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第10回 公園に地域の人が集う「はじっこまつり」

公園をより楽しく、有効につかっていただくために、公園との関わりの深い方々への取材を通して、皆さまに役立つ情報をお届けいたします。

◆第10回は杉並区の和田公園(東京都杉並区和田2丁目)で開催する「はじっこまつり」の主催者メンバーのひとりで、現在、子育て支援活動をしている小松崎明子さんのインタビューです。杉並区のはじっこにある和田公園で2011年7月から始まった「はじっこまつり」は、子供から大人、高齢者までが楽しめる地域住民の交流を目的とした手作りのお祭りです。今年(2016年)1月16日の開催で16回目を迎える「はじっこまつり」の誕生した経緯やその内容についてお話をうかがいました。

震災で和田公園に集まった地域の人たち

私は杉並区和田で生まれ育ち、今も実家で両親と暮らしています。幼稚園の教諭を経て、現在、地元で子育て支援活動(NPO法人ゆるゆるma~ma)の代表を務めています。子育て支援活動を通じて、杉並や中野でイベント・企画を行う高円寺『ハート・トゥ・アート』の渡辺宏さんやNPO法人「楽弦」(らくげん)の川上田鶴子さんと交流があり、日ごろから「和田公園で地域住民のためのイベントをやりたいね」と話し合っていました。イベントに関するさまざまなアイデアを出し合っていた矢先に、東日本大震災が発生しました。

地震発生時、私は実家が営む店舗(小売店)内にいました。経験したことのない大きな揺れに母と家を飛び出し、店舗の目の前にある「和田公園」に避難しました。すると次々に不安を感じた近隣住民が和田公園に集まって来ました。十数人程の顔見知りの住民が集まり、不安な面持ちで声を掛け合い、お互いの安否などについて気遣う会話をしていました。

公園に集まったのは皆、顔見知りでしたが、たまたまという訳ではありません。和田という町は、妙法寺川、善福寺川など神田川水系に近いことから、昔から洪水被害に見舞われる地域でした。過去の浸水被害を教訓に、日ごろから地域住民が声を掛け合い、皆で助け合うコミュニティが根付いていたのです。

公園に集まった人たちは不安な表情ながらも、近隣同士が顔を合わせ、会話をしたことで多少、落ち着きを取り戻しているようにも見えました。また、和田公園は駒ヶ坂橋を渡ると中野区(弥生町)です。店舗のお客さんでもある中野区在住の人も来ていました。

その後も大きな余震が続きました。私は和田公園を出て近所に声を掛けたり、近所の方が一人暮らしのおばあちゃんや足が不自由な人などを訪問してくれたり、皆で思い浮かぶ家の無事を確認しました。

震災発生時、住民が自主的に和田公園に集まり、お互いの無事を確認し、情報収集をしている姿を見て、私は当初、思い描いていた和田公園でのイベント開催の意義を強く感じました。「何かあったら和田公園で顔を見せ合い、安心できるコミュニティを作ろう」。そのためにも地域の人たちに和田公園を印象付け、定期的に足を運んでもらえるようなイベントを行いたい。

こうして「3.11」の公園での光景をきっかけに「はじっこまつり」の企画が本格的にスタートしました。

震災から4か月後に「はじっこまつり」を開催

震災をきっかけにイベント企画を進めるわけですが、その内容は、防災訓練のようなものではなく、子供から大人まで、そして誰もが気軽に参加できる楽しいイベントにしたいと考えました。まずは、近隣のむさしの保育園に企画を持ち込んだところ、高橋百合子園長(当時)から、園舎が建て替え工事中で園庭が使えないため、毎年恒例の夏の盆踊り大会を和田公園で開催できないだろうか、と相談を受けました。「それなら我々といっしょにやりましょう!」という話でまとまりました。

さて、肝心の開催場所の和田公園ですが、いきなり壁にぶつかりました。

杉並区内にはたくさんの公園がありますが、和田公園はイベントが不可の公園でした。しかし、私たちは震災発生時、地域住民が自然に集まった和田公園での開催を強く求めました。その想いを杉並区や杉並区社会福祉協議会に理解して頂き、杉並区と<災害時相互援助協定>を結ぶ福島県南相馬市への支援チャリティバザーを行うということで、使用を認めてもらいました。

第1回「はじっこまつり」は、「盆踊りと縁日」をテーマに2011年7月15日に開催しました。震災後、わずかな準備期間でしたが、むさしの保育園の盆踊り大会とチャリティバザーを主軸として開催することができました。約500人以上の来場者があり、子供から大人、高齢者までが楽しめる内容で大いに盛り上がりました。

