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公園文化の集い
公園文化の集い in 国営ひたち海浜公園 環境シンポジウム
~地域文化を育むひたち海浜公園~2025年(前編)

地域文化を育むひたち海浜公園――私たちの活動が生み出す「もう一つの居場所」の価値

 

【第1回】公園と私たちのつながりを探る、対話型の講演会

 

2025年6月21日、国営ひたち海浜公園にて開催された「令和7年度 公園文化の集い 環境シンポジウム」。筑波大学の藤田直子教授による基調講演「地域活性につながる公園の活用」は、講師からの一方的な説明ではなく、公園ボランティアを中心とした参加者との対話形式で進められました。

 

付箋に書かれた参加者の意見を紹介しながら、対話形式で講演を進める藤田直子教授

付箋に書かれた参加者の意見を紹介しながら、対話形式で講演を進める藤田直子教授

 

■ひたちなか市とつくば市の「意外な共通点」とは?

講演の冒頭、藤田教授はウォームアップとして「ひたちなか市とつくば市の共通点は?」と会場に問いかけました。参加者からは、付箋を通して様々な意見が寄せられます。

 

【会場から寄せられた主なご意見】

 

  • 茨城県内にある市である
  • 行政的に計画されて作られた市である
  • 都市部でありながら森林部も多い

 

「『行政的に計画されて作られている』という視点は興味深く鋭い意見です」と藤田教授。

他にも、都市部でありながら森林部も多いというご意見には多くの方が共感されているようでした。自然豊かな環境が、地域全体に魅力を与えているということですね。

 

参加者自身の気づきを促しながら、「聞く」「書く」「話す」という3つのアクションを通して、公園が持つ「もう一つの居場所」としての可能性を探ることが、この講演のゴールであると示されました。

講演では、参加者の活動価値を再発見し、公園の可能性を共に考えることがゴールとして共有された

講演では、参加者の活動価値を再発見し、公園の可能性を共に考えることがゴールとして共有された

 

 

■ボランティアの皆さんが語る「ひたち海浜公園はどんな場所?」

続いて、「皆さんにとって国営ひたち海浜公園はどんな場所ですか?」という問いが投げかけられました。これには、日頃から公園で活動するボランティアならではの、愛情あふれる声が集まりました。

 

【会場から寄せられた主なご意見】

  • 自然に親しむことができる場所
  • 植物と触れ合う時間が宝である
  • 心地よい場所
  • 広い空を楽しめる
  • 散歩に最適な場所

 

これらの意見交換を通じて、参加者一人ひとりが持つ公園への想いを共有し、その価値を再認識する場となりました。

 

サードプレイスとしての公園の価値

■キーワードは「サードプレイス」

藤田教授は、公園の価値を読み解くキーワードとして「サードプレイス」という概念を紹介しました。これはアメリカの社会学者レイ・オルデンバーグが提唱したもので、自宅(第1の居場所)や職場・学校(第2の居場所)とも異なる、「第3の心安らぐ居場所」を指します。

 

サードプレイスは、自宅や職場とは異なる、もう一つの大切な居場所を指す

サードプレイスは、自宅や職場とは異なる、もう一つの大切な居場所を指す

 

人生100年時代と言われる現代、定年退職などで職場(セカンドプレイス)を離れた後の人生を豊かに過ごす上で、こうしたサードプレイスの重要性が増していると藤田教授は語ります。

 

■私たちの暮らしを支える、多様な公園

一口に公園と言っても、その種類は様々です。講演では、ひたちなか市の都市計画を例に、公園が私たちの生活に密接に関わっていることが示されました。

 

  • 国営公園: 国が設置する極めて大規模な公園(例:国営ひたち海浜公園)
  • 都市公園: 市町村などが設置する、生活に身近な公園
  • 総合公園: 運動施設なども備えた多機能な公園(例:つくば市の洞峰公園)
  • 近隣公園: 小学校区程度の住民が利用する公園
  • 街区公園: 「児童公園」とも呼ばれる、最も身近な公園

 

公園は、国営公園から身近な街区公園まで、階層的に配置されている

公園は、国営公園から身近な街区公園まで、階層的に配置されている

 

ひたちなか市には、多くの小規模な公園が計画的に配置されているのが特徴です。市役所が公開している「ひたちなか市公園地図」には、市内の大小さまざまな公園が示されており、公園に恵まれた環境であることを実感できます。

 

