皆さん、こんにちは。過ごしやすくなったと感じる秋もつかの間。最近は木枯らしや朝晩の冷え込みが一層厳しくなり、冬の訪れを感じる季節になりました。外は寒くなりますが、そんな寒さを吹き飛ばす美しいイルミネーションが各地で見られるのもこの時期です。それは光のアートとも言えるでしょう。今回は、前回も少しお話をさせていただいたイルミネーションオブジェのバリエーションとして、これまで公園内を彩った取り組みをご紹介します。

【季節のいろ】 イロハモミジの赤はこの時期美しい紅葉を見せてくれます。公園だけでなく、庭木や街路樹としても植えられており、身近な場所で私たちの目を楽しませてくれます。
【光のアート】
光のアートと聞いて皆さんはどんなものを思い浮かべますか?プロジェクションマッピングやライトアップ、デジタル技術と組み合わされた空間体験など、光そのものを媒体とした芸術表現は、技術の進歩とともに、現在は多様な形で存在しています。光そのものは実在する物体ではありませんが、光を用いることで様々な空間表現が可能となり、絵画や彫刻といった芸術作品とは異なる形で、人々に感動を与えてくれます。また、LEDの普及により、ホームセンター等で安価で購入できるようになったことから、アーティストやイルミネーションを請け負う企業だけでなく、個人宅から公共の場まで、一年中楽しめるようになっています。
公園で行われるライトアップやイルミネーションも同様に、年々進化するLED照明のバリエーションとともに、華やかに演出され、音楽や花火も楽しめるような催しも増えてきています。特に地方都市の公園では、利用促進としての役割を担っており、光のアートを楽しみに大勢の方が訪れます。大規模な公園であれば、多くの来園者を見込める見ごたえのある演出が可能です。一方で、地域の人々が集う小規模な公園においては、工夫を凝らした光のアートを設置することで、訪れた人々に温かい気持ちをもたらしてくれるでしょう。
【プラスチック段ボールを使用したイルミネーションオブジェ】
このような考えのもと、いつものように手作りにこだわり、作成したイルミネーションオブジェを紹介します。前回も話題に取り上げた新潟県の国営越後丘陵公園での取り組みです。2014年の夏に行った「LOVE NAGAOKA ART PROJECT」の作品として、私を含む美術家4名で、長岡花火に登場するフェニックスをモチーフにしたオブジェを作りました。材料はホームセンターで購入することのできる乳白色のプラスチック段ボールのみです。昼間は日光を透過する白いオブジェとして、夜はプラスチック段ボールにパーライトの7色の光を当てることで、ライトアップしてみようと初めて挑戦したものです。

パーツを組み合わせて結束バンドで止める
まずは、フェニックスの下書きをして、藤棚に収まるサイズに拡大し、フェニックスの胴体や羽の部分、顔のパーツをカットしていきます。プラスチック段ボールは4㎜厚の一般的なものを10枚ほど用いました。その後、結束バンドでパーツをつないで固定していきます。この作業は公園内にある施設の「花と緑の館」の研修室を使用させてもらい、パーツをつないだ後、藤棚に運び、同じく結束バンドで固定していきました。プラスチック段ボールは軽くて持ち運びも簡単です。数週間のライトアップ会期でも雨、風などに対して十分な耐久性があり、短期の催しであれば、低予算で使用できる材料といえます。
現地において、1日で組み立てた作品ですが、ライトの色が7色に変化するため、夜間は様々な表情に移り変わり、当初のイメージ通りの仕上がりになりました。訪れる来園者は、好きな色のフェニックスと写真を撮って楽しむ様子が見られました。また次の日、来園者の方々にフェニックスの羽にカットしたカッティングシートに願い事や夢を書いてもらい、フェニックスの羽部分に貼りました。公園を訪れた方が、アートプロジェクトに参加することで、手作りの作品を共に彩ることができました。

ライトを充てながらパーツを藤棚に固定していく

赤いライトのフェニックス

来園者にお願い事や夢を書いてもらった羽のカッティングシート
【来園者と作るイルミネーションオブジェ】
次にご紹介する作品も国営越後丘陵公園で2015年に行った取り組みです。前述の来園者参加型ということに焦点を当て、もっと多くの公園来園者と共に光のアートを作りたいと思って考案したものが「あかりオブジェのお花パーツをつくろう」という作品です。同じく「LOVE NAGAOKA ART PROJECT」として7月、8月に2回ほどワークショップとして実施し、完成した作品を夏のイルミネーションイベントで屋外に展示しました。
この年は「花」をテーマとしてプロジェクトを展開し、どなたでもイメージしやすい、色とりどりの「お花パーツ」を作ってもらうことにしました。事前に図面を作成し、大工さんに、角材と乳白色のプラスチック段ボールで高さ60cmほどの四角錐の灯篭を8つほど作っていただきました。ワークショップでは、お花パーツを作るためにセロハンやアクリル絵の具で模様を描いたトレーシングペーパーを準備し、好きな花の形に切ってもらいます。次に、できたパーツをラミネートフィルムにはさみ、ラミネーターを通して、フィルムの中に花を作ります。最後にフィルムに両面テープを貼り、四角錐の灯篭の内部に貼ってもらいます。大きな灯篭がたくさんあるので、合計80名ほどのかたに作っていただきました。
完成した灯篭にはライトを入れ、来園者と共に作った作品として展示しました。このような参加型の取り組みでは、参加者は自分が作ったものを持ち帰ることは出来ません。しかし、自分の作品が後に一つの作品となって園内に展示されることで、「また公園に行ってみよう」「どんなふうに展示されているのかな?」と再度足を運んでくれるきっかけにもなります。見ず知らずの来園者同士がアートを介して繋がり、一つの作品になる。このような作品は、2000年以降日本各地で展開されているアートプロジェクトにおいて、しばしばみられる手法です。アーティスト一人が作った作品とはまた異なり、それぞれの参加者の想いが込められた大切な作品となるのです。

ワークショップの様子

自分だけのお花パーツを貼ります

たくさんのお花パーツが貼られた状態

展示の様子
【公園を彩るということ】
「光のアート」のお話、いかがだったでしょうか。今回紹介した取り組みは10年前の活動のため、ライトや周辺機材に関しては、現在より良いものが流通していることは言うまでもありません。しかし、既製品のみではなく、人の手で作品を作り、公園をあたたかみのあるオブジェで彩ることは、いつの時代でも来園者の心に光を灯す演出になるでしょう。それぞれの公園らしさ、地域らしさ、そこで働く人々のおもてなしの気持ちが垣間見えるような、光のアートに出合えると嬉しいです。
◎公園でのアート活動、アイデア、ご相談などありましたら、お気軽にお問い合わせください。
群馬県立女子大学文学部美学美術史学科 准教授
アートフェスタ実行委員会 代表 奥西麻由子
(2025年11月掲載)
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