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アートにまつわるエトセトラ第2回
「こんなところにもアート!」」

皆さん、こんにちは。今年の夏も全国各地で猛暑日が続き、大変でしたね。そんな夏から、少しずつ秋の気配を感じられる時期になってきました。特に夜は森や林、里山で秋の虫たちの声が聞こえてくる頃です。夏の疲れもあると思いますが、移り変わる季節と共に、またアートのお話をさせていただきます。芸術といえば、やはり秋。ですが、難解な芸術の話ではなく、今回は「こんなところにもアート」をテーマに、これまで公園内を彩った取り組みをご紹介させていただきます。どうぞ、ごゆるりとお付き合いください。

 

【季節のいろ】 この時期はダリアの花が長期間見られます。品種も豊富で、花弁のかたちが美しく、一輪あるだけで華やかな気分になります。

【季節のいろ】 この時期はダリアの花が長期間見られます。品種も豊富で、花弁のかたちが美しく、一輪あるだけで華やかな気分になります。

 

 


【イルミネーションオブジェ】

今回はまず公園内で開催されたイルミネーションの手作りオブジェの話題を。

イルミネーションといえば、公園のみならず駅前や公共の広場、ショッピングモールなどで特に秋から冬の時期、空間演出として用いられていますが、その多くは業者さんへの発注で施工されます。年々新しい装置やオブジェは登場しますが、なかなか他との差異を出すのは難しく、中にはホームセンターで売られていそうなオブジェを並べただけ?と感じてしまう、設置する側のセンスが問われるものも多いのではないでしょうか。自分たちでイルミネーションを一から作るのは時間的にも難しいと思いますが、手作りのイルミネーションオブジェを少し取り入れることで、園内に誰かが作ったあかりのぬくもりを感じられる空間を創出することができます。

 

このような考えのもと、二つの公園で行ったイルミネーションオブジェについてお話しします。一つ目は、新潟県の国営越後丘陵公園での取り組みです。2013年に行った「LOVE NAGAOKA ART PROJECT」という、地域の方々とアートを通して心温まる空間を一緒に作り上げていくプロジェクトの中で、夏のイルミネーションイベントに合わせて、来園者と一緒に「サンドブラストオブジェ」を作りました。開催前に近隣の中学校の美術の授業で中学生に作っていただいた作品と、公園来園者に呼びかけて作ってもらった作品を展示しました。具体的にどのようなものかと言えば、簡単な切り絵をベースとしたものです。裏がシールになっているカッティングシートを長岡らしいモチーフに切り取り、ガラス瓶に貼ってもらいました。長岡らしいモチーフには、例えば花火が打ちあがる様子や文字などがあります。その後、我々アートフェスタ実行委員会がサンドブラストという手法でガラスに砂を吹き付け、シールで貼った部分以外を曇りガラスにする作業を行いました。200個ほどのガラス瓶の仕上げを手作業で行うのは大変でしたが、一人ひとりの思いが詰まった作品は、会場内でハート型に並べられました。イルミネーションが点灯されると、ハート型のピンクのガラスが浮かび上がります。近づいてみると、曇りガラスにそれぞれのデザインが施されているという「こんなところにもアート」を体感できます。

中学生が作った作品 ガラス瓶にカッティングシートを貼ります

 

サンドブラスト作業の様子 箱の中で砂を吹き付けています

サンドブラスト作業の様子 箱の中で砂を吹き付けています

 

完成したオブジェを配置

完成したオブジェを配置

ピンクのライトが入ってかわいく光ります

ピンクのライトが入ってかわいく光ります

 

 

二つ目は埼玉県の国営武蔵丘陵森林公園のイルミネーションオブジェについてです。2016年に行われた秋のイルミネーションイベント「紅葉見ナイト」では、都市緑化植物園までの園路の一部が暗く、足元が危険な状況でした。静かな光のオブジェで、そのアプローチを彩ることができれば、装飾だけでなく安全面での機能を兼ねることができます。公園の園路はかなり長いので、当方の大学のゼミ生10名と共に、夏休み中にオブジェの制作に取り組みました。

 

オブジェは秋の約3ヵ月間、屋外に出したままになるため、雨、風、日光に耐えられる素材を考えました。そこで黒いプラスチック段ボールで作成することとし、会場の雰囲気に合うように和をイメージした幾何学模様のデザインでくり抜きました。くり抜いた部分の裏から乳白のプラスチック段ボールを貼って、三角の状態に組み立て完成です。その中にライトを入れ、内側から光るようにしました。黒いオブジェなので、夜は暗闇に同化し、くり抜いた部分がさまざまな色に光ります。高さは60センチ、90センチ、120センチと三種類を50個作りました。

