方として注目されているのです。
こうした公園づくりは、米国などでは法律(※3)の後押しもあって’90年代から取り組まれており、アクセシブルでなおかつ魅力的な公園がたくさん生まれています。みーんなの公園プロジェクトが行った日本の公園づくりに関わる方々へのインタビューでは、国内でその動きが鈍い理由として、多様な利用者のニーズや具体的なデザインのポイントの把握の難しさが挙げられました。
そこで、みーんなの公園プロジェクトではインクルーシブな公園づくりのためのガイド(※4)を作成し、その中で「遊び場のユニバーサルデザイン5原則」を提案しています。
1)アクセシビリティ
2)選択肢
3)インクルージョン
4)安心・安全
5) 楽しさ!
これらの観点が盛り込まれたインクルーシブな公園には次のような特徴があります。
・誰もが公平に、自分に合った方法で利用できる。
・身体を動かす遊びに加え、感覚刺激を伴う遊び、自然を取り入れた遊び、人と関わる社会的遊びなど、遊びのタイプや挑戦のレベルが豊富である。
・多様な誰もが迎え入れられ、人々や地域とのつながりを感じられる。
実際に海外の先進事例を訪れると、こうした公園は障害の有無を問わず多くの子どもや家族に人気が高く、地域の誇りとなっていることも少なくありません。
こうしたユニバーサルデザインによる遊び場づくりには、多様な利用者の参加が不可欠です。プロセスの初期段階から自治体やデザイナーたちと、障害のある子どもや保護者、NPOなどが連携し対話を重ねることにより、利用者や地域の幅広いニーズを柔軟に反映できます。
またそれらの過程を随時公開したり、ワークショップやイベント、ボランティア協力などの機会を提供したりすることも重要です。地域を巻き込んだ丁寧なプロセスが人々の間にインクルーシブな公園への理解を高め、「私たちの公園」というオーナーシップを育むことにもつながります。
第29回 すべての人々へ自然体験を
28 都市公園が持つ環境保全への役割
27 フォトグラファー視点から見る公園
26 高齢社会日本から発信する新しい公園文化
25 植物園の魅力を未来につなげる
24 アートで公園内を活性化!
23 手触りランキング
22 和菓子にみる植物のデザイン
21 日本庭園と文様
20 インクルーシブな公園づくり
19 世田谷美術館―公園の中の美術館
18 ニュータウンの森のなかまたち
17 地域を育む公園文化~子育てと公園緑地~
16 公園標識の多言語整備について
15 環境教育:遊びから始まる本当の学び
14 青空のもとで子どもたちに本の魅力をアピール
13 関係性を構築する場として「冒険遊び場づくり」という実践
12 植物園・水族館と学ぶ地域自然の恵み
11 海外の公園と文化、そして都市
10 都市公園の新たな役割〜生物多様性の創出〜
09 日本の伝統園芸文化
08 リガーデンで庭の魅力を再発見
07 七ツ洞公園再生の仕掛け
06 ランドスケープ遺産の意義
05 公園文化を育てるのはお上に対する反骨精神?
04 公園のスピリチュアル
03 遺跡は保存、利活用、地域に還元してこそ意味をもつ ~公園でそれを実現させたい~
02 公園市民力と雑木林
01 これからの公園と文化