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第12回 再生物語を支えるボランティア組織「MEG」

公園をより楽しく、有効につかってもらうために、公園との関わりの深い方々への取材を通して、皆さまに役立つ情報をお届けします。

◆第12回は、茨城県水戸市の英国式庭園、七ツ洞公園で花植えや花の管理を行うボランティア団体「水戸イングリッシュガーデンクラブ」会員の江幡ゆき子さんのインタビューです。
七ツ洞公園内の花壇「秘密の花苑(はなぞの)」は、平成11年に開園後、管理の難しさから植栽された植物が枯れてしまったため、公園の再生プロジェクトがスタート。その一環として結成された「水戸イングリッシュガーデンクラブ(以下、「MEG」)の活動によって、イングリッシュローズをはじめ、四季折々の美しい花が咲き誇る花苑に生まれ変わりました。七ツ洞公園のこれまでの歴史とMEGの活動内容についてお話をうかがいました。

国内屈指の英国式庭園・七ツ洞公園

私は公務員として約40年勤務後、定年退職記念としてヨーロッパを旅行しました。これまでも年1回、海外旅行を楽しんできましたが、長年の勤めを終えたという解放感もあったからでしょうか、ヨーロッパの美しい自然風景や街並みなどは今までになく深く心に残りました。なかでもイギリスのコッツウォルズ地方の美しい田園風景に魅了されました。その後、自宅近くの休耕地を利用した庭でガーデニングを楽しむようになりました。

自宅は七ツ洞公園まで徒歩で15分、自転車で5分程の距離の水戸市上国井町内にあります。

水戸市外からも来園者がある七ツ洞公園は、水戸市の北西部に位置し約8ヘクタールが完成しています。大小5つの池とその池を支える5つのダムや周辺の森からなり、どこから見ても「絵のように美しい風景」です。その自然景観を生かして、イギリスの造園会社が設計した国内では数少ない英国式庭園です。

池のほとりには、古墳時代の遺跡「権現山横穴群」が残っています。この横穴は現在5つ存在しますが、かつては7つあったことから「七ツ洞」と名付けられました。

園内には、生垣やレンガで4つのエリアに分かれた円形花壇「秘密の花苑(はなぞの)」があります。平成11年に開園した当初は、約100種類、3600本の植物が植えられた素晴らしい花苑でした。ところが、多くが外国から持ち込まれた植物だったため、管理の難しさや日本の風土や気候に合わないことから枯れてしまい、荒れ果てた庭に変わってしまいました。さらに、平成23年3月11日に発生した東日本大震災の影響で、一部の施設が倒壊してしまったのです。

映画「テルマエ・ロマエ」のヒットが再生の転機

震災が発生した翌月に、七ツ洞公園で映画*『テルマエ・ロマエ』(阿部寛主演)のロケが行われました。英国庭園は、古代ギリシャや古代ローマの風景画を参考にしてつくられたことから、ロケ地に選ばれたようです。

映画は平成24年4月末に公開されると大ヒット。ロケ地である公園を一目見ようと、多くの来園者で賑わうようになりました。映画をきっかけに「七ツ洞公園」の存在を知った水戸市民も多くいたようです。

映画『テルマエ・ロマエ』による来園者の急増に、市はPRのチャンスと捉え、ロケの撮影ポイントに案内板を建てたり、公園までの道のりに誘導用看板の設置をするなど広報活動に努めました。さらに、*七ツ洞公園の再生プロジェクトを開始することを決めました。


*『テルマエ・ロマエ』:古代ローマ帝国の浴場設計技師が、日本の銭湯にタイムスリップしてしまうコミックを映画化した作品。
*七ツ洞公園の再生プロジェクト:七ツ洞公園の管理者である市の公園緑地課は、「秘密の花苑」の管理を、NHKの園芸番組で講師も務めている水戸市植物公園(以下、植物公園)の西川綾子園長に相談し、水戸市植物公園が「秘密の花苑」の管理に携わることになりました。植物公園で多くのボランティア組織や同好会をつくってきた西川園長は、「秘密の花苑」でもボランティアを呼びかけ、「秘密の花苑」の再生を図っています。また、西川園長の母校・筑波大学芸術学群の鈴木雅和教授に公園再生プロジェクト全体の指導をお願いしています。
開園15周年を迎えた平成26年度からは、公園の再生事業を「七ツ洞再生物語」と題して、再生していくようすを物語のように来園者にご覧いただくため、1年ごとテーマを決めて展開しています。1年目は第1話「覚醒」と題し、再整備を行うと共に大規模イベントを行い、多くの方に来園いただくきっかけをつくり、第2話は「輪舞」(ろんど)と題し、繰り返し来園いただけるよう、イベントの強化を行いました。平成28年度の第3話は「協奏」で、地域などとの連携に努めています。