 

しかし、2016年シーズンに、オブジェに貼り付けていたセロハンは耐久性がなく、剝がれてしまったものもあったため、2017年の春には次回に向けてセロハン部分を全て剥がし、今回はカラーのクリアファイルをカットして屋外耐久の両面テープで貼りました。こちらは随分長持ちし、なんと2024年まで使用することができました。今年は劣化してきた半分の25個を入れ替えのため制作する予定です。紅葉が美しいシーズン、ぜひ自然とライトアップを楽しみながら「こんなところにもアート」を見つけてみてください。

 

ゼミ生一人一人がカッターでデザインしていきます

ゼミ生一人一人がカッターでデザインしていきます

 

都市緑化植物園までの園路に等間隔に配置

都市緑化植物園までの園路に等間隔に配置

 

 


【トイレにもアート!?】

次にご紹介するのはまさに「こんなところにもアート」です。近年公共空間やお店、デパートなどおしゃれできれいなトイレが増えていますよね。利用者にとって、トイレがきれいなだけでも公園がとても快適に感じられます。また、サービスエリアや道の駅などのトイレにも清掃の方の心遣いで、トイレの入り口に装飾が施されていたり、洗面所にお花やその地域特有のものが置いてあることもあり、これまで殺風景だった場所に温かみを感じるのは私だけでしょうか?

 

そんな公園にも欠かせないトイレに少し彩りを加えてみようとしたのが、同じく先の国営武蔵丘陵森林公園で2016年に行ったトイレアートです。もともと国営公園のトイレは、公園内にたくさんありますが、設備が老朽化しているため、なんとなく入りにくいと感じる来園者もいるとのことでした。当時の企画担当の方と一緒に考えたのは、トイレの外を空間にマッチさせてみようというアイデアです。ここでもまた、来園者と共に作る活動を行いました。具体的には、2×4の板材をたくさん購入し、ランダムな長さにカットしたものに、葉っぱや花、森といった公園らしいモチーフをグラスデコペン(ステンドグラスのようなクリアカラー絵の具)で描いてもらうというものでした。この活動を都市緑化植物園のボタニカルフェアというイベントの一つのブースとして行いました。

 

ボタニカルフェア内のイベントの案内看板

ボタニカルフェア内のイベントの案内看板

 

ご参加の家族、板に下絵を描いてグラスデコペンで描く

ご参加の家族、板に下絵を描いてグラスデコペンで描く

 

トイレの正面、左右側面をある程度覆うには約100枚の板材が必要になるため、全部参加者の皆さんの作品というわけにはいきませんでしたが、一緒に作ることに意味を見出し、出来上がった作品には赤、黄、緑、青、茶のステインを塗りました。グラスデコペンのところがぷっくりとして、かわいらしい板材が完成しました。それらをトイレ側面に配置し、ビスで固定していきました。最初はステインの発色も鮮やかでしたが、2025年現在では、まさに周辺の植物になじんだ色合いに変化しています。公園内のトイレの中でこのようなアートが施されているところはここだけですが、「こんなところにもアート」を体感していただけると嬉しいです。

 

設置の様子 壁を傷つけないように下のみビス止めしています

設置の様子 壁を傷つけないように下のみビス止めしています

 

10年経った板材の色、なじんできました

10年経った板材の色、なじんできました

 

2025年 現在の様子 

2025年 現在の様子

 


【公園を彩るということ】

「こんなところにもアート」のお話、いかがだったでしょうか。公園内の施設には、手を加えて良い場所と、管理の問題から難しい場所があると思います。大がかりな作業を伴うことは、実現が難しいことも多いと思われますが、何か手作りのものがあったり、彩られていたりするだけでも、来園者の方は「この公園、なんだかあたたかみを感じるな」という気持ちになっていただけるのではないでしょうか。特に、技術的に上手くなくても、公園にある間伐材や木の実などを用いたオブジェや看板などがあるだけで、管理をする人の公園への愛情も感じます。芸術の秋、公園の中を改めて新鮮な目で見てみることで、「こんなところにもアート」が出来上がるかもしれません。

 

◎公園でのアート活動、アイデア、ご相談などありましたらお気軽にお問い合わせください。

 

群馬県立女子大学文学部美学美術史学科 准教授

アートフェスタ実行委員会 代表 奥西麻由子

 

(2025年8月掲載)


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