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誰もが楽しく、安全に楽しみ癒される ユニバーサルカヌー体験会
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団体名

公益財団法人神奈川県公園協会

場所

神奈川県立辻堂海浜公園

内容

■公園の魅力や特色を活かした取組み

当協会では、里山、庭園美、スポーツ、史跡等、様々な特徴を持つ公園を管理しており、各公園がそれぞれの特性を活かし、SDGsの取組みを進めています。こうした取組みにより、互いに補完しあい持続可能な社会の実現に貢献できると考えています。

効果

■ユニバーサルカヌー体験会

 

辻堂海浜公園で実施しているユニバーサルカヌー体験会は、「障がいの有無や、年齢、国籍に関わらず、誰もが楽しく、安全に楽しめ癒される」をコンセプトに、春と秋の日曜日におこなっています。水深の浅いサザン池に、障がいのある方も乗ることのできる転覆しにくい構造のカヌーを浮かべ、1人25分のカヌー体験を楽しんで頂きます。

 

現在は「誰もが自分の人生を自分らしく生きられる」社会の実現に向けて活動している、地域団体のNPO法人HONKI University B&G海洋クラブとの協働により実施しています。ここでは、肢体不自由等の目に見える障がいだけではなく、様々な人が心に抱えている目に見えない「障がい」もユニバーサルの視野に入れ、皆が様々な壁を乗り越えて共に楽しめるよう、1人で乗るカヌーだけではなく、複数人で乗れるモンスターSUPなども揃え、家族や仲間と一緒に参加できる形も選べるようにしています。

 

体験会の様子

体験会の様子

 

■プロジェクトのはじまり

 

2003年から、湘南工科大学機械デザイン工学科・和田研究室(当時)との連携で、辻堂海浜公園ジャンボプールの閉場期間の活用を目的に「障がい者カヌー」実現のプロジェクトがスタートしました。公園の水辺空間を生かしたユニバーサルな事業を行い、今まで以上に多様な人々でにぎわう施設にしようという目的に動き始めた事業です。和田教授(当時)が、「障がいのある子が近所の子どもたち一緒に遊べる場所が必要だ」との近隣の養護学校の校長の言葉に触発されたことで、公園での市販カヌー試乗会等を経て、2005年から「絶対に転覆しないカヌー」の開発に着手し、2007年にサザン池にて現在の活動につながる「ユニバーサルカヌー体験会」を開催しました。

 

その後、様々な団体に協力をいただき、現在ではNPO法人HONKI University B&G海洋クラブを中心として、サポーターの皆さんと一緒に事業を実施しています。

 

体験会には、これまでに延べ約5万人の方が参加され、1人でカヌーに乗れるようになる5歳ごろ~小学校低学年のお子様が多く参加されています。全参加者のうち、約3%は障がいのある方です。

当初、園内ジャンボプールの閉場期間の活用を考えていましたが、ジャンボプールに胸まで入るサポーター(運営者)にとって、特に秋の水温が、体へ重く負担をかけることが課題となりました。

大人の膝あたりまでの水深のサザン池の方が、サポーターの身体への負担も少なく、主な参加者である、初心者の子ども達にとっても安全面でのハードルが低い為、体験会の場所をサザン池に移して実施しています。

 

■ユニバーサルカヌーからの展開

 

当公園は、バリアフリーモデル公園として整備され、1971年に開園しました。ユニバーサルカヌー事業をきっかけに、公園全体がユニバーサルな空間として、年間を通じて多くの方々に利用いただけるよう、プログラムは大きく広がっていきました。年齢、性別、障がいの有無や程度に関わらず、皆で参加できる「ユニバーサルタイム(チャンバラやパラスポーツ体験などをするイベント)」、介護予防を目的とした「やさしいうんどう教室」や「寝たきりゼロ体操」、子どもから高齢者まで多様な年代に対応した「ヨガ教室」など、1年を通じて多彩なプログラムを実施しています。

これらのプログラムは、地域の様々な団体や個人のボランティアに支えられながら行われており、多様な人々が運営者、参加者として集い活動する場として、公園が地域の交流拠点となり、地域活性化にも貢献しています。人に優しい公園、誰もが主役となれる公園づくりを進めてきたことにより、それに共鳴する方々が、公園と関わりを持って、様々な形で公園を盛り立てて下さっていると感じます。

また、当公園は、広大な芝生広場を中心に、ジャンボプール、交通公園など多様な施設のある公園です。体験会を実施するサザン池は芝生広場のそばに位置し、交通公園の主な利用年代である、未就学児から小学校低学年の子ども達が楽しめる遊びの場としての受け皿となっています。自転車の練習をする交通公園大好き年代で公園利用が終わらず、大きくなっても芝生広場で遊ぶ公園利用のリピーターとして育っていく橋渡しの一つになっているように思われます。

 

 

■ユニバーサルカヌーのこれから

 

ユニバーサルカヌー体験会がスタートして16年経過しているためカヌーの老朽化が進んでいます。カヌーの更新と事業継続の為、クラウドファウンディング等を検討し、継続の方策を探っていきたいと考えています。

また、サポーターの身体的な負担軽減も課題の一つです。サポーターは障がいのある方を艇に乗せる際、体を抱えて乗せる必要があるので大きな負担となります。

転覆しにくい安全なカヌーとして、当公園用に特別に設計製作されたユニバーサルカヌーですが、カヌーがあるだけではただのモノでしかありません。カヌーを通じたバリアフリーな遊びの場づくりを目指した、当時の設計者、関係者の想いを心に響かせ、腹に落とし運営することによって、本当の「ユニバーサルカヌー体験会」となるのだと思います。モノがあるのは当たり前の時代にあって、心を軸に活動されている善き協働団体に出会えたことに感謝し、これからも多くの方に共感頂ける、公園らしく、あたたかく楽しい「ユニバーサル」を発信していけたらと考えます。

 

サポーターの皆様

サポーターの皆様

 

 

※文中に出てくる所属、肩書、情報などは、掲載時のものです。(2023年10月掲載)

 

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