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葉画家・群馬直美さんのアートコラム 3rd season 第6回
唯一無二の葉っぱたち

 

今年2023年は、

都市公国制度制定150周年の年。

それを記念して作られたミニノートの表紙に、

私がこれまでに描いた葉っぱの絵9点が、

花を添えています。

 

公国や街路樹、 身近なところで出会い、

見たままありのまま、

原寸大で描いた葉っぱの絵です。

 

今回は、

150周年ノベルティミニノートの

表紙を飾った

唯一無二の葉っぱたち9枚を

お楽しみください。

 

1 ユリノキ  2 オオモミジ  3 ケヤキ

4 スギ  5 イチョウ  6 ヤマモモ

7 トチノキ  8 ソメイヨシノ  9 ヤブツバキ

 

 

 

《ユリノキ》

26年前の7月15日、

立川駅北口の緑川通りの街路樹で出会った。

外形が左右対称で逆さ富士のような美しさ。

 

描いてみると、

葉脈が右と左で異なっていて、

別物! の驚きを兼ね備えた葉っぱだった。

 

当時の制作ノートを紐解くと、

1日目に11時間描き続け、

翌朝7時半から再び描き、

お昼には完成させていた。

そして間髪入れずに、

次のオカメヅタの葉の制作に入っている。

 

26年経った今、

私は1枚描くのに何十日も掛かってしまう。

 

 

《オオモミジ》

オオモミジは園芸界では、

なぜかヤマモミジと一緒にされてしまい、

なかなかかわいそうな身の上なのだ。

 

でもヤマモミジは、

日本海側の冬の厳しい寒さを耐える、

たくましい植物だ。

だからイロハモミジやオオモミジに比ベて

葉っぱの緑のギザギザが荒い。

 

こんな秘密を知ってしまうと、

オオモミジをヤマモミジと呼んでも

別にいいような気になる。

 

オオモミジよ、

気を悪くしていたらゴメン、

と葉っぱを採集した。

 

 

《ケヤキ》

子供の頃、

近所の農家の防風林は、

ほうきを逆さにしたような木だった。

今思えば、 あれがケヤキ。

空っ風に墜落させられた魔女のほうき

しか思えなかった。

 

大人になった私は故郷を離れ、

奇妙な花屋さんの脇の木から、

鮮やかな色に染まった葉を1枚いただいた。

 

 

《スギ》

正月一日、

雪の中で、緑色のスギの葉をみつけた。

茶色い球果もついている。

 

スギの葉っぱは、

枯れてもばらばらにならず

みんな一緒に小枝ごと落ちる。

強い絆の葉っぱたちは、 日本特産の木。

草刈鎌のような形をした

長さ1センチほどの葉が、

らせん状についていてかわいい。

 

 

 

《イチョウ》

1994年12月に構想を練り、下準備をし、

年明け早々、 制作を開始した集合作品

〈化石 1995〉の中の1点。

当時の覚え書きに、

『テンペラは、保存状態さえよければ

描きあげたときの輝きを永遠に保ち続けるという。

 

ごく身近なありふれた葉っぱばかりを

描いているけれど、

近い将来、

むかしはこんな葉っぱもあったのか、

ということになるのだろうか?

何千年か後のことであってほしい』

と記している。

そうならないことを祈るばかりだ。

 

 

 

《ヤマモモ》

『潮風に強く、やせ地でも元気に育つ。

でも、 じめついた場所は苦手。

 

茂りすぎた葉が風通しを悪くすると、

カイガラムシの住みかになりやすい。

 

樹皮で漁網を染め、

薪炭や木製ボタンの原料になる』

有り難いおみくじを読んでいる心地で描いた。

 

 

 

《トチノキ》

トチノキの葉っぱは

5枚から7枚で1 セット。

きれいな円を描き、

長い柄の先にちょこんとついている。

 

――和気あいあいとした家庭の縮図。

鍋をつつき合いながら

たわいもない話で盛り上がる。

今夜はスキヤキかぁ、

何かいいことあったのかな?

こちらの葉っぱたちはなにやら難しい座談会。

 

あっ、 ここはふたりぼっち――

 

トチノキの並木の下を通るとき、

ふと見上げると

いろいろなドラマが見えてくる。

 

《ソメイヨシノ》

江戸時代、染井村(今の東京・豊島区駒込)の

植木職人、伊藤伊兵衛政武が

オオシマザクラとエドヒガンをかけあわせてつくった

大ヒット商品。

 

職人魂の愛と情熱を

強く感じさせるソメイヨシノの花。

散り際の潔さも

妙に日本人の精神性にマッチしていた。

 

この潔さをお手本にと、

多くの若者たちが戦場に消えていった話を

本で読むにつけ、

あぁあ、花の潔さより葉っぱのしぶとさを

お手本にしていたらなあと、

さくら餅を食べながら思ったりする。

ちなみにさくら餅の葉っぱは

オオシマザクラの葉。

さくら湯に浮かんでいるのは

オオシマザクラの園芸品種、

フゲンソウの花びら。

 

 

《ヤブツバキ》

ツバキのオシベは美味しそう。

いつも見るたび、「ソウメンみたいだ」 と思う。

 

――お箸でつまむと根元がくっついていて、どうも食べにくい。

よく見ると先っぽに、炒り卵もついている。

 

「豪華炒り卵つき立ち上がったソウメン」

みたいなツバキのオシベ。

 

このオシベの底には、

たっぷり蜜が蓄えられていて、

ヒヨドリやメジロを呼び寄せる。

 

小烏たちが蜜を吸うと、黄色い花粉が

くちばしや頭にくっつく仕組みになっている。

 

オシベの中央には、

先端が三つに分かれたメシベが一本。

 

小烏たちが花から花へと渡るうちに、

くちばしや頭についた花粉が

メシベの先にくっついて、受粉完了。

 

風や水や虫ではなくて、

烏に花粉を運んでもらう花は、

日本では珍しいのだそうだ。

 

ツバキの花は、

小烏とお話できる花。

 


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