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みどり花コラム
工都日立のさくら物語 ―大島桜と染井吉野―
大煙突記念碑と新田次郎文学碑(かみね公園)

大煙突記念碑と新田次郎文学碑(かみね公園)

日立市の春は市街も郊外も多くの桜に彩られ人々は思い思いに花見を楽しみます。市の花として親しまれている「さくら」は工業都市日立の歴史と深いか関わりがあります。

1905年(明治38年)久原房之助が日立村に日立鉱山を創業し本格的に銅の採掘精錬を開始すると、大量の亜硫酸ガスによる農林業の被害は甚大となり、当時世界一となる大煙突が1915年に完成するまで煙害対策に苦慮することとなりました。煙害対策・補償の中心となった庶務課長の角弥太郎は高い経営理念を持っていた久原らと共に「煙害に対する損害は鉱業主が進んで賠償責任を果たさなければならぬ」とする根本方針を定めました。

農業試験場に種々の作物や樹木を植え煙害の理論的解明に努め耐煙性の樹種を育成しました。植生回復に植林された樹種にはニセアカシア・オオシマザクラ・ヤマハンノキ・ヒメヤシャブシ・クヌギ・クロマツ・スギ等があります。大島桜は伊豆諸島の火山地帯に生育し優れた耐煙性があり、種子の発芽に成功して多数の苗が育成されました。

155.7mの大煙突が完成して角は自然回復へ本格的植林を開始、18年間に鉱山と周辺山地に大島桜約260万本を主に総数約500万本を植林し、周辺の希望者に苗木約500万本(大島桜約27万本)を無償配布しました。更に、大島桜の苗木がうまく育つようになると、これを台木として染井吉野の苗木が作られました。住環境改善を目的として花の美しい染井吉野約2,000本を社宅・学校・道路・鉱山電車沿線等に植えました。企業の発展と共にその後も市内各所に染井吉野が植えられました。

1990年に日本のさくら名所100選に認定された「かみね公園・平和通り」は戦後市民の協力により植栽され、今も市民活動によって守られています。

付記(1)新田次郎著「ある町の高い煙突」は大煙突建設に至る経緯に取材した小説です。

参考資料:
「調査報告書日立のさくらールーツと歩みー」編集委員会 編 (1998)調査報告書 日立のさくら―ルーツと歩み―
日立商工会議所ふるさと日立検定実行委員会 編(2012)ふるさと日立検定 公式テキストブック中級編



(緑花文化士 鯉渕仁子) 2018年3月掲載

かみね公園より見る現在の大煙突(1993年に2/3が崩壊)

かみね公園より見る現在の大煙突(1993年に2/3が崩壊)

4月のさくらまつり期間中には歩行者天国になる日もある平和通り

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