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第20回 インクルーシブな公園づくり

2020年3月に都立公園では初めてとなる障害のある子どももない子どもも一緒に遊べる遊具広場が都立砧公園にできるなど、ユニバーサルデザインによるインクルーシブな公園づくりが広がっています。

 

みーんなの公園プロジェクト(※1)は、「障害の有無などにかかわらずすべての子どもが、自分の力をいきいきと発揮しながら、さまざまな友だちと共に遊び学べる公園づくりの促進」をめざして2006年から活動を始めた市民団体です。この活動を通して見えてきたインクルーシブな公園づくりのポイントと今後のあり方を考えてみたいと思います。

遊びと公園

「遊び」は子どもにとって不可欠なものです。子どもは遊びを通して成長し、身体的・情緒的・認知的・社会的発達をしていきます。幼少期の豊かな遊び体験が、その後の心身の健康や学力などの長期的な利益に繋がるという研究もあり、国連子どもの権利条約では、遊びを子どもの権利として位置づけています。

その遊びを提供できる身近な場所が公園です。しかしこれまで、障害などによって公園や遊具を利用できない子どもたちの存在はあまり顧みられてきませんでした。

 

障害があるために遊べない公園を「障害の社会モデル」(※2)の観点で捉えると、問題は子ども自身ではなく公園や遊具の側にあります。つまり、それらのデザインが障害のある子どもたちの要求に応えられていないということです。こうした課題を根本的に解決するのがユニバーサルデザインの考え方です。

 

アクセシブルな地表面とゾーン分け

アクセシブルな地表面とゾーン分け

 

登る/降りるの選択肢がいろいろ選べる築山

登る/降りるの選択肢がいろいろ選べる築山

ユニバーサルデザインによる遊び場づくり

ユニバーサルデザインは、多様な利用者の幅広いニーズに応えて誰もが使えるようにすることであり、特定のニーズに合わせた「専用品」をデザインすることではありません。専用品は、その利用者を特別な人だと浮き立たせ差別の意識を生む要因にもなります。

ユニバーサルデザインによる公園は特定の人のための場所ではなく、あらゆる人が一緒に遊び、心地よく過ごすことができます。この誰をも排除しないインクルーシブな場が今後の公園のあり方として注目されているのです。

 

こうした公園づくりは、米国などでは法律(※3)の後押しもあって’90年代から取り組まれており、アクセシブルでなおかつ魅力的な公園がたくさん生まれています。みーんなの公園プロジェクトが行った日本の公園づくりに関わる方々へのインタビューでは、国内でその動きが鈍い理由として、多様な利用者のニーズや具体的なデザインのポイントの把握の難しさが挙げられました。

 

 

車いすのまま一緒に遊べる回転遊具

車いすのまま一緒に遊べる回転遊具

 

背もたれ付きと皿型の2種のブランコ

背もたれ付きと皿型の2種のブランコ

 

 

そこで、みーんなの公園プロジェクトではインクルーシブな公園づくりのためのガイド(※4)を作成し、その中で「遊び場のユニバーサルデザイン5原則」を提案しています。

1)アクセシビリティ

2)選択肢

3)インクルージョン

4)安心・安全

5) 楽しさ!

 

これらの観点が盛り込まれたインクルーシブな公園には次のような特徴があります。

・誰もが公平に、自分に合った方法で利用できる。

・身体を動かす遊びに加え、感覚刺激を伴う遊び、自然を取り入れた遊び、人と関わる社会的遊びなど、遊びのタイプや挑戦のレベルが豊富である。

・多様な誰もが迎え入れられ、人々や地域とのつながりを感じられる。

 

実際に海外の先進事例を訪れると、こうした公園は障害の有無を問わず多くの子どもや家族に人気が高く、地域の誇りとなっていることも少なくありません。

 

