公園文化ロゴ
公園文化ロゴ
公園文化を語る 公園の達人 公園管理運営「チャレンジ!」しました 公園とSDGs 生きもの小話 みどり花コラム アートコラム 花みどり検定 公園の本棚 世界の公園 たまて箱 公園”Q&A /
公園管理運営チャレンジしました
第9回 未来につづく公園づくり(大野極楽寺公園)

第9回目は、公園での子育て支援活動をサポートしている大野極楽寺公園 所長の田村泰紀さんの「チャレンジ!」をお届けします。

大野極楽寺公園 所長 田村泰紀さん
大野極楽寺公園 所長 田村泰紀さん

公園に子育て世代を
グランドゴルフを楽しむ高齢者

グランドゴルフを楽しむ高齢者

大野極楽寺公園(以下、公園)は、愛知県一宮市の南西、木曽川の南派川沿いに位置した一宮市の総合公園です。

私たち(一財)公園財団は、2011年4月から公園の指定管理者となり、私は2015年4月から所長を務めています。

指定された当初は、地域の高齢化に合わせ、グラウンドゴルフ場の整備などを市に提案しました。現在では、平日の朝から公園の駐車場が満車になるほど多くのお年寄りたちが、グラウンドゴルフやソフトボール、そしてウォーキングなどを楽しんでいます。

そこで、さらに幅広い年齢層の方に公園を利用していただくために、親子も利用しやすい公園を目指すことにしました。

まずは、市の子育て支援課に声をかけ、公園の管理運営者として子育て支援に協力したいと申し出た上で、市の各部署との調整を進めながら少しずつ準備をはじめて実施していきました。たとえば子育て支援課の各種情報を掲示する、管理棟に子ども向けの備品を用意する、授乳スペースを確保するなどです。

そのように子育て支援に力を入れ始めた2016年の夏ごろ、公園で※森のようちえんの活動をしていた「おさんぽやふぅのみ」さんから、「公園を使わせていただいています」と挨拶がありました。代表の方に活動の内容や理念を聞いたところ、まさに私たちが実施したいと考えていた子育て支援活動であることから、市公園緑地課と調整の上、大野極楽寺公園の共催事業として連携し、活動を発展させることにしました。私たちは共催者として、ふぅのみさんの事業をバックアップするために、共に実施方法の検討、広報協力や活動に必要な施設・資材の提供、安全確保などを行っています。

※森のようちえん:北欧諸国を中心にはじまった、自然的な森などの屋外で自然体験活動を基軸とする保育のこと。日本では、活動場所や幼稚園・保育園などの事業形態に関わらず、「森のようちえん」と呼んでいます。


活動に役立つものは、他の利用者にも役立つ
キッズスペース管理棟の研修室に設置した

キッズスペース管理棟の研修室に設置した

ふぅのみ代表の安藤さんは、3人のお子さんを自然の中で育てたいと思い、愛知県春日井市の森のようちえんに通い、ご自身も10年間スタッフとして活動していました。

その経験を活かし、地元である一宮市で、森のようちえんをはじめたいと思うようになり、2016年の4月から、公園を中心とした一宮市内で活動をはじめました。9月からは公園共催のもと、試験的に月に2~3回活動し、その結果を踏まえて今年度から本格的に定期コースを開いています(表1)。

主な活動である「おさんぽ」では、地域の親子が散歩しながら自然と触れ合う体験をしています。スタッフは、保育士や学校の先生などを経験したお母さんたちのため、子育ての相談にものっています。散歩中には、公園内にある木の実をひろったり、クズのツルを引っ張って遊んだりと自由に使っていただいています。また自然とのふれあいを大切にしているため、雨天や季節に関わらず、屋外での活動が基本となっています。

しかし、急な悪天候や真夏の猛暑に対応し、屋内の部屋を用意しておくことが子供たちの活動を支えるために重要なことです。そのため、万が一に備えて、活動日には管理棟の研修室を確保しています。

研修室の一角には、マットやおもちゃを揃えたキッズスペースをつくってあるほか、降雨時や水遊びの後に使用するバスマットやタオルも揃えました。これらは、ふぅのみさんの活動に必要なものではありますが、他の利用者にも役立つものだと考えています。実際キッズスペースやバスマット等は他の団体が利用される際も重宝しています。

雨の日でも外で元気に遊びます

雨の日でも外で元気に遊びます



“管理者のいる公園”を活かして
普段は入れない野鳥園で

普段は入れない野鳥園で

公園よりも自然的な場所で活動してきた安藤さんから、以前活動していた森とは違うけれども公園でも十分な体験ができていると話をいただきました。私たち指定管理者がいるからこそできる配慮もあるのだと思います。

ふぅのみさんとは、日頃から、活動の前後でその日のことを共有して、芝刈り作業中やハチの出る場所などを避けるよう安全管理に努めたり、要望について話し合うことで、活動の幅を広げたりしています。

実際の森では禁止されてしまうような、火を使った体験も公園内のBBQ広場を利用することで可能です。また公園内のどんぐりを拾ってどんぐり餅を作ったり、草木を集めて染物も行いました。さらに整備された場所で遊ぶだけでなく、年に数回は公園スタッフ同伴のもと、普段は開放されていない一宮市の水源地である野鳥園に入れる日を設けています。

これらの活動は、都市公園法において規制の対象となることもありますが、公園を運営しているプロとして、資源を活用しながら柔軟に判断し、出来る限りのことに対応しています。

