
公益財団法人 神奈川県公園協会
神奈川県立都市公園(三ツ池公園、塚山公園、山北つぶらの公園ほか)
公益財団法人神奈川県公園協会(以下、「協会」とする)は、神奈川県立都市公園18箇所を管理する団体です。協会では、2016年から公園の資源リサイクルのPRのため、剪定枝や散ってしまう花びら等を使った商品開発に取り組んできました。
管理する公園の見どころになっている数多くの桜は、老木化や過密化、病気の発生等による衰退が進行し、その対策が課題となっています。これらの課題に対し、地域の皆さまの協力を得て桜の保全と再生に取り組む「公園の桜守プロジェクト」をスタートしました。また、プロジェクト支援者への返礼品とするために、神奈川県立都市公園4箇所で発生した桜のひこばえ等を用いた桜染めタオルと、クスノキを用いたお香を製作しました。2024年3月からは協会が管理する神奈川県立都市公園5箇所にて販売も開始しています。

■公園の桜守プロジェクト
神奈川県立都市公園には数多くの桜が植樹されており、開花時期には桜の名所として多くの来園者にお花見を楽しんでいただいています。
ところが、近年では公園の桜の老木化や過密化、病気の発生等による衰退がみられ、その対策が課題となっています。また、桜の老木化等の公園の課題を利用者や地域の皆様に知っていただき、一緒に公園の魅力を高めていく機運の醸成を図ることも重要な課題です。
公園全体の老朽化や、厳しい財政状況のなかでも、地域の皆様の協力を得て桜の保全と再生を目指すために、クラウドファンディングを活用した「公園の桜守プロジェクト」を立ち上げました。
桜守プロジェクトでは、協会が管理する神奈川県立都市公園のなかでも、「日本の桜の名所100選」に選ばれている「三ツ池公園(横浜市・鶴見区)」、園内のソメイヨシノが「かながわの花の名所100選」に選定され、徳川家康の外交顧問として活躍したイギリス人ウィリアム・アダムスの供養塔「安針塚」が有名な「塚山公園(横須賀市)」、開園から間もない公園ではあるものの新たな花の名所として地元の期待も大きい「山北つぶらの公園(山北町)」の4箇所を対象として、桜の保全と再生のため、桜の成長の支障となっている木の移植や桜の補植等を行っています。これにかかる費用について、クラウドファンディングで支援を呼びかけたところ、45日間で135人もの支援を受けることができました。
桜守プロジェクト支援者への返礼品とするために、協会が以前から取り組む「ボタニカル・ダイ」(後述)の経験を活かし、新たな桜染めのオリジナルグッズ開発にも取り組みました。
■公園の植物発生材を用いたグッズ開発
協会では、2016年から「発生材の有効活用」を目指して、剪定枝や散ってしまう花びら等を活用した商品開発に取り組んでいます(公園文化web「公園管理運営「チャレンジ!」しました」第7回参照)。特殊な技術で植物発生材から色鮮やかに染める「ボタニカル・ダイ」という方法を用いて、これまでにマツやヤナギの剪定枝、バラの花びら等を原料に鮮やかな色に染めたハンカチやバンダナ等を製作しています。
以前、協会が出展したイベントで「ボタニカル・ダイで欲しい商品」についてアンケート調査した結果から、タオル・ハンカチが男女問わず幅広い年代から人気があることを把握できました。そこで、「公園の桜守プロジェクト」支援者への返礼品にするため、桜のひこばえ等を用いたタオル製作に取り掛かりました。染色に用いるのは、三ツ池公園、塚山公園、山北つぶらの公園と恩賜箱根公園の桜の管理作業で得られた桜の剪定枝やひこばえです。冬芽を付けた枝やひこばえを丁寧に剪定し、新鮮な状態で特殊な技術で染料を抽出します。得られた染料で今治にて織られたオーガニックコットン製ハンドタオルを染め上げ、桜らしい美しさと儚さを感じさせる淡い色合いに仕上げました。
また、写真や動画、インターネットやテレビを通してでは感じることが出来ない「香り」に着目し、お香の製作にも着手しました。プロジェクトの支援者が全国どこに居ても、香りを通して神奈川県立都市公園を感じてもらえることをコンセプトに、全て天然の材料にこだわり、三ツ池公園、塚山公園、大磯城山公園、秦野戸川公園のクスノキ剪定枝のチップを原料にしています。
香りと色は京都の老舗お香メーカー「松栄堂」がサンプルを作り、来園者や協会職員で最も公園らしいものを選考しました。お香の箱を開けた瞬間のトップノートはクスノキらしい緑を、ミドルノートからボトムノートは公園を散歩しているような爽やかな香りを楽しむことができます。
■今後の展開
公園の発生材を活用したグッズ製作は資源リサイクルの取り組みとして重要であると考えています。しかし、現状では利益を出すまでは至っておらず、自主財源を投じてグッズ開発を進めている状態です。今後、持続可能な取り組みとするためにも、企業等と連携し、植物発生材を活用したグッズの製作・販売により、利益が生み出せる仕組みをつくり、継続できるようになることが理想だと考えています。
2024年3月から、三ツ池公園、山北つぶらの公園、恩賜箱根公園、大磯城山公園、秦野戸川公園で桜染めハンドタオル、お香の販売を開始しました(お買い求めの際は事前に公園にお問合せください)。
また、協会では2022年から5年間をかけて公園等でのSDGsの取り組みを展開しています。植物発生材の活用以外にも、安全安心に過ごせる公園管理に向け、おむつ交換台設置や点字パンフレット製作、防災拠点として食糧備蓄や防災用品の配備、生物多様性の保全として樹林地管理や自然普及イベントの開催等を推進していますが、これらの成果の評価・発信にも取り組んでいく必要があると考えています。
※文中に出てくる所属、肩書、情報などは、掲載時のものです。(2024年5月掲載)
◆関連ページ
▼神奈川県公園協会
https://www.kanagawa-park.or.jp/
▼「公園の桜守プロジェクト」概要(支援募集は既に終了しています)
https://readyfor.jp/projects/sakuramori
▼公園管理運営「チャレンジ!」しました 第7回
