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里山でSDGs ~公園の里山で樹木医と歩く~(国営越後丘陵公園)
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団体名

国営越後丘陵公園管理センター

場所

国営越後丘陵公園内 里山交流館えちごにあん 他

内容

今回は、国営越後丘陵公園(新潟県長岡市)でのSDGsの取組みをご紹介します。新潟県長岡市にある国営越後丘陵公園は、1998年に開園した本州日本海側初の国営公園です。約400haの広大な敷地には、変化に富む地形、様々な動植物が生息する森、澄んだ水など、恵まれた自然環境を活かした「里山」の環境が広がっています。

 

効果

■里山散策しながらSDGsをわかりやすく体験する

 

園内の草花や木々を巡る散策や、里山講義とサステナブルな山菜狩り体験を通して、5感を使って里山環境とSDGsを学べる「里山でSDGs ~公園の里山で樹木医と歩く~」が2022年からスタートしました。樹木医・森林インストラクターで里山レンジャーの増田 道男ますだ みちお さんにお話をうかがいました。

 

国営越後丘陵公園公園管理センター 増田 道男 さん(写真右奥)
(樹木医/森林インストラクター/里山レンジャー)

 

里山と、人々の生活

 

里山とは、生き物と人間が共に暮らす自然です。人が適度に自然や生態系に干渉することで、上手にバランスを保ち共存している状態です。

里山の環境が豊かな状態となるよう保つことで、大気中のCO2を吸収したり、土砂の流出や崩壊を防止したり、大雨の時に洪水を防いだりと、多くの役割を果たしてくれます。

その反対に、里山に人の手が入らなくなることで、里山に根付く生態系は崩壊してしまいます。例えば、落ち葉を拾って、林床をきれいにしないと、新しい草木が芽吹くことができなくなります。人の手から離れた状態が続くことで里山は荒廃していき、最終的には里山が本来持っているさまざまな機能が失われてしまいます。

 

企画のきっかけと、取組みのねらい

 

国営越後丘陵公園「里山でSDGs」を企画した増田さんは、趣味として登山やトレッキング、キャンプなどのアウトドア活動を長年続けてきました。

趣味のアウトドアを楽しむだけでなく、環境に関する知識や技術を身に付けていきます。50代前半には、森林インストラクターを受験、さらに数年後、50代後半にはビオトープ管理者を受験しました。60代前半には樹木医を受験し、環境に関する資格取得を重ねるなかで、環境に関する関心は増大していきました。

 

2012年ごろから、増田さんは地元である新潟県燕市の里山で、山野草の鑑賞会や、樹木名同定会など、その名の通り環境や生態系にふれあう活動「エコ・トレッキングツアー」を開催しています。現在にわたって10年以上の活動を継続しており、ツアーの開催や資格取得、そして昨今のSDGsへの社会的な関心の高まりから、越後丘陵公園の里山に関心を持ってもらおうと思い立ち「里山でSDGs」を企画しました。

「環境」や「里山」という言葉を知っていても、実際にそのような場所に馴染みのない方々に、「まずは里山に親しんでもらい、それから自ら学んでもらい、近い将来には里山を守る行動をとってもらえるようになること」を目指しています。

 

山野草/樹木の解説
散策しながら、山菜の収穫・試食など5感で里山を体感できます

 

■取組みの経過と効果

 

これまで10年以上、里山でのツアーを開催してきた経験から、「環境の話題の入口として、いきなり数値的な話をして理解してもらうことは無理がある」との実感を持っていました。そこで、まずは「地元の住民が気軽に触れ合える身近な低山が里山」ということを認識してもらうため、「食」という最も身近で、興味を持ちやすい内容としました。

越後の里山を快適に楽しく歩ける時期に、年3回(4月、5月、11月)実施しています。内容と併せて参加者の満足度はかなり高いと認識しています。

一方で、環境や生態系の保存や持続的な保全に、今後どの程度結びついていくかは、現時点では未知数です。

 

イベントの様子
散策しながら、山菜の収穫・試食など5感で里山を体感できます

 

■里山とSDGs

 

古代の日本では、農耕を行う以前から定住生活を始めるという、他の地域とは異なる暮らし方を生み出してきました。

それは、現在でも国土の7割を占める森林が、人々の生活と密接した関係にあったからです。住居の周りの森がもたらす資源を活用し、あらゆる生活必需品が森から得られたことで、人々は集落をつくり定住することができたのです。

そして、森は豊かな文化を育むための恵みを得る場所として活用されていました。日本列島の気候は、雑木林を育むのに適しています。里山の雑木林は、人々が暮らしを営みながら、季節ごとの恵みを得られるように育ててきた森なのです。

 

イベントで収穫した山菜

 

■これからの展開に向けた想い

 

現在は、里山や環境に触れ合ってもらう入口として、身近に体感できる内容を中心に実施しています。今後はSDGsによって目指すべき、持続可能な社会づくりや生物多様性の保全といった内容も、より深く知ってもらえる内容を展開していきたいです。

「里山でSDGs」に参加することで、まず近くの里山に目を向けてもらい、足を運んでもらうことが第一歩のステップと考えています。その後、正しい環境保全の知識や自然保護への想いを深めてもらえる人たちが1人でも多く増えてくれるように、活動していきます。

 

イトトンボの仲間

 

 

■関連ページ

国営越後丘陵公園  https://echigo-park.jp/events/

 

※文中に出てくる所属、肩書、情報などは、掲載時のものです。(2023年6月掲載)

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