BBQ広場で屋外料理体験

BBQ広場で屋外料理体験


未来につづく公園づくりのために
乳幼児向けの設備をそろえ「赤ちゃんの駅」に登録することができました

乳幼児向けの設備をそろえ「赤ちゃんの駅」に登録することができました

子供用のトイレスリッパにはじまり、授乳スペースや離乳食を温められるレンジの設置、キッズスペースの確保をしてきました。その結果、ふぅのみさんのサポートの他にも「一宮市赤ちゃんの駅」に登録できたり、「移動子育て支援センターこっこ」の会場となったり、親子にやさしい公園づくりが進んでいます。

現在では、高齢者の多かった公園に、少しずつ親子の姿が見られるようになりました。常連のおじいちゃん、おばあちゃんと子供たちが楽しそうに話している様子も見かけます。

今後も、利用者層がまんべんなく広がる管理運営に努め、10年後、20年後も皆さんに公園を使い続けてほしいと思っています。

 


■関連サイト
大野極楽寺公園 http://www.ohnogokurakujikouen.jp/
おさんぽやふぅのみ https://ameblo.jp/osanpoya-fuunomi/

 

※文中に出てくる所属、肩書、情報などは、取材時のものです。(2017年12月掲載)

区切り線
過去記事一覧
第47回 公園の魅力を見つめ直して「秋のライトアップ」できっかけづくり(足立区花畑公園・桜花亭)
第46回 “五感”を満たす空間づくり ~統一感あるデザインと、一貫したコンセプトを守っていく~ (いばらきフラワーパーク)
第45回 サステナブルな堆肥づくり「バイオネスト」の可能性 (国営木曽三川公園 138タワーパーク)
第44回 都心に残るゲンジボタル(国立科学博物館附属自然教育園)
第43回 大池公園さくら再生プロジェクト!(大池公園)
第42回 初の産学連携!地元の高校生と協同で商品開発!(稲毛海浜公園)
第41回 冬の新宿を彩るCandle Night @ Shinjuku(新宿中央公園)
第40回 20年目を迎える「第20回日比谷公園ガーデニングショー2022」を開催(都立日比谷公園)
第39回 多様な生き物と人が集まるビオトープを作る!(国営アルプスあづみの公園)
第38回 いにしえの植物を万葉歌と共に楽しむ 万葉植物画展「アートと万葉歌の出逢い」(平城宮跡歴史公園)
第37回 来園者も参加する獣害対応防災訓練
第36回 「みどりの価値」を指標化し、「こころにやさしいみどり」をつくる
第35回 時代のニーズをとらえた花畑を(国営昭和記念公園)
第34回 身近な公園でパラリンピック競技を体験する(むさしのの都立公園)
第33回「写真を撮りたくなる」公園づくり(小豆島オリーブ公園)
第32回 「自然学習」アプリは「広い園内で遊べる」ツール(国営昭和記念公園)
第31回 Onlineでも環境教育を(Project WILD)
第30回 コロナ禍でも市民と共に活用できる公園(兵庫県立尼崎の森中央緑地)
第29回 音楽に親しむ公園の「森のピアノ」(四万十緑林公園)
第28回 植物に関するミッションでリピーターを増やす(小田原フラワーガーデン)
第27回 猛威を振るう外来のカミキリムシを探せ(栃木県足利市)
第26回 地域と協働したプロジェクト(播磨大中古代の村(大中遺跡公園))
第25回 地域住民の意見を聞きながら公園の魅力を維持・向上させる(足立区)
第24回 Stay Homeでも公園を楽しむ(国営武蔵丘陵森林公園)
第23回 できる人が、できる時に、できることを(こどもの城)
第22回 雪を有効活用して公園に笑顔を(中山公園)
第21回 地域をつなぎ、喜びを生み出す公園(柏崎・夢の森公園)
第20回 絵本の世界を楽しみながら学ぶことのできる公園(武生中央公園)
第19回 全国に注目されるゴキブリ展を開催(磐田市竜洋昆虫自然観察公園)
第18回 大蔵海岸公園のマナードッグ制度(大蔵海岸公園)
第17回 園内から出た植物発生材をスムーズに堆肥化する(国営木曽三川公園)
第16回 地域の昔話を学ぶことのできる公園(坂出緩衝緑地)
第15回 公園の看板に一工夫(国営讃岐まんのう公園)
第14回 地域に貢献する農業公園(足立区都市農業公園)
第13回 公園のイベントを通して子供たちに「外遊び」を提供!(雁の巣レクリエーションセンター)
第12回 生き物の面白さを伝える動物公園(多摩動物公園)
第11回 増大かつ多様化する公園利用者に対応する施設管理(国営ひたち海浜公園)
第10回 弘前公園のサクラを後世に引き継ぐ(弘前公園)
第9回 未来につづく公園づくり(大野極楽寺公園)
第8回 生き物にふれあえる公園づくり(桑袋ビオトープ公園)
第7回 発生材を有効活用する(公益財団法人 神奈川県公園協会)
第6回 幻の青いケシ(国営滝野すずらん丘陵公園)
第5回 「街路樹はみんなのもの」という意識を(東京都江戸川区)
第4回 最良の門出を祝う「ローズウェディング」(国営越後丘陵公園)
第3回 感謝の気持ちを伝えるくまモン(水前寺江津湖公園)
第2回 ふるさと村で人形道祖神を紹介(国営みちのく杜の湖畔公園)
第1回 様々な競技会にチャレンジ!(国営木曽三川公園)


TOPに戻る

公園文化ロゴ2