地域住民と公園への配慮を忘れずに

和田公園で1回目の「はじっこまつり」を開催するにあたり、行政はもちろんのこと、公園の利用者や近隣の住民の方に迷惑を掛けないよう、各方面への事前連絡や報告、交通整理など細心の注意を心掛けました。騒音に関する相談にも、要望に沿う形で調整・解決に努めました。主催者側の私たちが和田の地域住民であり、顔の見える付き合いをしていることもあって、地域の方々とは気軽に意見交換ができる環境も幸いしました。また、メンバーの渡辺さんは地域イベントを数多く経験したため、公園内の木や枝にロープを結ぶ場合は、布などを当てて縛るなど、公園特有のルールを熟知していましたので、園内の遊具や植物への配慮も徹底して準備を行いました。「はじっこまつり」は、今でも近隣住民の声に耳を傾け、謙虚な姿勢を忘れずに運営しています。

また、1回目を開催する際、和田公園前に建つマンション「コーシャハイム杉並和田」(以下、コーシャハイム)の自治会にも声を掛けたところ、趣旨に賛同いただき、主催者側のメンバーとして参加してもらいました(第1回のみ)。

公園で伝統・文化・芸能に触れる子供たち

小さな和田公園に、予想を超える大勢の人が集まってくれたことに手応えを感じた私たちは、1回目を終えてすぐ、2回目開催(10月)を決めました。

2回目は2011年10月29日に「森の音楽会とハロウィン」をテーマに開催。「楽弦」の演奏会と子供たちの仮装ショーやワークショップ(仮装仮面作り)などです。「楽弦」のキーボード、フルート、バイオリン奏者がクラシックやディズニーの曲などを演奏。奏者と聴衆と自然が一体となった、とてもアットホームな音楽会でした。美しい音色に誘われて「はじっこまつり」のことを知らない近隣住民の方も聞きに来てくれました。

1月の「はじっこまつり」のテーマは、子供たちに日本の伝統文化に触れてもらいたいという思いから「伝統文化&餅つき」です。杉並区の郷土芸能保存会から講師を招き、獅子舞、和太鼓、南京玉すだれ、コマ回し、飴細工などを披露してもらいます。子供たちは、初めて目にする獅子舞の獅子に頭を噛んでもらうと、大泣きしてしまいますが、餅つき同様、貴重な体験になります。

「はじっこまつり」では、時代に沿ったハロウィンなども行いますが、昔、地域のコミュニティとして行われていた盆踊りや縁日、正月の遊びなどを子供たちに伝えていきたいと思っています。

現在「はじっこまつり」は夏、秋、冬の年3回(7、10、1月)に開催しています。開催時間は、1月と10月が午前11時~午後3時。7月が午後2時からが縁日で、6時から盆踊りを行い7時には終了します。主催する側の私たちは仕事をもっていますので、運営に無理をしないことと、小さな子供や高齢者の足元の安全を考えて、明るい時間帯に開催するお祭りにしています。

むさしの保育園の大きな存在

「はじっこまつり」の名称の由来は、和田公園が杉並区のはじっこにある─というところからです。善福寺川を越えればすぐ中野区で、杉並とか中野といったエリアの垣根を超えたコミュニティでありたいという考えです。

「はじっこまつり」の名付け親であるむさしの保育園の森 浩美園長(当時は副園長)はセンスに溢れる方で、「はじっこまつり」のマスコットキャラクター「SUNAちゃん」も作成してくれました。SUNAちゃんは、(杉並と中野の頭文字である「す」と「な」からとった)杉並と中野の橋渡しをするマスコットとして誕生しましたが、むさしの保育園のトレードマークにもなっていて、保育士さんのウエアにもSUNAちゃんがプリントされています。

そもそもむさしの保育園で開催していた盆踊りがきっかけとなった「はじっこまつり」ですが、園の卒園生が毎回来てくれたり、園児のお母さんたちもバザーの商品提供などに協力していただいたりしています。また、雨天の場合は、むさしの保育園に場所を変えて開催しています。

園長をはじめ保育士さんたちは、準備の手伝いやチラシや仮装用の洋服を手作りしてくれるなど、むさしの保育園の協力なしに、「はじっこまつり」は語れません。

地域の活性化にも貢献

2015年11月現在、「はじっこまつり」の実行委員のメンバーは、むさしの保育園、高円寺『ハート・トゥ・アート』、社会福祉法人かたつむり会、社会福祉法人愛成会ふらっとなかの、NPO法人ゆるゆるma~maの5団体です。2013年以降に参加していただいているかたつむり会(2012年~)とふらっとなかの(2014年~)には、「はじっこまつり」の模擬店の出店にも協力していただいています。施設で作るおいしいパンやビーズ雑貨などはとても好評で、すぐに売り切れてしまいます。「はじっこまつり」の出店者のほとんどが近隣の方です。近隣の方々にはかたつむり会とふらっとなかのの施設の活動を知ってもらえるので、地域の活性化にもつながっていると思います。