制度上、小学校を拠点に、街区公園(旧児童公園)が半径250メートル以内に配置されるよう設計されています。さらに、街区内には複数の公園が設けられており、ひとつ規模の大きい近隣公園も配置されています。そして、これがさらに拡大すると、中規模な地区公園が設けられるという仕組みになっています。このように、公園は都市計画や制度に基づいて配置されているのです。

 

また、「都市住民のための公園」として、スポーツを楽しむ運動公園や、さまざまな施設を備えた総合公園も整備されています。さらに、国が設置する国営公園はより大規模で、都道府県をまたぐ広さを持つ場合もあります。国営ひたち海浜公園は、こうした国営公園に該当し、地域の財産とも言える存在です。

 

■ボランティアが支える「特別なサードプレイス」

公園は、誰でも無料で利用でき、自然に触れ、健康増進にも繋がる最高のサードプレイス候補です。特にひたち海浜公園の価値を語る上で欠かせないのが、250名以上が登録する公園ボランティア「パークパートナー」の存在です。

その献身的な活動が、公園の美しい景観を維持し、多くの人々を魅了する「特別なサードプレイス」へと昇華させているのです。

講演では、参加者がサードプレイスを意識しやすいように、まずは「ふと立ち寄りたくなる場所、心が安らぐ場所」を尋ねる質問が出されました。会場からは、ゴルフ場や森林、里山、神社仏閣などの屋外空間、そして図書館やホームセンター、スナックやカラオケ、サウナなどの屋内空間といった回答が出されました。それぞれに自分の「第三の居場所」を有していて、リフレッシュできる場として機能していることが推察されました。

 

現代社会ではサードプレイスの重要性が高まっています。特に高齢化が進む中で、定年退職後に第二の居場所(職場)がなくなり、孤立や目的喪失につながることもあります。こうしたなか、新しい居場所としての「サードプレイス」の存在はますます重要性が増しています。

公園という空間が持つサードプレイスとしての魅力について、改めて考えてみると、

 

  • 誰でも無料で利用できることが多い
  • 多様な人々が集まる
  • 自然に触れられる
  • 健康増進につながる

 

といった特長があります。

 

国営ひたち海浜公園に目を向ければ、四季折々の花々やネモフィラ、コキアなど、多様な自然環境に加え、広大な敷地と開放感ある空が魅力です。また、単なるレクリエーションの場だけでなく、「活動の場」としての側面も持っています。特に注目したいのは、地域住民や公園愛好者による公園ボランティア「パークパートナー」の存在です。

パークパートナーは、国営ひたち海浜公園の管理運営に協力するボランティア団体で、現在14の活動団体が組織されています。250人以上の方が登録され、国営ひたち海浜公園の維持・発展に貢献しています。この献身的な活動により、広大な敷地が美しく保たれ、四季折々の自然環境が人々を魅了する空間として継続されています。さらに、公園内だけでなく、地域社会へのポジティブな影響も広がりを見せています。国営ひたち海浜公園が「特別なサードプレイス」として多くの人から愛される理由は、このようなボランティア活動による支えなしでは語ることができません。

 

 

■ワークショップ「私のお気に入りマップ」で見えた新たな魅力

講演では、参加者が園内の「お気に入りの場所」を地図上にマッピングするワークショップも行われました。

参加者が自分だけのお気に入りスポットを共有するワークショップ

参加者が自分だけのお気に入りスポットを共有するワークショップ

 

【会場から挙げられたお気に入りスポット】

 

  • サイレントガーデン
  • 砂丘エリア(眺望や周辺の植物など)
  • 沢田湧水地
  • チューリップガーデン
  • 自然の森
  • 樹林エリア
  • グラスハウス

 

「インスタ映え」を求める観光客とは一味違う、日頃から公園を知り尽くした皆さんならではの視点から、公園の新たな魅力が浮かび上がりました。

砂丘エリアは、植物や景観が素晴らしいと多くの方が挙げており、「夕日が綺麗」というコメントもありました。沢田湧水地も人気です。どちらも一度訪れると、その魅力がより伝わる場所です。

みなさんのお気に入りスポットから、改めて「国営ひたち海浜公園は特別な場所である」と感じられます。個々の視点が加わることで、公園の多様な価値がさらに拡がるように思います。

 

多くの参加者が「お気に入り」として挙げた砂丘エリア。植物や景観の素晴らしさが語られた

多くの参加者が「お気に入り」として挙げた砂丘エリア。植物や景観の素晴らしさが語られた

 

 

(2025年9月掲載)


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