一般財団法人国民公園協会
皇居外苑 楠公レストハウス
今回は、皇居外苑 楠公レストハウスでのSDGsの取組みをご紹介します。楠公レストハウスは、1967年(昭和42年)に皇居参観や公園利用者の休憩所として建てられ、その後2002年にリニューアルされた施設です。売店や展示スペース、レストランがあり、和風で落ち着きのある雰囲気が印象的な施設です。こちらのレストランでは、SDGsの取り組みとして「人にやさしい、自然にやさしい」を合言葉に環境負荷の軽減等を推進するなかで『EDO→ECOエコ・クッキングプロジェクト』を展開しています。
■「EDO→ECOエコ・クッキングプロジェクト」の始まり
皇居外苑は、環境省が所管しており、2009年以前から環境への取り組みや社会貢献に力を入れていました。
2008年、東京ガスが取り組んでいる“エコ・クッキング”の指導者講習に安部総料理長が参加したのをきっかけに、一般財団法人国民公園協会 皇居外苑とエコ・クッキング推進委員会、東京ガス株式会社との協働プロジェクトとして2009年にスタートしました。
「エコ・クッキング」とは、身近な食生活からはじめるエコ活動をいい、環境を思いやりながら「買い物」「調理」「食事」「片づけ」をする取り組みです。この考え方は料理人にとっては当たり前のことですが、あらためてこの取り組みを楠公レストハウスのレストランに取り入れ「江戸エコ行楽重」が誕生しました。
※エコ・クッキング(「エコ・クッキング」は東京ガスの登録商標です。)
産地で収穫された食べものは下の図のような流れをたどります。
生産から片づけまでのすべてのプロセスで資源やエネルギーが使われています。
エコ・クッキングでは、私たちが直接かかわることができる、買い物、調理、食事、片づけの場面で、環境に配慮した工夫をすることです。
■「EDO→ECOエコ・クッキングプロジェクト」の始まり
レストランでどのようなメニューを提供するか検討するにあたり、まず大前提となったのは皇居外苑の立地です。皇居外苑は、もともと江戸城があった場所であることから、循環型社会といわれる江戸時代に焦点をあてました。
次に、江戸時代の食事はどのようなものだったのか。この時代の食文化は、旬の食材や地元でとれた食材を無駄なく使い切り、わずかに残った野菜のくずなどは堆肥にして活用するなど、現代のエコ・クッキングにつながる理にかなったもので、江戸時代の料理書も現存していました。またこの皇居外苑は、桜の名所として有名ですが、江戸時代はお花見とともにお弁当文化が発展したこともよく知られています。
こういった江戸時代の食文化や皇居外苑の立地を踏まえ、環境にも優しい食事を提供できれば、もっと多くの方々に楽しんでいただけるのではないかと考えました。そこで生まれたメニューが「江戸エコ行楽重」でした。 「江戸エコ行楽重」は、江戸時代の料理書を参考にエコ・クッキングを実践しながら「江戸の味」を再現しています。
■「江戸エコ行楽重」のエコポイント
「江戸エコ行楽重」は、主に江戸中後期の料理書がもとになっていますが、料理書には食材と調味料の記載のみで、現代の料理書のような分量や作り方の記述はありません。そのため江戸の食文化に詳しい東京家政学院大学名誉教授の江原絢子先生に監修を依頼し、試作と試食を繰り返しながら1年をかけて完成しました。江戸エコ行楽重のエコポイントは以下の通りです。
・東京近郊の旬の食材と厳選した調味料を使用
・調理法を工夫して省エネに努め、無駄を減らす
・使い捨ての容器を使用せず、笹の葉や竹皮を使用
・安心安全な食材を使用、皮ごとまるごと調理
・冷凍食品等を使用せず、レストランですべて手作り
・食べ残しや調理くずは堆肥化し、契約の農家へ戻して循環させる
■「江戸エコ行楽重」のエコポイント
「江戸エコ行楽重」をご利用されたお客様からは好評の声が寄せられており、修学旅行で訪れた小学生には、意外にも煮物に人気があります。家庭で煮物を食べる機会が少なくなり、食べてみたらおいしかったということが理由のようです。また皇居外苑は幅広い年代の方々が訪れるため、バイキングなど選べるメニューの方が喜ばれるのでは?と考えることもありました。しかし、「江戸エコ行楽重」を通じた江戸時代の人々が楽しんだ食事の体験は多くの方に受け入れられ、うれしいことに食べ残しも減少している状況です。
■皇居外苑に設置している業務用生ごみ処理機
皇居外苑では、環境負荷の軽減等の取り組みとして業務用生ごみ処理機を設置、店舗から出る生ごみの95%以上を処理して排出抑制を行っています。飲食店で発生した生ごみをその場で処理し、堆肥化するため、衛生的・臭いの問題も少ないです。作られた堆肥は、野菜など食材を提供いただいている契約農家が使用しています。
生ごみ以外の、紙類や廃油などについては、100%リサイクルする業者に依頼して全てリサイクルしています。
■今後の展開
皇居外苑という特別な場所で食を提供する喜びを胸に、和食文化の素晴らしさを皇居外苑に訪れる国内外の皆様に発信し、環境・食育への取り組みをより深めていきたいと思っています。
◆関連ページ
▼皇居外苑
▼皇居外苑 楠公レストハウス
https://fng.or.jp/koukyo/place/rest/nanko-rest/
▼ EDO→ECO エコ・クッキングプロジェクト
https://home.tokyo-gas.co.jp/shoku/eco-cooking/project.html
※文中に出てくる所属、肩書、情報などは、掲載時のものです。(2024年11月掲載)