花壇でゴミが減った和田公園

私は幼い頃、親から「何かあった時には和田公園に行きなさい」と言われてきたので、和田公園は特別な場所です。子供時代、和田公園内には学童保育施設がありました。その後、神田川流域の水害軽減のためのトンネル「和田弥生幹線事業」工事にあたり、改修され、滑り台の複合遊具と広場がある公園に生まれ変わりました。シンプルな公園であることが、実は「はじっこまつり」の開催には好都合でした。

和田公園は木々に囲まれていたために、とても暗い印象がありました。改修により明るくなりましたが、杉並区には、外から公園の中が見通せるよう、定期的に剪定と雑草の草刈りを、夏期には蚊の対策をお願いしています。公園の角がごみの集積場になっていることから、ゴミの投げ捨てが多いのが悩みの種でしたが、数年前から区の公園ボランティア活動「花咲かせ隊」に申し込み、公園に花壇を作りました。花壇はコーシャハイム自治会と近所の有志による2か所。きれいな花壇が作られてからは、ゴミの投げ捨てが激減しました。今後も両者で花壇の手入れをして、美化に努めていきたいと思っています。

地域に認知されてきた和田公園と「はじっこまつり」

「はじっこまつり」はすべて平仮名で憶えやすいせいか、町の掲示板などにポスターを貼っているそばで、子供たちが「はじっこ、やるんだ!」と大はしゃぎです。近隣の和田小学校では、ちらしを配布してもらうなど、地域ぐるみで「はじっこまつり」を盛り上げていただいています。

「はじっこまつり」の平均来場者数は約500人にのぼります。過去最多は第8回(2013年7月)の約800人です。毎回、小さな公園にこんなに大勢の人が集まるのか?と主催者ながらびっくりしています。
来場者はむさしの保育園の園児を中心とした保育園児から小学生(低学年)の子供たちが中心ですが、意外と大人たちも盛り上がります。

年3回の「はじっこまつり」は、今ではすっかり定着し、地域の皆さんから楽しみにしてもらえるお祭りになりました。和田公園の近隣住民をはじめ、多くの団体や協力者によって「はじっこまつり」は確実に成長し、進化しています。何よりも地域の人たちに和田公園のことを知ってもらえたことがうれしいです。

今後も仲間と共に楽しみながら、継続していきたいと思います。

■関連サイト・関連情報
はじっこまつり Facebook  https://www.facebook.com/hajikkomaturi
NPO法人 ゆるゆるma~ma  http://www.yuruyuruma-ma.jp/
高円寺『ハート・トゥ・アート』 http://www.heart-to-art.net/
むさしの保育園 http://www.h-musashino.jp/
社会福祉法人かたつむり会 http://www.jcpa.net/kata/
指定障害者支援施設ふらっとなかの http://www.aisei.or.jp/furatto/

※文中に出てくる所属、肩書等は、取材時のものです。2016年1月掲載

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過去記事一覧
21 市民の手によって「つくり続ける公園」
20 下町に残る、手つかずの自然を守り、育てる
19 絵本、ケルナー広場を通して、子供たちの成長を見守る
18 生かされていることを実感 自然と一体になれるサップヨガ
17 震災後、市民の手によって再生された西公園
16 住民の心をつないだ3万個のキャンドル
15 市民がつくり、見守る広場
14 満月BARで公園の非日常を楽しむ
13 わらアートで、地域に笑顔と一体感を
12 再生物語を支えるボランティア組織「MEG」
11 公園が図書館に変わる「敷島。本の森」
10 公園に地域の人が集う「はじっこまつり」
09 トンボの魅力を子供たちに伝える
08 「朝市」で公園がコミュニケーションの場に
07 「スポーツ鬼ごっこ」を通じて 子供たちの居場所づくりを実現
06 高齢者、障がい者に公園案内 ボランティア側も癒される
05 仲間と共に成長してきたみはまプレーパーク
04 地域で子供たちを育成・指導 地元の公園でイルミネーション作り
03 公園がアートな空間に生まれ変わる日 あそびの重要性を考える「アートパーク」
02 子供たちにワークショップで地域貢献 公園での活動は発見の連続
01 自然環境は、利用しながら保全する


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