皆様、新年明けましておめでとうございます。昨年に引き続き、本年も公園とアートのお話をさせていただきます。いろいろな切り口で話題を取り上げていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
さて、寒い冬は公園を訪れる方も秋や春に比べて少なく、静かで澄んだ景色が広がっているのではないでしょうか。所によっては雪景色の公園もあるでしょう。そんな中、1本のペンと小さな紙があれば、だれでも気軽に冬の公園の魅力を再発見できる〝5分スケッチ〟を紹介します。

【季節のいろ】 山茶花のはっきりとした色合いは生垣など家の周りにもよく見られ、花の種の少ない冬でも目を楽しませてくれます。
【スケッチとは】
スケッチと聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?絵が得意な人が描く風景画や人物画のことを指すと思う方もいるかもしれません。絵は苦手だな、学生時代以降は絵を描くことなんてない・・・という方も気負わず読み進めてください。
スケッチとはある対象を短時間で見て描く行為のことをいいます。つまり、いいな、おもしろいな、きれいだなと思ったものや風景、人物などを短い時間、しっかりと見つめて描くものです。これに対して、「デッサン」または「素描」は、石膏デッサンに代表されるように、対象をじっくりと観察し、形、構造、陰影などを正確に再現して描く行為をいいます。こちらは専門的でハードルが高いですが、スケッチには難しい作法や画材、用紙などのルールは一切ありません。いつでも気が向いたら始められ、隙間時間でも楽しめるアート活動といえるでしょう。とはいえ、このスケッチという行為は、世の中に発表されているものは少ないですが、巨匠と呼ばれる画家も、実にたくさん行っています。一枚の作品を制作する前に多くのスケッチを行い、画面構成を研究したり、純粋に描く行為そのものが創造活動の探求ともなっています。また、美術関係のお仕事をされている人にとって、日々の造形活動を進めるアイデアのもとになることも多いです。これは、スケッチという行為が、自身の見慣れた光景を見つめなおし、新しい発見を与えてくれる活動といえるからです。
【スケッチをしてみよう】
では実際にスケッチを行ってみましょう。
まずは紙を準備してください。わざわざ専用のものを購入しなくても始められますが、今年はたくさん描いてみたいなという方は、スケッチブックを用意すると気分も上がるのではないでしょうか。どの場所で描くかにもよりますが、あまり大きなサイズ(F8など)ですと一枚描くのに時間もかかります。A5サイズくらいのもので十分です。また、小さなノートやメモ帳、ポストカードや名刺サイズのカードなども良いです。罫線などは入ってないほうが気にならず描けますが、そこはお好みで準備してください。
次は描く道具です。一番かきやすいのは鉛筆です。鉛筆は芯が固くて薄い10Hから、やわらかくて濃い10Bまでありますが、2B~4Bあたりで文房具店やホームセンターで手にはいりやすいもので十分です。シャープペンシルやボールペン(各色)を普段使用している方は、こちらを使ってみてもいいでしょう。均一の線が引けるので、イラスト風のスケッチには使いやすいです。その他、大胆な線が引けるので、筆ペンを使ってみても面白いです。

上) スケッチブック、ミニノート、名刺サイズの紙 下)鉛筆、ペン、筆ペン、色鉛筆
そして、次は描く対象を決めましょう。紙と鉛筆を持ち、まずは公園を歩いてみます。今日は公園の中で面白いな、気になるな、あれは何だろう?というような視点で歩いてみてください。そして実際に描くには2つのパターンがあります。一つ目はその場で描くパターン、二つ目は持ち帰って描くパターンです。前者は主に風景を描く場合ですが、その場に立ってでも、ベンチに座ってでも足元が安定する場所で描いてください。5分とはいえど、その場にじっとしているのは寒いので、防寒対策もお忘れないようにしてください。小さな紙のサイズは、立っていると描きにくいので、机がある場所が望ましいです。後者は暖かい事務所や自宅に落ち葉や花、実、枝、抜け殻、貝などを持ち帰り描く場合ですが、こちらは休憩時間なども活用でき、宝物を拾ってくるようで楽しいですね。5分だけ集中してご自身のデスクで描くことで、描き終わったときは気分がすっきりとリフレッシュしていること、間違いなしです。

ぐんまフラワーパークプラスにてバイオネストをスケッチ

拾ってきた橡(トチ)の実、貝殻を小2の子どもとスケッチ
ここでのポイントは、消しゴムを使わないことです。思うように形をとらえられないと思っても、消さずに気にせず、線を重ねて描いてください。消すことに気を捕らわれると、なかなかスケッチが進みません。5分という短い時間で描いた!と思えるには、少しくらい線が歪んでも、異なった方向に行ってしまっても、気にしないことが大切です。
【動物を描く楽しみ】
最後に、公園でのスケッチの実践を一つ報告します。2013年より自身がコーディネートして企画・運営を行っている「埼玉県こども動物自然公園アートフェスタ」では、毎年動物をテーマにしたアート作品を県内外の中学生、高校生、福祉施設から募集しています。作品は屋外に3ヵ月間展示し、公園の活性化に役立てています。その期間中、作品を出品してくれた中学生を招待し、交流を図る「アートセッション」という活動を行っています。その活動は、当日集まった50名程度の参加者でグループを編成し、自身の作品紹介、共同制作、園内ツアー、動物園職員のとっておきの話などを2時間半で実施しています。園内ツアーでは、くじを引いて書いてある動物のスケッチを行うのですが、初めて会った同世代の人と一緒に園内を回り、絵を描くことで、会話が弾み、最初は緊張した面持ちであった中学生もスケッチを通して交流が深まるため、この活動は毎年好評です。
普段、室内の活動が多い美術部の生徒さんたちは、イラストを描いたり、タブレットを使いこなすことは大人顔負けで得意な方も多いですが、動物園という場所で、実際に動いている動物を描くことは、初めてという人ばかりです。動物の形全体をとらえるのはもちろん、短時間で気になる部分に着目してスケッチすることで、動物の体はこうなっているのかという理解気付きに繋がったり、動きのある対象を描く難しさが、逆に新鮮な表現をもたらしてくれるといえます。動物をはじめ、生きものを観察して描くスケッチは、私たちに描く楽しみや喜びを与えてくれます。

アートセッションの様子

カンガルーをスケッチする中学生のグループ

中学生の動物スケッチ作品より
【5分スケッチで魅力再発見】
5分スケッチのお話、いかがだったでしょうか。いつも訪れている公園は、見慣れた風景であるがゆえ、特に冬は色彩も落ち着いていて、魅力を感じることが難しいかもしれません。しかし、スケッチという気軽に誰でも出来る表現を通じて、自身が植物や自然、生きもの、風景の魅力を再発見することで、これまでと異なる視点でその景色を見つめることが出来るのではないでしょうか。スケッチをして、これまで気に留めていなかった小さな発見があること、それこそが公園のある暮らしをより豊かにしてくれると思います。
◎公園でのアート活動、アイデア、ご相談などありましたらお気軽にお問い合わせください。
群馬県立女子大学文学部美学美術史学科 准教授
アートフェスタ実行委員会 代表 奥西麻由子
(2026年1月掲載)
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