「秘密の花苑」の再生がスタート

平成25年に七ツ洞公園の再生プロジェクトの一環で、「秘密の花苑」を管理するボランティアが募集されました。私は市の回覧版でボランティア募集を知り、趣味のガーデニングの勉強にもなると思い、参加を決めました。

ボランティアに応募後、最初の活動は英国のバラ育苗会社から寄贈されたイングリッシュローズの記念植樹会(平成25年3月)でした。驚いたことに、約100人ものボランティア希望者がその場に集まっていました。当日は多くのマスコミも取材に来ていて、地元の国田小・中学校の生徒さんも含め、大勢が見守るなか、苗の植え付けなどを行いました。

そして4月、「秘密の花苑」のボランティア団体・「水戸イングリッシュガーデンクラブ」(MEG)・通称「メグ」が正式に発足しました。

花の手入れから視察研修まで

「MEG」の会員数は約80人(平成28年5月現在)です。活動日は第1土曜日と第3水曜日の月2回。参加人数は、毎回平均40人。活動時間は10:00~12:00。夏期(7~9月)は9:00~11:00です。年齢構成は20代から70代の専業主婦、ご夫婦、リタイア後の男性など幅広い構成ですが、約8割は女性です。
 活動日は、西川園長が当日の作業内容を説明、指導をし、その後、班に分かれて4区画のエリアで活動します。活動内容は、花がら摘みや施肥、古枝切り、植え替えです。活動日以外にも、夏の「水やり」は公園の近所に住む会員(10人位)が当番制で、2人1組となって夕方に行います。
また、年1回の他県のイングリッシュガーデンの視察研修や年2回の専門家によるバラの育て方講座などがあります。
年度の初回には総会も行います。1年間の活動予定が報告され、昨年度の功労者を発表し、鉢植えがプレゼントされます。功労者は水やり当番など活動を労うもので、会員による推薦で決定します。「MEG」はボランティア活動ですが、表彰されると、より一層モチベーションが上がるきっかけにもなります。

来園者への説明も大事な仕事

家族連れや散歩に訪れる来園者が多いので、作業中に質問を受けることがあります。多くはその時に、咲いている花の名前です。4月に咲くネモフィラについて「こぼれ種でよく増えます」「白や黒色の花もあります」「国営ひたち海浜公園で有名な花です」など、花の名前を伝えるだけでなく、より多くの情報もお伝えできるように心掛けています。花の名前の次に多い質問は、肥料や水やりなど育て方の質問についてです。

入会時、会員のほとんどが園芸初心者です。はじめはたくさんの花の名前が覚えられるか不安でしたが、西川園長から、「今、咲いている花を覚えればいいのですよ」と指導を受けました。今では日々の活動を通じて、多くの花の名前を覚えられるようになりました。「MEG」のメンバーの多くが自宅でもガーデニングを楽しんでいます。皆さん勉強熱心で、会員の中には植物公園や「国営ひたち海浜公園」でもボランティア活動をしている人がいます。

「MEG」は、依頼を受けてボランティアガイドを務めることもあります。しかしこのガイドは、会員が最も敬遠する仕事です。私も初めてのガイドは緊張しましたが、2回目からは度胸がつき、自然な案内ができるようになりました。

平成28年度で「MEG」は4年目を迎えます。会員の大半が発足当時からのメンバーです。近頃では、来園者にも「MEG」の存在を知ってもらえるようになり、活動中に「ごくろうさま」とか「きれいですね」「いつもありがとう」と声を掛けていただけるようになりました。来園者からの質問や労いの言葉は、「MEG」の活動の何よりの励みになっています。

蘇る「秘密の花苑」とイベント開催

開園15周年を迎えた平成26年度からは、市は、公園の再生事業を「七ツ洞再生物語」と題して、再生していくようすを物語のように来園者にご覧いただくため、1年ごとテーマを決めて展開しています。

平成26年度から、より多くの方に七ツ洞公園に来ていただくことを目的にイベントを春と秋に開催しています。園内で雑貨、飲食などの店舗が並び、家族連れや女性グループで賑わいます。また、イングリッシュローズの開花に合わせて「イングリッシュローズフェアー」を開催。フェアーでは、フラワーマーケット、西川園長が講師を務める「花苑ミニ講座」などが行われます。とくにNHK『趣味の園芸』のナビゲーターを務めるタレントの三上真史さんによるガーデン巡りや記念植樹は、県外からも多くの女性ファンが来園する人気イベントです。

再生物語に欠かせない西川綾子園長

七ツ洞公園は、映画のロケ地をきかっけに再生物語が始まり、多くの来園者が訪れるようになりました。園内では写真撮影や花のスケッチをする人、結婚式の記念撮影をするカップルや古代の異国風景を背景にコスプレを楽しむ若い女性たちの姿をよく見かけるようになりました。