こうしたユニバーサルデザインによる遊び場づくりには、多様な利用者の参加が不可欠です。プロセスの初期段階から自治体やデザイナーたちと、障害のある子どもや保護者、NPOなどが連携し対話を重ねることにより、利用者や地域の幅広いニーズを柔軟に反映できます。

またそれらの過程を随時公開したり、ワークショップやイベント、ボランティア協力などの機会を提供したりすることも重要です。地域を巻き込んだ丁寧なプロセスが人々の間にインクルーシブな公園への理解を高め、「私たちの公園」というオーナーシップを育むことにもつながります。

 

姿勢を保つのが困難な子どもも一緒に遊べる回転遊具 カームダウンエリアにもなる木の洞を模したスポット

姿勢を保つのが困難な子どもも一緒に遊べる回転遊具
カームダウンエリアにもなる木の洞を模したスポット

 

 

音を楽しめる楽器遊具

音を楽しめる楽器遊具

 

 

自然を取り入れた公園

自然を取り入れた公園

インクルーシブな公園はインクルーシブな社会づくりの核に

こうしてつくられたインクルーシブな公園は、多くの人が気軽に集い、あらゆる子どもが自分の力を発揮して遊べるだけでなく、地域の多様な人々が相互理解を深めながらつながりを広げていく場にもなります。公園は、インクルーシブな社会づくりの核になる可能性を持っているのです。

 

嬉しいことに現在、東京都がインクルーシブな遊び場づくりのさらなる実践や仕組みづくりを進めている他、全国各地で障害のある子どもの保護者たちから要望が上がり、自治体や業界の取り組みも活発になっています。今後、さまざまな人々の参加と協力により、地域に根ざしたインクルーシブで魅力的な公園が広がっていくことが期待されます。

 

地域の多様な人々が集い繋がる地域の核としての公園

地域の多様な人々が集い繋がる地域の核としての公園

 

※1:みーんなの公園プロジェクトのサイト https://www.minnanokoen.net/
※2:障害者が日常生活で受ける制限は、当人の障害に起因するものではなく社会の様々な障壁と相対することによって生ずるもので、解決する責任は社会の側にあるという考え方。

※3:障害を持つアメリカ人法 (ADA :Americans with Disabilities Act)

※4:「すべての子どもに遊びを~ユニバーサルデザインによる遊び場づくりガイド」みーんなの公園プロジェクト編著, 萌文社, 2017

 

 

■柳田宏治 氏 略歴
倉敷芸術科学大学 芸術学部 教授、みーんなの公園プロジェクト代表。

家電メーカーのデザイナーを経て2004年より現職。1994-96年に米国にてユニバーサルデザインの動向を調査した後、国内で普及活動を行う。

著書に『すべての子どもに遊びを ユニバーサルデザインによる公園の遊び場づくりガイド』(萌文社, 2017)など。

 

 

◆関連ページ
みーんなの公園プロジェクト HP:https://www.minnanokoen.net/

 

※文中に出てくる所属、肩書、情報などは、掲載時のものです。

(2021年4月掲載)

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過去記事一覧
20 インクルーシブな公園づくり
19 世田谷美術館―公園の中の美術館
18 ニュータウンの森のなかまたち
17 地域を育む公園文化~子育てと公園緑地~
16 公園標識の多言語整備について
15 環境教育:遊びから始まる本当の学び
14 青空のもとで子どもたちに本の魅力をアピール
13 関係性を構築する場として「冒険遊び場づくり」という実践
12 植物園・水族館と学ぶ地域自然の恵み
11 海外の公園と文化、そして都市
10 都市公園の新たな役割〜生物多様性の創出〜
09 日本の伝統園芸文化
08 リガーデンで庭の魅力を再発見
07 七ツ洞公園再生の仕掛け
06 ランドスケープ遺産の意義
05 公園文化を育てるのはお上に対する反骨精神?
04 公園のスピリチュアル
03 遺跡は保存、利活用、地域に還元してこそ意味をもつ  ~公園でそれを実現させたい~
02 公園市民力と雑木林
01 これからの公園と文化


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