再生物語の取り組みの中でも「秘密の花苑」の復活が大きな役割を果たしていると思います。「MEG」の活動も一助になっていると思いますが、再生には、植物公園の西川園長の存在なしには語れません。植物の知識や技術だけでなく、西川園長の人柄、組織をまとめる力、人脈の広さなどの魅力があって「秘密の花苑」はここまで再生したと思っています。

七ツ洞公園は、地元の宝、第2のガーデン

私は長い間、上国井町に住んでいながら、仕事をしていたことから地域との関わりがありませんでした。定年後は、地域のために何か役立つことをしてみたい、と思っていた矢先に「MEG」との出会いがありました。

七ツ洞公園が開園した頃は、地元にありながらあまり興味はなく、荒れ果てていた状況や震災で一部施設が倒壊した話を聞いてもどこか他人事でした。ところが、「MEG」の活動に関わることで、「地元の宝」「自分の第2の庭」という存在に変わりました。

七ツ洞公園は、自宅から近いこともあって、MEGの活動以外にもよく花の様子を見に行きます。バラが咲きだす時期は毎日、花がらを摘みに行き、雨や強風が吹けば心配で花の状態を見に行きます。毎日通うのは大変ですが、せっかく再生され、来園者が増えたのですから、常にきれいにしたいという思いからの行動です。私は花を見るのが好きで他の施設や公園にもよく行きますが、管理が悪く花壇が汚れていたらすぐにその場から離れたくなります。来園者は「秘密の花苑」がきれいだからこそ、心癒され、また来たいと思ってくれるのです。期待して来てくれる方を裏切らないよう、いつもきれいな状態にしておきたいと思っています。

西川園長には今後も変わることなく「MEG」を指導してほしいと思います。また市に対しても、七ツ洞公園がもっと多くの人に来園していただけるよう、再生事業を継続してほしいと願っています。

活動そのものが楽しい

「MEG」は、市の再生事業「七ツ洞再生物語」をきっかけに設立しましたが、私たちは純粋に「お花が好き」という気持ちだけで活動しています。西川園長の指導のもと、活動そのものが楽しいのです。会員の多くが自宅の庭とは別に「秘密の花苑」の庭を大事に思っています。そして会員同士とのコミュニケーション、園芸について学べるなど「MEG」は生きがいになっています。「MEG」での楽しい活動が、最終的に公園の再生につながっているのであればうれしいです。

「秘密の花苑」では、四季折々のさまざまな花やハーブ類などの植物が楽しめます。とくに春はたくさんの花が開花する季節です。5月から6月にかけては花苑の目玉であるイングリッシュローズが咲き誇り、「秘密の花苑」が最も華やかにそして優雅な香りに包まれるシーズンを迎えます。

平成28年5月21日(土)から6月5日(日)まで「イングリッシュローズフェアー」が開催されます。フラワーマーケットでは、私たち会員が自宅で育てた花を販売し(「MEG」として出店)、その売上は「MEG」の運営に充てる予定です。

私たちが丹精込めて育てたイングリッシュローズを見に、七ツ洞公園にお越しください。

■サイト・関連情報
七ツ洞再生物語 http://www.nanatsudo-park.jp/15.html
水戸市公園協会 http://www.mito-park.net/about/park_nanatsudo.html
水戸イングリッシュガーデンクラブ「MEG」http://www.mito-botanical-park.com/volunteer/meg/meg.html
水戸市植物公園 http://www.mito-botanical-park.com/

※文中に出てくる所属、肩書等は、取材時のものです。2016年5月掲載

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過去記事一覧
21 市民の手によって「つくり続ける公園」
20 下町に残る、手つかずの自然を守り、育てる
19 絵本、ケルナー広場を通して、子供たちの成長を見守る
18 生かされていることを実感 自然と一体になれるサップヨガ
17 震災後、市民の手によって再生された西公園
16 住民の心をつないだ3万個のキャンドル
15 市民がつくり、見守る広場
14 満月BARで公園の非日常を楽しむ
13 わらアートで、地域に笑顔と一体感を
12 再生物語を支えるボランティア組織「MEG」
11 公園が図書館に変わる「敷島。本の森」
10 公園に地域の人が集う「はじっこまつり」
09 トンボの魅力を子供たちに伝える
08 「朝市」で公園がコミュニケーションの場に
07 「スポーツ鬼ごっこ」を通じて 子供たちの居場所づくりを実現
06 高齢者、障がい者に公園案内 ボランティア側も癒される
05 仲間と共に成長してきたみはまプレーパーク
04 地域で子供たちを育成・指導 地元の公園でイルミネーション作り
03 公園がアートな空間に生まれ変わる日 あそびの重要性を考える「アートパーク」
02 子供たちにワークショップで地域貢献 公園での活動は発見の連続
01 自然環境は、利用しながら保全する


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